表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第2章【この世界での過ごし方】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/62

ep.38「月影」


 BAR《月影》は、この日もいつも通り落ち着いた光に包まれていた。


 外の喧騒は遠い。


 ここだけが、ゆるやかに時間の流れを変えている。


「いらっしゃい」


 カウンターの向こうで、蓮也が軽く手を上げる。


「……いつも通りだな」


「そりゃそうでしょ」


 そのままカウンター席に着く。


 少し遅れて、隣に腰を下ろす気配。


「……来たか」


「ああ」


 嶺二だった。


 いつもと変わらない短いやり取り。


 それだけで十分だ。



 目の前にグラスが置かれる。


 琥珀色の液体が間接照明の光を受けて、静かに揺れる。


「どう?」


 蓮也が聞く。


「香り良いでしょ?」


「ああ」


 一口飲む。


 喉を通る感覚。


「美味いな」


 その一言に蓮也が満足げに笑う。



 しばらく、静かな時間が流れる。


 客の落ち着いた話し声。


 氷がグラスに触れる小さなカランっという音。


 どれも耳に心地いい。


「……平和だな」


 ぽつりと呟く。


「急に何?」


 蓮也が笑う。


「いや」


 揺れる液面に視線を落とす。


「この日常も悪くないと思ってな」


「へぇ」


 少し意外そうな声。


「こっちの世界、気に入った?」


「……そうだな」


 少しだけ考える。


 そして。


「居心地はいい」


 正直に答えた。


「そりゃどうも」


 軽く笑う。



「……そういや」


 嶺二が口を開いた。


「最近どうだ」


「何がだ」


「居心地がいいと感じるくらいだ。流石にもう慣れたか、この生活」


「……ああ」


 応えに迷いはない。


「お前達にも良くしてもらってるしな」


「まぁな」


 それだけ。


 だがーー


 どこか楽しそうに口角を上げて嶺二はグラスを傾けた。



 ふと、視線を上げて店内を見渡す。


 穏やかな空気。


 客の微かな笑い声。


 静かな光。


(……)


 この場所。


 この時間。


 この関係。


 どれも、違和感はない。


 寧ろーー


(……馴染んでいるな)


 小さく息を吐いてグラスを傾ける。


 静かな夜。


 だが、その中で。


 確かに。


 俺の何かが満たされている。


「……悪くないな」


 小さく、そう呟きが零れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ