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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第3章【穏やかな日々】

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ep.45「手伝い」


 ーーキャンプから帰って数日。


 変わらない日常を過ごしている。


 朝起きて。


 適当に時間を潰し。


 外に出て。


 そしてーー


 夜。


「そろそろ店行くわよ」


 蓮也に声を掛けられる。


「ああ、分かった」


 このやり取りも、既に日常の一部になっていた。



 見慣れた道を並んで歩く。


 キャンプの時とは違う、人工的な光に照らされた街。


 整えられた空間。


 自然も良いが、こちらにも利点はある。


「なに考えてんの?」


「比較だ」


「なんのよ」


「外と中だ」


「キャンプと日常?」


「ああ」


「大体分かってきたわ。あんたの頭の中」


「どちらにも利点がある」


「珍しくまともなこと言うじゃない」


「いつもだろう」



 BAR《月影》に到着すると、蓮也が施錠を解き、二人で中へ入る。


 落ち着いた雰囲気。


 カウンターの中へ入る蓮也に俺も続く。



「じゃ、いつも通りお願いね」


「ああ」


 掃除を終えてから磨いたグラスを並べる。


 位置。


 間隔。


 グラスの輝き。


(……問題ない)


「ほんと慣れたわね」


 蓮也が横目で見る。


「そうか?」


「最初の頃、掃除機の使い方も知らなかったでしょ」


「……未知の機械だったからな」


 軽く笑われる。



 開店から少しして常連客がやって来た。


 いつもの注文が入る。


「バーボン、ロックで」


「了解」


 氷を入れる。


 酒を注ぐ。


 グラスを差し出す。


「どうぞ」


「お、ありがとう」



 しばらくして。


 カウンターの中で、淡々と作業をこなす。


 流れとタイミング。


 注文の把握。


(……効率は悪くない)


 むしろ俺にはーー


(……適しているな)


 動きに無駄はない。


「ねぇ」


「なんだ」


「あんたさ」


 少しだけ笑う。


「もう完全に店員よね」


「そうか?」


「そうよ、違和感ゼロ」


「それは光栄だな」


 ふっと小さく笑って手元のグラスを磨く。


 布の感触。


 グラス表面の光沢。


 指に伝わる感触の微細な変化。


「……」


 ふと、手を止める。


(……)


 思い出すのはキャンプで過ごしたあの夜。


(……)


 だが、それも一瞬。


 すぐに意識を戻す。


「どうしたの?」


「いや」


 短く答える。


「なんでもない」



 再び作業に戻る。


 注文を受けて酒を注ぐ。


 会話を聞きながら蓮也の動きを見て酒の作り方を新しく覚える。


 全てが流れるように進む。


「……」


 夜は続く。


 変わらない流れで。


 変わらない空気で。


 その中で確かに。


 自分の居場所は、ここにあると感じた。


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