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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
最終章【繋がりの先】

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ep.57「選択」

 

 山の空気は相変わらず澄んでいた。


「行くぞ」


 いつも通り声をかけると、嶺二と蓮也が顔を上げた。


「今日はなにするのよ」


「体術か、それとも魔法か」


「両方だ」


「やっぱりね!!」


 蓮也のこの反応もいつもの事。


「その前に……少し、話がある」


「なんだ」


 嶺二が真剣な顔つきに変わり、蓮也も何かを察したように黙った。


「お前たちに確認しておきたい事がある」


 二人に視線を向ける。


「以前に話したな。俺がここに来た理由」


「ああ」


「勇者と魔王のあれね」


「そうだ。……状況が変わった、今すぐにでも動けるようにしておかないといけない」


 途端に二人の表情が引き締まった。


「どういう事だ」


「まさかもう魔王が?」


「……その要素があるってだけだが、今はアイリーンが様子を見てる。悟られるわけにはいかないからこっちの世界で出来るだけお前たちを鍛え、GOが出たら戻らないといけない」


「それで急に山籠りってわけね」


「そこで……頼みがある」


 真っ直ぐに嶺二と蓮也を見据える。


「俺の世界を救う為に」


 一呼吸。


「一緒に来てくれ」


「……分かってはいたけど、改めて言われるとでっかい話ね」


「そうだな」


「命の保証はない。生きていたとしてもすぐに帰ってこられる保証もない」


「手紙のやり取りや、あんたがこっちに来て戻れるのに?」


「どれだけの犠牲者が出るかも未知数だからな……宮廷魔導師が集まって発動しないと人間の行き来は難しいんだ」


「それだけ膨大な魔力が必要だって事か」


「そうだ。……選ぶのはお前たちだ」


「……」


「答えは今じゃなきゃダメか?」


「いや、一週間以内だ。その間に決めてくれ。行くか行かないか、自分の意思でな」


 蓮也が顔を上げる。


「もし、断ったら?」


「それでも構わない。強制はしない」


「……分かったわ」


「考えておく」


「私も」


「……ああ、すまないが頼む」


「その為に訓練してきたんでしょ……って即答してあげられなくて悪いわね」


「いや、当然の事だ。気にするな」


 見上げればそこには、クリスタリア王国と何ら変わらない空が広がっている。


 だがーー


 この世界でも、そしてあっちの世界でも確実に運命は動き出していた。


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