魔力欠乏症と、レッド・ドラゴン
PS4のDBゼノバース2遊んでるんですが、面白い。
やっぱりドラゴンボールって凄いわ……。
ムアル=ダステム魔法学校は、その学園都市の中央に位置している大きな塔だ。
塔とは言っても、造りはかなり堅牢で、学校という印象よりも要塞という趣の方が強い。
歴史を紐解いていくと、かつて戦争があったころ、強大な魔法国家があったそうだが、その国はシントーワとの覇権争いに敗れ解体。
その城を要塞化し、それが今日に至り魔法学校になっているということだった。
戦争の時代は数百年も昔の話らしいが、その塔は補修などされているようで、利用するのに何の問題もない様子だ。
蝶ネクタイのようなリボンをトレードマークにしているムアル=ダステムの旗は、厳つい塔の見た目を、少しだけ和やかに見せている。
魔法学校の生徒や職員たちはみな、赤いリボンを付けることを義務付けられているそうだ。
「へえ、ホントにみんな赤いリボンを結んでら……」
「可愛いねー♪」
クウゴたちは、魔法学校の入口である門のところまでやって来ていた。
そこまでくると、いよいよ周りは魔法使いばかりになっていて、その行き交う人々全て、赤いリボンを身に着けていた。
リボンが好きなキロルは、その様子を見て楽しそうにしている。
キロルの面白い着眼点から、魔法学校へとやってきたが、この赤いリボンと、レッド・ドラゴンが関係があるのかないのか、まだ分からない。
ムアル=ダステムでは、奇病が流行していることもあり、どうにも不穏な気配はあるのに、その尻尾を見せないのが、歯痒いところだった。
「とりあえず、調査するなら、学校長に会わせてもらわないとね」
「いっちょ行ってみっか」
クウゴたちは魔法学校の塔のなかへと入っていく。
入ると、円形のホールのような造りをしていて、中央にカウンターがあった。
壁沿いには階段があって、そこから上に上っていけるらしい。
まずはあいさつのため、カウンターに顔を出すと、そこには不健康そうな顔色をしている男性の魔法使いがいた。
彼も赤いリボンを蝶ネクタイにしている。真っ黒のローブに赤いリボンはなかなか目を引く。
「なんだね、キミたち」
「オラ、冒険者のクウゴだ。シントーワのミッションでここに来た。校長先生に話を聞きてえんだけど、大丈夫か?」
「冒険者ァ? 見たところ、魔法の素養もなさそうな顔をしているが……、校長は忙しいんだぞ」
嫌味な口調で、魔法使いは表情をゆがめた。
ここは崇高な魔法を勉学するところだから、魔法を学ぶ気のない人間が入ることを気に入らないと、表情だけで語っていた。
「国のお墨付きの冒険者よ。従う義務があるわよネ?」
ウモナが胸元に付けている勲章を見せつけながら、カウンターの男に交渉した。
すると、男魔法使いは、その勲章を見るようにして、ウモナの谷間に視線が注いでいた。
ウモナも、意識的にそうしている節がある。ハニートラップの交渉術だが、存外効果は高いらしい。
「ちょ、ちょっと待ってろ。校長に確認を取ってくる……」
ジロジロとウモナのたわわなモノを盗み見しながら、男はカウンターから立ち上がると、その奥にある直径一メートルくらいの、小さな魔法陣の上に乗った。
すると、魔法陣が青白く光り、男の身体を光で飲み込むと、その瞬間、男魔法使いは姿を消していた。
「! 消えたぞ」
クウゴはその消えた瞬間を目で追えなかったので、驚いていた。
超スピードで移動したのではないらしい。
「転移の術式が描かれた魔法陣ね」
エリがカウンターの向こうに見える、魔法陣を観察して説明をしてくれた。
「魔法陣って、館の地下にあったやつだろ?」
「そうよ。でも、描かれてる呪文が違う。館のものはキロルの召喚魔法陣だけど、こっちは移動の術式ね」
「へえ、魔法陣も色々なんだな?」
魔法陣同士で繋がっていて、これと同じもののところにワープできるようだ。
便利な魔法に、クウゴはその魔法陣をじっと凝視していた。
「これだけ大きな塔だから、移動するのは足腰にくるだろうし、こういう魔法陣で移動をしてるのね」
ウモナが塔の中を観察しながら、そう言った。
要するに、これは現代でいうエレベーターのようなものかと、クウゴは納得する。
「魔力欠乏症にかかってる魔法使いも増えてるって聞いたけど、結構な魔術師がいるのね」
エリは、塔の建物ではなく、その中にいる人々の方に関心を示していた。
エリも【魔術素養】があるため、興味があるのだろう。
塔の一階は出入りする魔法使いたちが沢山いた。それだけこの魔法学校が世界的に有名なのだろう。
世界中から魔法使いが集まっているのだから、病欠が出たとしても、それなりに人はいるということか。
ムアル=ダステムのギルドががらんとしていた分、こっちに人の流れが来ている様子だった。
ここは冒険者よりも、魔法使いが人口が上ということか。
待っていると、魔法陣がまた光り始めた。すると、そこにワープで現れた先ほどの陰湿な魔法使いが現れる。
「短時間だが、ヒマを作ってくださるそうだ。感謝するのだな」
「ありがと、魔法使いサン❤」
ウモナが投げキスをしてやると、男の魔法使いは鼻の穴を膨らませ、だらしない顔をした。
どうやら、女性に対して免疫がないようだ。
一同は魔法陣を使い、校長が待っている最上階へと転移魔法で移動した。
ワープを初体験したクウゴは、奇妙な感覚に、少し気分が悪くなった。
車酔いをしたような感じに似ている。
どうやら、転移魔法はある程度慣れないと、ワープ酔いしてしまうらしい。
校長の部屋に移動してくると、その周囲の雰囲気に「おお」と感嘆の声が出てしまった。
見上げるような背丈の本棚に、ぎっしりと魔術本が詰め込まれていて、それらが壁を覆い隠している。
天井には不思議な明かりがついたランタンが、フワフワと浮かんでいるし、幻想的な魔法の空間という雰囲気がそこかしこにある。
「すげえ……。魔法ってこんなにすげえのか……」
この世界に来て、魔法を見たのはエリの使ってるものしかなかった。
こうして魔法の世界のど真ん中にくると、ここがハッキリと剣と魔法の異世界だと、明確に思い知らさせる。
そんな世界でクウゴはやはり、世界観に合っていない技能を使って日々を過ごしている。
そのためか、少しこの空間に抵抗があった。自分が居ていいのだろうかと、遠慮がちになるからだ。
「流石ムアル=ダステムの校長の部屋だね」
普段あまり大きく感情を出さないタイプのエマクオンも、この部屋の様子には感心しているようだ。
「よく来たね、王の遣いの冒険者よ」
部屋の奥から声が響いてきた。物静かな歳老いた声だった。
クウゴたちが魔法陣から部屋の奥に向かうと、そこには椅子に腰かけている老婆がいた。
「私がこのムアル=ダステム魔法学校の学校長、デネブだよ」
クウゴは意外だという表情を浮かべていたが、言葉にまではしなかった。
てっきり校長は男だと思い込んでいたが、相手は老婆だったのだ。
かなりしわくちゃな顔をしているし、腰も折れ曲がっている。童話なんかで出てくる『魔女』というイメージがそっくりそのまま姿になったようだ。
口調は、ゆったりとしているが、その眼光は鋭い。もうろくはしてないようで、全てを見透かすようだ。
「オラ、クウゴ。ドラゴン退治のミッションを受けてここにきた」
「ここにドラゴンがいるなんて、どうしてわかるんだ」
「シントーワの魔法使いから、ドラゴンの反応が掴めるって魔法の鏡を借りてる。それで、ここに反応があったんだ」
「……ふん……。さては、ウォーレンだね」
デネブはキラリと光る眼をクウゴに向けていた。
「ウォーレンって誰だっけ?」
「わ、私たちに鏡を貸してくれた魔術師よ!」
クウゴはすっかり名前を忘れていたのだが、エリがすかさず突っ込んだ。
「なんだ、校長はあの魔術師のこと知ってんのか?」
「ここの生徒だったからねえ。ドラゴンの研究にお熱で、色々と変わった生徒だった」
――ここの魔法学校の生徒はかなりの人数がいる。
それでもこの校長の記憶に残る程度には、注目されていた生徒だったのだろうか。
「これ、なんですが……」
エリがおずおずと、デネブ校長に例の鏡を手渡した。
デネブはそれを受け取り、ひとしきり調べると、エリに返した。
「なるほど。大した魔器だ……。ドラゴン・ソウルを捉えて反応させる仕組みだね。だが精度がまだ甘い」
大雑把な位置まではドラゴンの反応を掴めるが、細かいところまでは分からない鏡に、デネブはそんな評価をする。
「この鏡に、赤い反応があった。それがこの辺りなんだ。オラたちは、赤い竜を探すためにここまで旅してきたんだ」
「……ふん。残念だけど、赤い竜なんてまったく見たことがないね」
「でも、ここにドラゴンの反応があるのは確かなんだ。ちょっと調査をさせてもらえねぇか?」
「……だったら、交換条件がある」
「交換条件? なんだ?」
デネブはジロリとクウゴを見据え、やはり物静かな口調で告げた。
デネブの内面を見せない表情と、口調はつかみどころのない存在だとクウゴにも緊張させるほどだった。
「この魔法学校で、魔力がなくなってしまう病気にかかる者が多くてね。その原因を見つけ出してほしい」
「魔力欠乏症のことか?」
「おや、知ってたなら話は早い。あれはどうにも異様だ。その原因探しをしてくれるってんなら、こちらもドラゴン捜しに協力を惜しまないよ」
図らずとも、話が繋がった。
どちらにせよ、奇妙な話だとは思っていたし、この魔力欠乏症がドラゴンに関係している可能性だってある。
クウゴたちは、デネブの話に、二つ返事で応えるのだった。




