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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第1章【交わるはずのなかった者たち】

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ep.5「装いと光る板」


 こうしてーー


 異世界から来た俺は、この世界での“居場所”を手に入れた。


「じゃあ、決まりね」


 蓮也が軽く手を叩く。


「今からウチ来る?」


「よろしく頼む」


「兄貴は?」


「俺は一度戻る」


 嶺二が短く告げる。


「明日、様子を見に行く」


「了解」


 軽い返事が返る。


「じゃ、行きましょ」


 促され、店を出た。


 夜の街は光が多く、昼と大差ない明るさだ。


 妙に落ち着かないが、不快ではない。


「遠いのか」


「歩いてすぐよ」


 並んで進む。


 ほどなくして、足が止まった。


 見上げると異様なほどに高い。


「……塔か」


「マンションよ」


「まんしょん」


「人が住む場所」


 入口へ向かう。


 扉の前で、蓮也が小さな板をかざした。


 静かに解錠音がして、扉が開く。


「……今のは」


「鍵みたいなもの」


「結界に近いな」


「まあ、そんな感じ」


 中に入る。


 さらに扉があり、今度は文字盤を押すと開いた。


 段階的に遮断する構造らしい。


 多重結界のようなものだろうか。


 なるほど合理的だ。


 奥へ進んで再び扉の前で止まる。


「これ乗るわよ」


「……これは?」


「エレベーター」


「え、えべ……えべれ……?」


「エレベーターよ」


 蓮也が記号が刻まれる文字盤を押すと扉が開いた。


 中に入るとどうやら箱型みたいだ。


 再び蓮也が文字盤を押すと扉が閉まり、わずかに浮遊感が生じた。


 上昇している。


 揺れは少ない。


 無駄のない設計だ。


「どう?」


「効率的だな」


 それだけ答える。


 やがて止まり、外へ出る。


 廊下の先に扉があり、俺がいた世界の物とは形状が異なる鍵らしき物で開ける。


「ここ」


 中へ入ると、空気が一段落ち着いた。


 視線を巡らせる。


 整っていて無駄がない。


「……悪くないな」


「でしょ?」


 蓮也が笑う。


「好きに使っていいわよ」


「助かる」


 短く頷く。


 拠点として問題はない。


「で、本題」


 蓮也が振り返る。


「その格好、どうにかしましょ」


「問題があるのか」


「ありすぎるわよ。目立つわ」


「そうか」


「来なさい」


 腕を引かれ、別の部屋へ。


 扉を開けると衣服が並んでいた。


 整然としているが種類は多い。


「選びなさい」


「基準が分からん」


「でしょうね」


 蓮也が軽く笑う。


「じゃあ、こっちで選ぶわ」


 迷いなく数点を取り出す。


「はい、これ」


「簡素だな」


「その方がいいのよ」


「分かった」


 言われるままに着替える。


「どう?」


「動きやすいな」


「でしょ?」


 そのとき、室内に音が鳴った。


 短い音。


「……今のは?」


「来客ね」


 蓮也が壁際の機器に近づく。


 小さな枠の中に、外の映像が映し出された。


「……何だこれは」


 思わず視線が止まる。


「インターホンモニター。外の様子が見えるの」


「遠隔観測か」


「そんな感じ」


 映っているのは、嶺二だった。


「来たのか」


「“明日”って言ったでしょ?」


「少しだけ顔出し、ってやつだな」


 蓮也が応答する。


 ロックが解除される音。


「入ってくるわよ」


 やがて足音。


 扉が開く。


 嶺二が入ってきた。


「……早いな」


「気が変わった」


 数瞬、視線が止まる。


「……別人だな、浮いてねぇ」


「なるほど」


 この世界では、この装いが“自然”なのだ。


「で、次はこれ」


 蓮也が取り出した。


 あの光る板。


「……それか」


「スマホ」


「すまほ」


「便利な道具よ」


 画面が切り替わる。


 光と情報が滑らかに動く。


 魔力は感じない。


「これは?」


「ゲームアプリ」


「げぇむ?」


「娯楽。暇つぶしね」


 なるほど。


「やってみる?」


「貸せ」


 受け取る。


 軽い。


 だが内部の働きは読めない。


「同じものをなぞって繋げるのよ」


 簡単な説明が続く。


「長く繋げるほど点が入る」


「……単純だな」


 画面を見つめる。


 配置を把握する。


 指を動かす。


 なぞると消える。


「……ほう」


 もう一度。


 なぞる。


 消える。


 音が鳴る。


「……なるほど」


 最長で繋ぐ。


 次の配置を読む。


 無駄を削る。


「ちょっと」


 蓮也が覗き込む。


「初めてよね?」


「見れば分かる」


「普通は出来ないのよ?」


「そうか?」


 視線は外さない。


「……面白いな」


 小さく呟く。


「でしょ?」


「ああ」


「ハマるわよ?」


「暇な時にやる程度だ」


 その言葉に、蓮也がにやりと笑った。


「……そう」


「……それ、面白いのか」


 嶺二がぼそりと呟く。


「悪くない」


 短く答える。


 指は止まらない。


 単純だが、最適化が要求される。


 悪くない。


「……面倒だな」


 そう言いながらも、手は止まらなかった。


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― 新着の感想 ―
面倒とか言いながらハマってますやん(笑)と思わずツッコんでしまいました(笑) 本当に適応力高いけど、微妙なズレが面白い♪
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