表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
最終章【繋がりの先】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/62

ep.51「訓練再開」


ーー手紙を受け取った翌日。


「で?」


蓮也が腕を組んでこちらを見ている。


「急にどうしたのよ」


「何がだ」


「何が、じゃないでしょ」


呆れたようにため息をつかれた。


「昨日まであんなにだらけてゲームばっかりしてたくせに、いきなり“しっかり訓練するぞ”なんて」


「必要なんだ」


「ま、いいけど。どーせ手紙で妹さんにせっつかれたんでしょ」


「そんなとこだ。嶺二も呼んであるんだよな?」


「一応ね。連絡はしたわよ」


その時、タイミングよくインターホンが鳴った。


そして数分後、嶺二が部屋に来た。


「話は聞いてる」


「そうか」


「緊急性でも高まったか」


「ああ」



ーー外。


人通りの少ない場所。


念の為、周囲を確認する。


(……よし、人目はないな)


「それじゃ、まずは基礎からだ」


視線を二人へ向ける。


「共鳴の制御」


「制御か」


「もちろん段階は踏む」


淡々と告げる俺の声はーー僅かに固い。


「感覚でいいから意識を合わせろ」


「つまり、なんとなくでいいのね」


「ああ、今はな」


「難しくはねぇな」


「お前たちはすでに繋がっているからな」


嶺二が小さく息を吐く。


「……やるか」


「そうね」


蓮也が頷いた。


二人の意識が、静かにゆっくりと揃い、重なっていく。


俺たちの周囲だけ空気が変わった。


僅かに、震えるような感覚。


(出来ているな)


これまでよりも強く、そして明確に。


「いいぞ、そのまま維持しろ」


様子を見る。


意識の重なりがどれほどか。


安定性の持続時間。


(これは……予想以上だな)



共鳴訓練の最中、ふと思考が逸れる。


(……トール)


妹同然であるミレイユの末息子。


脳裏に浮かぶのはーー


生まれて間もなかった頃のトールの姿。


小さく、すぴすぴと眠っていた無垢なあの赤子。


(……)


あの子が、魔王の生まれ変わりである可能性が高いと、アイリーンの手紙には書かれていた。


(……)


視線が、自然と目の前の二人へ向く。


嶺二。


蓮也。


今、自分が鍛えようとしている“勇者”。


(あの子を討つ為の力を……俺が、育てるのか)


組んでいる腕に、指が食い込む。


「おい」


嶺二の声に意識が引き戻された。


「どっかいってたろ」


「……すまない」


すぐに思考を切り替える。


そして小さく息を吐く。


(俺の……役割だ)


「続けろ」


短く指示を出す。


「今の状態を維持したまま、出力を上げろ」


「まったく、無茶言うわね……!」


迷いは見せない。


見せるべきではない。



ーー僅か数分後。


空気がビリビリと震え、共鳴が強まった事を知らせてくる。


僅かに、制御が乱れる。


「っ……!」


「落ち着け嶺二」


即座に声をかける。


「乱すな。繋げたまま保て」


「簡単に言ってくれるな……」


「大丈夫だ、出来る」


そして言い切る。


「お前たちならな」


一瞬静まる。


再び安定する。


(掴んだか)


「いい」


頷く。


「その感覚を忘れるな」


これが基礎だ。


全ての始まり。



訓練を続ける。


時間が過ぎる。


だがーー


意識の奥に、残るものがある。


(……)


消えない。


消せない。


(……トール)


それでも。


(進むしかない)



「今日はここまでだ」


息を整える二人。


「結構……キツいわね」


「悪くねぇ」


対照的な反応。


だが、どちらも前を向いている。


その様子を見ながら、静かに震える息を吐く。


やるべき事は決まっている。


迷う理由は、確かにある。


それでもーー


「……休憩したらまた再開するぞ」


宮廷魔導師として、情に流されてはいけない。


感情を立ち止まる理由にしてはいけない。


静かな空気の中でーー再び、訓練を始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ