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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第3章【穏やかな日々】

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ep.46「別の役割」


 ーー昼過ぎ。


 特に予定はなかった。


 ソファに座り、スマホを操作しているとーー


「暇か」


 短い声。


 タイムをタップしてスマホから視線を上げると嶺二が立っていた。


「忙しいがこれが終わったら暇だ」


「なら手伝うか」


「手伝い?」


「こっちの仕事だ」


「……なるほど興味深い」



 連れて来られたのは、街の外れにある倉庫だった。


 大きな建物。


 人の出入りがある。


(……妙だな)


 空気が違う。


「若頭、お疲れ様です」


 入口付近の男が頭を下げた。


「……ああ」


 短く返す嶺二。


 それだけで、周囲の動きがわずかに変わる。


(……統率が取れているな)


 視線を巡らせる。


 無駄がない。


 命令系統が明確だ。


 一般的な職場とは、少し違うのかもしれない。



「こいつは」


 嶺二が俺を軽く示す。


「俺の友人だ」


 それだけ。


 それ以上はない。


「……失礼しました」


 男が小さく頭を下げる。


 俺を見る視線が変わる。


 先程までのものとは違う。


(……なるほど)


 簡潔だが、十分らしい。



「で、何をする」


「荷物の整理だ」


 倉庫の奥を顎で示す。


 積み上げられた箱。


(……多いな)


「適当に運べ」


「雑だな」


「お前なら問題ねぇだろ」


 まぁ、否定はしない。



 箱を持ち上げる。


 重さを確認する。


(……そこまで重くないな)


 既に積まれた荷物の配置を見る。


 順番や積み方。


(……無駄が多いな)


 一歩踏み出して積み直す。


 順序を変え、位置を調整する。


「おい、それーー」


 誰かの声。


 だが、止めない。


 数分後。


「……こんなものか」


 整理された空間。


 しっかりと通路ができている。


 動きやすい配置。


 取り出しやすい構造。


「……」


「……」


 沈黙。


「……早ぇな」


 嶺二が呟いた。


「このくらい当然だ」



 別の場所へ移動する。


 同じ作業と同じ結果。


 ひたすら繰り返す。


 効率は落ちない。


 むしろ上がる。


「……なんだあいつ」


 小さな声が聞こえる。


「分からん」


「若頭のご友人らしいぞ」


「……マジかよ」


 気にしない。


 作業を続ける。



 しばらくして。


「終わりだ」


 嶺二の言葉に周囲を見る。


(こんなものか……)


「……お前」


 嶺二がこちらを見る。


「なんだ」


「向いてるな」


「そうか?」


「ああ」



 倉庫を出る。


 外の空気が少しだけ軽い。


「どうだった」


「悪くない」


 素直に答える。


「単純だが、効率を詰める余地がある」


「だろうな」


 嶺二が喉を鳴らして笑う。



 少し歩く。


 言葉はない。


 だが、気まずくもない。


「……またやるか。効率を極めたい」


「好きにしろ。あいつ等には伝えておく」



 変わらない日常。


 だがーー


 場所が変われば、役割も変わる。


 BAR。


 倉庫。


 外。


 どれも違う。


 だからこそ面白い。


「……」


 小さく息を吐く。


 どこでも。


 何をしていても。


「……充実してるな」


 そう呟いた。


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