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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第2章【この世界での過ごし方】

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ep.30「制御という名の慣れ」


 ーーカフェ。


 三人の間に、わずかな沈黙が落ちる。


 先程の共鳴。


「……で?」


 蓮也が口を開く。


「これ、どうすんのよ」


「丁度良い。このまま軽く訓練と行くか……じゃないとアイリーンに怒られる」


「……あんた!それが嫌なだけじゃない!」


「否定はしない」


「する気もないものね!?」


 失礼な……正直なだけだ。


「……場所変えるぞ」


 嶺二が立ち上がる。


「ここじゃ無理だろ」


「だな。外の方がいい」


「はぁ……」


 蓮也がため息を吐く。


「結局やるのね」


「やる。軽くな」



 蓮也が腕を組む。


「今度は何すんの」


「制御だ」


「急にレベル上がってない?」


「やることは同じだ」


 短く答える。


「意識するだけでいい」


「それができないのよ」


「できる」


 断言する。


「さっき出来ていた」


「無意識でしょ?」


「だからだ」


 視線を向ける。


「無意識で出来るなら、意識すれば尚強く出来る」


「理屈はそうだけど……」


 納得はしていない顔だ。


「やれ」


「はいはい……」


 蓮也が一歩踏み出す。


 空気が揺れる。


 だが、弱い。


「弱いな」


「うるさい」


 次に嶺二。


 動く。


 同じく、揺れる。


「……バラバラだな」


 小さく呟く。


「何がよ」


「今は“個別”だ」


 視線を交互に向ける。


「さっきは重なっていた」


「言われても分かんないって」


「なら感覚で分かれ」


「はぁ!?」


 だが、嶺二は理解したようだ。


「……同時に動けばいいのか」


「それでいい」


「は?」


 蓮也が困惑する。


「そんな簡単な話?これまでと同じ?」


「そうだ」


 嶺二が構える。


 視線を蓮也へ向ける。


「タイミング合わせろ」


「え、ちょっと待っーー」


「今だ」


 二人が同時に動く。


 その瞬間ーー


 空気が、はっきりと変わった。


 重なる。


 濃くなる。


 先程よりも、明確に。


「……っ!」


 蓮也が息を呑む。


「今の……!」


「ああ」


 嶺二も感じている。


「……これか」


「そうだ。それが“制御”の入口だ」


「入口って……これで?」


「繰り返せば、安定する」


 風が吹く。


 だが、その中で。


 確かに“何か”が存在している。


「……面白いじゃない」


 蓮也が口元を歪める。


「だろ?」


 小さく笑う。


「調子に乗るな」


 嶺二が一言挟む。


「暴走したら面倒だ」


「分かってるわよ」


 だが、その表情は悪くない。


 むしろーー


 楽しんでいる。


(……いい傾向だ)


 慣れればいい。


 理解すればいい。


 それだけだ。


「今日はここまでだ」


「早くない?」


「十分だ」


「ほんとに?」


「……今日からイベントなんだ」


「ゲームやりたいだけ!?」


「……次はもう少しやる」


「信用ならないわね」


「多分な」


「じゃあ俺は仕事に戻る」


「何、兄貴仕事中だったの?」


「ああ、九条組主催の会合に向かってたんだ」


「ダメじゃない!若頭の癖に何バックれてんのよ!?」


「だから今からちゃんと行く。じゃあまたな……セレス」


「なんだ」


「俺の今週の記録、抜けるものなら抜いてみろ」


「臨むところだ」


「兄貴もゲームにハマってんの!?」


「セレスのを見てたらやりたくなったんだ」


 片手を上げて去って行く嶺二を見送る。


 呆れる蓮也の隣で俺は少しの物思いにふける。


(これがこいつらの日常……はたしてクリスタリア王国に連れて行っていいんだろうか)


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