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ファンタジーな世界に転生したのに魔法が使えません  作者: 花が咲く
第4章<アンナ特製魔方陣ノート>
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3、爆発

 差し出された手は、いつも見慣れているセイフィード様の手だった。

無表情だけど、どこか緊張感があり、無言で手を差し出してくれている。


 私はそっと、セイフィード様の手に自分の手を置くと、力強く引き上げてくれた。

そして、セイフィード様は小さな声で、私の耳元で(ささや)く。


「アンナは、俺のものなんだから、勝手に他の男と踊るな」


 私はびっくりしてセイフィード様を見ると、ムスっとふてくされていた。


「ラウル先生は男じゃなく先生です。それにセイフィード様だって、女性と踊ってたじゃないですか!」


 私は、セイフィード様に抗議した。

のちに、私はラウル先生に対して、失礼極まりない発言をしてしまったと後悔した。


「俺は、いいんだ」


 セイフィード様はぶっきらぼうに応える。


 イヤイヤイヤイヤ、それっておかしずぎだろー!横暴だー!ってセイフィード様にツッコミを入れようとしたら、シャーロットと第2王子が、ラウル先生を手助けする為に、近くまで来た。

そして、第2王子は、ラウル先生を力強い手で立ち上がらせてくれる。


「王子様、申し訳ない。豪快(ごうかい)に転けてしまったが私は大丈夫だ。アンナは怪我はないか? 大丈夫か?」


 ラウル先生は起き上がると、私を気遣ってくれた。

私も大丈夫です、と応えようとした時、突如、熱い突風が吹き、第2王子が先ほど座っていた椅子付近に黒い魔方陣が浮かび上がる。

その魔方陣から黒煙が上がると、爆発が起きた。


「ドォーン!」


セイフィード様は爆発の衝撃から、私を守るように力強く抱きしめ、同時に呪文を唱え始めた。


『プロテイヤ・プロテイヤ・集え・光の精霊』


 すると、“ラー神の()”全体が光り輝き、ここにいる全ての人の体が、ほのかに白く光る。

以前、セイフィード様が私にかけてくれたバリアを皆んなに(ほどこ)した。


 爆発の規模は大きくなく、半径2メートル程を焦がすだけだった。

しかし、もし第2王子が爆発が起きた椅子に座っていたら怪我どころじゃ済まなかった。

また、舞踏会に参加していた人たちは、私達が転んだ場所に集まっていたので、怪我人はいないようだ。


「みんな、庭園へ逃げるんだ!」


 第2王子が大声で叫び、みんなを誘導する。

シャーロットは第2王子に片手で(かつ)がれていて、顔が真っ赤っかだ。


 ラー神の()から、庭園へは隣接しており、ベランダの階段を降りれば庭園に出られる。

舞踏会に出席していた人は、第2王子の誘導に従い、庭園へ急ぎ避難している。

第2王子とシャーロットも、ラウル先生も庭園に向かった。


「アンナも、庭園に逃げるんだ。俺はここに(とど)まる。まだ嫌な魔力を感じるからな」


 セイフィード様が、うずくまっていた私を再度、起き上がらせようとしてくれた。


「あの、腰が抜けてっ、歩けそうにないです」


 私は、足に全く力が入らない、ガクガク震えている。

記憶の彼方(かなた)に追いやっていた前世の爆発の光景が(よみがえ)り、私は恐怖にとらわれていた。


「⋯⋯っ、アンナ、だったら俺にしがみついてろ」


 セイフィード様は片手で自身の胸へ私を引き寄せ、支えてくれた。

私は震える手でセイフィード様の服を握りしめ、胸に顔を埋める。

そうすると、セイフィード様の胸の鼓動が聞こえ、私は恐怖心がなくなり、落ち着きを取り戻した。


  庭園にみんなを誘導していた、第2王子がすぐに“ラー神の()”に戻ってきた。

「ワクワクするぜ」と言いながら⋯⋯。


「おい、魔法長官の息子、お前は俺のサポートをするんだ」


 第2王子はセイフィード様に命令をした。

間を置かず、第2王子は呪文を唱える。 


『血の契約をしせし我が(しもべ)、力を示せ。エクスカリバー!」


 すると突如、第2王子の目の前に、神々しく、大きな剣が出現する。

第2王子はその剣を掴むと、剣が光輝いた。


 同じくして、“ラー神の()”に漆黒の巨大な魔法陣が浮かび上がる。

その魔法陣から、地面を揺らすような(うめ)き声が響き渡り、巨大な黒い頭を3つ持つ狂犬に似た魔物が現れた。


「ケルベロスだー」


 私は思わず叫んだ。

しかし、セイフィード様と第2王子が、(あき)れた表情をし私を一瞥する。

そして、二人同時に声を発した。


「違う、ケル()ロスだ」


 あれ⋯⋯。

あの魔物は、どう見ても前世の記憶の中にあるケルベロス。

ハーデスの地獄の番犬、ケルベロスなのに。

どうやらこっちの世界では若干名前が違ったらしい。

(まぎ)らわしすぎる。

っていつから私はボケキャラになってしまったんだろう⋯⋯。

こんな真面目な場面なのに、魔物の名前を言い間違えるなんて我ながら恥ずかしい。


『カーペレ・ノ・ファールン・土の精霊に命じる、楔を打て、捕らえよ』


 セイフィード様は私を抱きかかえながら呪文を唱える。

次の瞬間、ケルバロスの頭上に魔法陣が現れる。

その魔法陣から(くさび)が何本もケルバロスに打ち込まれ、ケルバロスの動きを止めた。

それを見た第2王子が、すかさずケルバロスに斬り込む。

ケルバロスの頭の1つが千切れ、けたたましい(うめ)き声が城中に響く。


 しかし、ケルバロスの2頭の口から炎が噴き出した。

炎は龍のようにうねり、第2王子と私たちに迫る。

その時、第2王子は剣に命じた。


「炎を吸い込め! エクスカリバー」


 剣は第2王子の命令通り、炎を勢いよく吸い込む。

その炎を吸い込んだ剣を、第2王子は豪快に振り下ろした。

すると、剣から逆に炎が吹き出して、ケルバロスに迫る。

同時に、セイフィード様は呪文を唱えた


『トゥ・ル・ボー・風の精霊よ・怒れ・暴れろ』


 第2王子とケルバロスの中間に魔法陣が浮かび上がり、その魔法陣から竜巻が発生した。

竜巻は、第2王子の剣から吹き出した炎と一体となり、ケルバロスを攻撃する。

ケルバロスは今度は呻き声をあげることなく、強大な胴体を地面に打ち付け倒れ込む。

そのケルバロスから肉を焼くような焦げ臭い嫌な臭いが立ち込め、“ラー神の()”に充満した。


「よくやったな、魔法長官の息子。名前は⋯⋯、なんだっけ?」


 第2王子は満面の笑みをし、セイフィード様に声を掛ける。

ほんと、第2王子は失礼なやつだ!


「セイフィードです」


無表情でセイフィード様は応えた。


「もう、大丈夫ですか⋯⋯?」


私はセイフィード様に恐る恐る、訊ねる。


「あぁ、大丈夫だ」


 セイフィード様は私を安心させるように、私の頭をポンポンしてくれる。

ずーっと、ポンポンして欲しい。

撫で撫ででも、いいけど⋯⋯。





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