ep.40「日々の習慣」
ーー朝。
カーテンの隙間から、やわらかな日差しが部屋の中を照らしていた。
「……」
ゆっくりと目を開ける。
しばらく、そのまま天井を見ていた。
静かだ。
(……朝か)
体を起こす。
特に急ぐ理由はない。
この時間に決まった予定もない。
それでもーー
自然と、起きる。
◇
リビングに行くと、既に蓮也の姿はなかった。
「……出かけたか」
テーブルの上には、簡単な書き置き。
『買い出し行ってくる』
「……なるほど」
短く呟く。
冷蔵庫を開けて中身を確認する。
(……食料の補充か)
◇
昨日の帰りに買ったサンドイッチを食べて水を飲む。
(十分だな)
満腹である必要はない。
空腹でなければ、それでいい。
ソファに腰を下ろす。
手元にはスマホ。
自然と指が動く。
アプリを起動する。
図柄を繋げる。
消える。
また繋げる。
(……イベント期間限定ガチャの為に金貨、いや、コインを稼がねば)
思考と反射。
以前よりも、明らかに効率が上がっている。
ハイスコアも更新済みだ。
「……面白い」
小さく呟く。
◇
しばらくして、エナジーが無くなり画面を閉じると、立ち上がり外へ出る。
理由は特にない。
ただ、なんとなく。
◇
ーー昼。
街はいつも通りの賑わいを見せている。
人の流れに混ざる。
違和感はない。
視線を向けられることもない。
(……完全に馴染んでいるな)
そう思う。
歩いては時折立ち止まり店を覗く。
特に買うものはない。
蓮也曰く、ウインドウショッピングと言うらしい。
ただただ時間を消費する。
◇
「いらっしゃいませー」
聞き慣れた言葉。
自然と足が向いていたコンビニ。
(……習慣か)
適当に商品を手に取る。
甘味。
飲料。
会計を済ませて外へ出る。
(俺も慣れたものだな)
◇
近くの公園に入りベンチに座る。
菓子の袋を開けて口に放り込む。
「……悪くない」
静かな時間。
人の流れ。
風。
空気。
どれも自然で、どれもーー
(……穏やかだな)
◇
ーー夕方。
マンションに戻ると、既に蓮也が帰って来ていた。
「おかえり」
「……ああ、ただいま」
「どこ行ってたのよ」
「適当に歩いていた」
「なにそれ」
呆れた声。
だが、笑っている。
「まあいいけど」
◇
ーー夜。
準備を整える。
「今日も店出てよね」
「分かっている」
このやり取りが日常になっている。
◇
外へ出て並んで歩く。
既に見慣れた道。
見慣れた景色。
変わらない流れ。
(……)
ふと、思う。
毎日この繰り返し。
この時間。
この関係。
「……心地良いな」
「なにが?」
「いや」
少しだけ考える。
「……全部だ」
「ふーん?」
◇
ーーBAR《月影》。
いつもの場所。
いつもの時間。
扉を開けて中へ入る。
変わらない空気。
変わらない流れ。
その中で俺は今日も蓮也の手伝いをする。




