夏至のころに
ブックマークいただきました。
ありがとうございます。
大ダコに襲われてからの2週間くらいを、崖の家の改良に費やした。
崖の上を探索した結果、簡単に上ってこれるようなところではなく、150m四方くらいが地面から突き出たような形になっていた。
いえば、プリンを逆さに出したような形だな。
だからというわけではないけど、ずいぶん好きにやってしまった。
明り取りというレベルではなく、おおよそ25m四方をくりぬいて、そこからいろいろな部屋を設置していった。
雰囲気としてはヨーロッパ辺りのアパートみたいな、通りから細い路地を入ると真ん中に広場があって、そこから自分の部屋に行くというスタイルだ。
もっとも、入口はわかりにくいようにしているけど。
そのうち、なにかいい方法を考えないと、いつか入り込まれるかもね。
部屋数からいけば、40家族が暮らしていけるくらいはあるんだけど、水回りとか排気とか、そのあたりは今後の課題だね。
正直、やりすぎた。
というのも、アルノが行かないっていうものだから、家づくりというか、ちょっとした村レベルといってもいいかもしれないところまで広げてしまった。
だけど、護衛になるものがいないと、さすがに怖くて行けないから、仕方がない。
「アルノ、おはよう」
いつものように、声をかけた。
ん?なんか、いつもと様子が違う。
いつもなら、狩りに行くばっかりに槍をもって待っていたのに、今日はそういう素振りもなかった。
「どうかしたの」
アルノがそばに寄ってきて、手を取られた、何か言いたげにしていたあと、いきなり抱き付いてきた。
「え?どうした?なにがあった?」
しばらくハグをされた後、いままで渋っていた崖の中へと入っていった。
そのあとを無言でついていく。
広場の一角に腕を組んだまま立つと、そのまま動かなくなった。
「アルノ?」
何が起きたのか、わからなかった。
ツッチーとシルバに去られ、アルノにも今去られてしまった。
シルバもそうだったから、アルノにもいつかこういうことが来るのだろうということは覚悟していた。
でも、実際にやってくると、やはり「悲しい」という言葉になるのだろう。
おそらく、加護で作られた石人形の限界だったんだろう。
でも、稼働限界が自覚できているって、どうなんだろうか?
思えば、最後のあれは、別れの挨拶だったんだろう。
自分からアルノを抱きしめて、感謝した。
出入り口にあたる場所は、新たに土のブロックを積んで石化し、その日は喪に服したというわけではないけど、崖の中で過ごした。
次の日、新しい護衛を作るためにブリーフケースから手頃の大きさの土のブロックを取り出す。
あまり個性を強くすると、別れが厳しいな。
ずっといてくれる風にできないだろうか。
でも、いつか慣れてしまうだろう自分の姿も想像していた。
「土の加護、初級、土壁、土の加護、中級、石人形」
仕上がった石人形は、ハリウッドに進出した日本人のひとりだった。
最後の侍とかいう映画に出ていた若いほうなのは覚えている。
結局は、個性つけちゃった。
「名前はどうしようかな?ヒロユキ…ヒロ?」
首を傾げられた。
すると、ライフルを打つ格好をしてから、眉のあたりで人差し指をまげた。
それって、俺の後ろに立つな的な人だよね?
「というか、なんでそのことを知っているのかな?」
そういうと、自分の頭を指さされた。
「俺の知っていることは、共有できるってこと?」
うなづいて返された。
「へぇ…そうしたら、ゴ○ゴ?違う?デューク?」
それだっていう風に指を差された。
「なんでデュークなんだい?」
なんだい?そんなこと知らないというのかい?という感じで見られた気がしたので、繰り返すのはやめようと思った。
それが俺の知らないことでも。
もしかしたら、知覚できていない記憶も共有できるのかな?
それはそれで、怖いものがあるんだけど。
「まあそれでだ、デューク。そろそろ、街に行きたいんだけど大丈夫かな?」
ちょっと考えてから、うなづいてくれた。
「よかった、じゃあ明日出発しよう」
旅の準備といっても、大抵のものはブリーフケースに入れてあるから、用意するものはないけど。
デューク用に新しく武器をそろえたくらい。
デュークは、日本刀のような形をした剣がご所望だった。
そっくりなのは形だけだったので、何本も作った。
そして、デュークの腰にも専用のアイテムボックスを取り付けてみた。
100本の剣と50本の槍を用意したて、その中に収納した。
盾はいらないといったので、体が傷つかないよう小手のようなものをいくつか用意した。
あと、額につけるやつも用意したんだけど、取り付け方がわからなかったので、いつかできるまで預けておこう。
寝る前に各部屋を見回った。
特に異常らしいものは見当たらなかった。
広場に出ると、あの月っぽいものが上がっているのが見えた。
半月みたいになっているけど、月という感じではなかった。
はっきりとは言えないけど、なにかが変わった感じがする。
街に行ったら、なにかわかるかもしれないかな。
次の朝。
崖の上から南の方向に見えていた街に向かって、出発した。
今回で10万字の山を越えることができました。
ひとえに読んでいただけてくれるみなさんに感謝です。
2016.9.26 誤記訂正 近く出来ない>知覚できない




