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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第3章【穏やかな日々】

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ep.40「日々の習慣」


 ーー朝。


 カーテンの隙間から、やわらかな日差しが部屋の中を照らしていた。


「……」


 ゆっくりと目を開ける。


 しばらく、そのまま天井を見ていた。


 静かだ。


(……朝か)


 体を起こす。


 特に急ぐ理由はない。


 この時間に決まった予定もない。


 それでもーー


 自然と、起きる。



 リビングに行くと、既に蓮也の姿はなかった。


「……出かけたか」


 テーブルの上には、簡単な書き置き。


『買い出し行ってくる』


「……なるほど」


 短く呟く。


 冷蔵庫を開けて中身を確認する。


(……食料の補充か)



 昨日の帰りに買ったサンドイッチを食べて水を飲む。


(十分だな)


 満腹である必要はない。


 空腹でなければ、それでいい。


 ソファに腰を下ろす。


 手元にはスマホ。


 自然と指が動く。


 アプリを起動する。


 図柄を繋げる。


 消える。


 また繋げる。


(……イベント期間限定ガチャの為に金貨、いや、コインを稼がねば)


 思考と反射。


 以前よりも、明らかに効率が上がっている。


 ハイスコアも更新済みだ。


「……面白い」


 小さく呟く。



 しばらくして、エナジーが無くなり画面を閉じると、立ち上がり外へ出る。


 理由は特にない。


 ただ、なんとなく。



 ーー昼。


 街はいつも通りの賑わいを見せている。


 人の流れに混ざる。


 違和感はない。


 視線を向けられることもない。


(……完全に馴染んでいるな)


 そう思う。


 歩いては時折立ち止まり店を覗く。


 特に買うものはない。


 蓮也曰く、ウインドウショッピングと言うらしい。


 ただただ時間を消費する。



「いらっしゃいませー」


 聞き慣れた言葉。


 自然と足が向いていたコンビニ。


(……習慣か)


 適当に商品を手に取る。


 甘味。


 飲料。


 会計を済ませて外へ出る。


(俺も慣れたものだな)



 近くの公園に入りベンチに座る。


 菓子の袋を開けて口に放り込む。


「……悪くない」


 静かな時間。


 人の流れ。


 風。


 空気。


 どれも自然で、どれもーー


(……穏やかだな)



 ーー夕方。


 マンションに戻ると、既に蓮也が帰って来ていた。


「おかえり」


「……ああ、ただいま」


「どこ行ってたのよ」


「適当に歩いていた」


「なにそれ」


 呆れた声。


 だが、笑っている。


「まあいいけど」



 ーー夜。


 準備を整える。


「今日も店出てよね」


「分かっている」


 このやり取りが日常になっている。



 外へ出て並んで歩く。


 既に見慣れた道。


 見慣れた景色。


 変わらない流れ。


(……)


 ふと、思う。


 毎日この繰り返し。


 この時間。


 この関係。


「……心地良いな」


「なにが?」


「いや」


 少しだけ考える。


「……全部だ」


「ふーん?」



 ーーBAR《月影》。


 いつもの場所。


 いつもの時間。


 扉を開けて中へ入る。


 変わらない空気。


 変わらない流れ。


 その中で俺は今日も蓮也の手伝いをする。


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