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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第2章【この世界での過ごし方】

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ep.37「物資補給作業」


 ーー深夜。


 昼間とは違う空気。


 人の数もそこそこ減っている。


「……」


 嶺二と並んで歩く。


 言葉はない。


 だが、気まずさもない。


「この時間は静かだな」


 ぽつりと呟く。


「人が減るからな」


 短い返答。


 それだけで会話は終わる。


 だが、それでいい。


 しばらく歩くと、明るい建物が見えてきた。


「……あそこだ」


 嶺二が顎で示す。


「例の補給施設か」


「ああ」


 自動で扉が開く。


 中へ入ると相も変わらず整然と並ぶ商品。


(……何度見ても無駄がない)


 効率的な配置。


 動線も考えられている。


「好きに見ていいぞ」


「ああ」


 頷いて棚へ向かう。


◇


「……」


 品物を手に取る。


 包装。表示。文字。


 理解できる。


 問題はない。


 だがーー


「……これは何だ」


 袋を軽く持ち上げる。


「菓子だな」


 隣から声。


「味は」


「甘い」


「大雑把だな」


「食えば分かる」


 それもそうかと籠に入れる。


 次。


 別の商品。


「……これは」


「それも菓子だ」


「多いな」


「この店はそういう場所だ」


「なるほど」


 合理的だ。


 需要に応じて供給されている。


◇


 しばらくして、会計。


 金を払う。


 袋を受け取って外へ出ると、ひんやりとした夜風が頬を掠める。


「……開けていいか」


「好きにしろ」


 先程の菓子の袋を開けると一つ取り出し、そして口に入れる。


「……」


「……甘いな」


「だから言っただろ」


「……そうだな」


 もう一口。


(……クセになる味だな)


 横を見ると、嶺二も同じように食べていた。


 無言。


 だが、自然だ。


「……こういう時間は嫌いじゃない」


 ぽつりと漏れる。


 嶺二が少しだけ視線を向ける。


「……俺もだ」


◇


 少し歩く。


 街灯の下。


「……これもあるぞ」


 嶺二が袋から別のものを取り出す。


「何だそれは」


「あんまん……温かい食い物だ」


「……温かい?」


 嶺二が半分に割ったそれを受け取る。


 手に伝わる熱が心地良い。


「……ほう」


 更に半分に割って口に入れてみる。


 もちっとした生地と広がる甘さ。


「……美味いな」


「だろ」


 そのまま並んで歩く。


 静かな夜。


 言葉は少ない。


 不思議と、落ち着く。


「……また来るか」


 小さく呟く。


「構わねぇ」


 それだけで決まる。


 夜の空気。


 温かい甘味。


 そしてーー


 隣にいる存在。


(……なるほど)


 少しだけ理解する。


 この感覚。


 言葉にする必要はない。


 ただーー


「……いい時間だな」


 そう呟いた。


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