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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
最終章【繋がりの先】

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ep.58「予想外の報せ」

 

 ーーあれから数日。


 山籠りの訓練は続いていた。


「っ……!」


 嶺二の雷魔法による稲妻が走り、雷鳴が轟く。


 訓練の成果か以前よりも遥かに制御されている。


 ーーバチッ


 地面を焼くだけで収まる。


 暴走はない。


 その直後ーー


 突風と共に蓮也の動きが加速した。


 嶺二と蓮也の連携。


「まだ甘いぞ」


「くっ……!」


「あと一歩なのに……!」


(確実に上がってきているな)


 だが、まだ足りない。


「続けるぞ」


「ちょっと待って!今ので一区切りじゃないの!?」


「いや、まだだ」


「鬼教官!」


 いつものやり取り。


 ーーその時。


「……?」


 目の前の時空が淡く歪んだ。


「これって……」


 光が眩く辺りを照らした。


 そして、一枚の羊皮紙が現れた。


「……アイリーンか」


 手を伸ばし、受け取る。


「また手紙?」


「ついにお呼びが掛かったか?」


 無言で開き、視線を滑らせる。


「……」


「なによ、その顔」


 蓮也が覗き込もうとする。


「……は?」


 思わず間の抜けた声が漏れた。


「え、なに」


「どうした」


 もう一度読み返す。


 読み間違いではない。


「……何だ、これは」


「だからなんなのよ!?」


 手紙から視線を上げる。


「……状況が変わった」


「どう変わったんだ」


「……向こうで、どうにかなりそうらしい」


「……は?」


「いやいやいや……どうにかなりそうってなによ」


「そのままの意味だ」


「ミレイユ……アイリーンの幼馴染の息子だから、討伐という形にはしたくない」


「……」


「幸か不幸か、ミレイユは聖女とすら謳われる特級治癒魔術師……そしてその夫は騎士団副団長だ。宮廷魔導師であるアイリーンも居る。どうにか完全な魔王化を防ぐ、と」


 手紙の内容を簡潔にまとめて説明していく。


「だからーー勇者を連れてくる必要は現時点ではない」


「……」


「……はぁ!?」


 蓮也の声が山に響き渡る。


「ちょっと待って!?ここまでやらせといてそれ!?」


 無言の嶺二も口元が引き攣っている。


「いや、まぁ……」


 蓮也が頭を掻く。


「助かったって言えば助かったけど……なんかモヤっとするわね」


「そうだな」


「……すまない」


 もう一度手紙を見る。


(……そうか)


 最悪の事態は回避されるかもしれない。


「嶺二、蓮也……この前の件だが」


「え?」


「一週間以内に答えを出してくれと言った事……忘れてくれ」


「まぁ、そうなるよな」


「でしょうねぇ……」


「こちらの事情で振り回してしまってすまない」


「セレスも振り回されたうちの一人でしょ」


「面白かったしな、よしとしてやる」


「助かる、ありがとう」


(終わった、のか?)


 空を見上げる。


(……いや)


 クリスタリア王国ではまだ何も終わっていない。


 むしろーー


(ここからか)


 この任務が中止になっただけだ。


 手紙を畳んでポケットにしまう。


「どうする」


「なにが?」


「山籠りを終えて帰るか、それともーー」


「続けるわよ。ここまできたら」


「ああ、どうせならどこまで出来るのかやってみるか」


「まだセレスにダメージ与えられてないし!」


「勝ち逃げはさせねぇ」


「分かった」


 二人の言葉にほんの微かに胸の奥が軽くなった気がした。


 それと同時にーー


 別の何かが、芽を出し始めていた。


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