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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第3章【穏やかな日々】

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ep.45「手伝い」


 ーーキャンプから帰って数日。


 変わらない日常を過ごしている。


 朝起きて。


 適当に時間を潰し。


 外に出て。


 そしてーー


 夜。


「そろそろ店行くわよ」


 蓮也に声を掛けられる。


「ああ、分かった」


 このやり取りも、既に日常の一部になっていた。


◇


 見慣れた道を並んで歩く。


 キャンプの時とは違う、人工的な光に照らされた街。


 整えられた空間。


 自然も良いが、こちらにも利点はある。


「なに考えてんの?」


「比較だ」


「なんのよ」


「外と中だ」


「キャンプと日常?」


「ああ」


「大体分かってきたわ。あんたの頭の中」


「どちらにも利点がある」


「珍しくまともなこと言うじゃない」


「いつもだろう」


◇


 BAR《月影》に到着すると、蓮也が施錠を解き、二人で中へ入る。


 落ち着いた雰囲気。


 カウンターの中へ入る蓮也に俺も続く。


◇


「じゃ、いつも通りお願いね」


「ああ」


 掃除を終えてから磨いたグラスを並べる。


 位置。


 間隔。


 グラスの輝き。


(……問題ない)


「ほんと慣れたわね」


 蓮也が横目で見る。


「そうか?」


「最初の頃、掃除機の使い方も知らなかったでしょ」


「……未知の機械だったからな」


 軽く笑われる。


◇


 開店から少しして常連客がやって来た。


 いつもの注文が入る。


「バーボン、ロックで」


「了解」


 氷を入れる。


 酒を注ぐ。


 グラスを差し出す。


「どうぞ」


「お、ありがとう」


◇


 しばらくして。


 カウンターの中で、淡々と作業をこなす。


 流れとタイミング。


 注文の把握。


(……効率は悪くない)


 むしろ俺にはーー


(……適しているな)


 動きに無駄はない。


「ねぇ」


「なんだ」


「あんたさ」


 少しだけ笑う。


「もう完全に店員よね」


「そうか?」


「そうよ、違和感ゼロ」


「それは光栄だな」


 ふっと小さく笑って手元のグラスを磨く。


 布の感触。


 グラス表面の光沢。


 指に伝わる感触の微細な変化。


「……」


 ふと、手を止める。


(……)


 思い出すのはキャンプで過ごしたあの夜。


(……)


 だが、それも一瞬。


 すぐに意識を戻す。


「どうしたの?」


「いや」


 短く答える。


「なんでもない」


◇


 再び作業に戻る。


 注文を受けて酒を注ぐ。


 会話を聞きながら蓮也の動きを見て酒の作り方を新しく覚える。


 全てが流れるように進む。


「……」


 夜は続く。


 変わらない流れで。


 変わらない空気で。


 その中で確かに。


 自分の居場所は、ここにあると感じた。


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