表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第3章【穏やかな日々】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/62

ep.49「曖昧な引っかかり」


 今日も特に変わった事はない。


 いつも通りの作業に没頭し続ける。


「……クソっ……またガチャすり抜けた」



 しばらくしてから、画面を閉じて立ち上がる。


 特に目的はないが、外に出る。



 ーー街中。


 行き交う人々の流れ。


 看板や建物。


 どれも既に見慣れたものだ。


 違和感も不自由もない。


(……寧ろとてつもなく快適だ)



 コンビニに入り、選んだ商品を手に取る。


 会計を済ませて外へ出る。


(……俺も慣れたものだな)


 自然と体が動いている。



 いつもの公園でベンチに座る。


 包みを開けてサンドイッチを齧る。


「……これも美味いな」


 小さく呟くと、風が頬を掠めた。


 穏やかな空気。


 今この場に何も問題はない。



 ーー夕方。


 マンションへ戻る。


「おかえり」


「ああ、ただいま」


「どこ行ってたのよ」


「適当に歩いていた」


「だと思ったわ」


 呆れたように笑う蓮也。


 これもいつも通りだ。



 ーー夜。


 BAR《月影》。


 いつもの場所。


 いつもの空気。


 いつもの静かな音楽。


 グラスを磨に、注文を受けて酒を作る。


 動きが身体に染み付いている。



 営業が終わると片付けや掃除、閉店作業を蓮也と手分けし、全てを終えてから店を出る。


「今日も平和だったわね」


「そうだな。先を読んで動けるようになったぞ」


「お陰で楽だわ」



 信号の赤い光に足を止める。


「……」


 その時ふと、頭の隅に何かが引っ掛かった。


(……何だ?)


 ほんの僅かな違和感。


 それが何なのか、ぼんやりとしていて鮮明にはならない。


「どうしたの?」


「……いや」


 少しだけ考える。


 何かを思い出しかけたような感覚。


 だが、それ以上は出てこない。


「なんでもない」


 そう答える。


 信号が青に変わり、再び歩き出す。


 蓮也と俺の足音が重なる。


 何の変哲もない、いつも通りの帰り道。



 マンションの前。


「先に行っててくれ。少し考えたい事がある」


「分かったわ。じゃ、先入るわね」


「ああ」


 蓮也が中へ入って行き、一人になった俺は空を見上げた。


「……」


 さっきの感覚。


 引っかかり。


 思い出しかけた何か。


「……何か、大事なことを」


 そこまで呟いて、止まる。


 言葉が詰まって、思考も止まる。


「……」


 数秒の沈黙。


 それから小さく息を吐く。


「……まあいい」


 今は問題ない。


 その筈だ。


 思考を切り替えてマンションの中へ入りエントランスを抜ける。


 エレベーターで上がって少し歩いた先の扉を開ける。


 いつもの部屋。


 変わらない日常。


 その中へ、何の迷いもなく足を踏み入れる。


 ーー感じた違和感を、置き去りにしたまま。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ