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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第2章【この世界での過ごし方】

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ep.37「物資補給作業」


 ーー深夜。


 昼間とは違う空気。


 人の数もそこそこ減っている。


「……」


 嶺二と並んで歩く。


 言葉はない。


 だが、気まずさもない。


「この時間は静かだな」


 ぽつりと呟く。


「人が減るからな」


 短い返答。


 それだけで会話は終わる。


 だが、それでいい。


 しばらく歩くと、明るい建物が見えてきた。


「……あそこだ」


 嶺二が顎で示す。


「例の補給施設か」


「ああ」


 自動で扉が開く。


 中へ入ると相も変わらず整然と並ぶ商品。


(……何度見ても無駄がない)


 効率的な配置。


 動線も考えられている。


「好きに見ていいぞ」


「ああ」


 頷いて棚へ向かう。



「……」


 品物を手に取る。


 包装。表示。文字。


 理解できる。


 問題はない。


 だがーー


「……これは何だ」


 袋を軽く持ち上げる。


「菓子だな」


 隣から声。


「味は」


「甘い」


「大雑把だな」


「食えば分かる」


 それもそうかと籠に入れる。


 次。


 別の商品。


「……これは」


「それも菓子だ」


「多いな」


「この店はそういう場所だ」


「なるほど」


 合理的だ。


 需要に応じて供給されている。



 しばらくして、会計。


 金を払う。


 袋を受け取って外へ出ると、ひんやりとした夜風が頬を掠める。


「……開けていいか」


「好きにしろ」


 先程の菓子の袋を開けると一つ取り出し、そして口に入れる。


「……」


「……甘いな」


「だから言っただろ」


「……そうだな」


 もう一口。


(……クセになる味だな)


 横を見ると、嶺二も同じように食べていた。


 無言。


 だが、自然だ。


「……こういう時間は嫌いじゃない」


 ぽつりと漏れる。


 嶺二が少しだけ視線を向ける。


「……俺もだ」



 少し歩く。


 街灯の下。


「……これもあるぞ」


 嶺二が袋から別のものを取り出す。


「何だそれは」


「あんまん……温かい食い物だ」


「……温かい?」


 嶺二が半分に割ったそれを受け取る。


 手に伝わる熱が心地良い。


「……ほう」


 更に半分に割って口に入れてみる。


 もちっとした生地と広がる甘さ。


「……美味いな」


「だろ」


 そのまま並んで歩く。


 静かな夜。


 言葉は少ない。


 不思議と、落ち着く。


「……また来るか」


 小さく呟く。


「構わねぇ」


 それだけで決まる。


 夜の空気。


 温かい甘味。


 そしてーー


 隣にいる存在。


(……なるほど)


 少しだけ理解する。


 この感覚。


 言葉にする必要はない。


 ただーー


「……いい時間だな」


 そう呟いた。


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