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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第2章【この世界での過ごし方】

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ep.29「引き寄せられる力」


 ーーカフェ。


 静かな空間。


(……来るな)


 視線を入口へ向けたまま、俺は動かないでいた。


「さっきから何?」


 蓮也が不審そうに覗き込む。


「入口ばっかり見て」


「……いや」


 短く返しながらも視線は逸らさない。


「誰か来るの?」


「来る」


「誰よ」


「すぐに分かる」


「何よそれ」


 当然の反応だった。


(近いな)


 距離も邦楽も分かる。


 そして。


 その感覚は、間違いなく嶺二のものだ。


 扉が開いた。


 カラン、と小さな音。


 同時に。


「……いたな」


 低い声。


 嶺二だった。


「……は?」


 蓮也が固まる。


「なんで兄貴がここに?」


「……なんとなくだ」


 それだけだった。


「いや意味分かんないんだけど」


「俺もだ」


 そして視線は俺へと向いた。


「……感じたか」


「ああ」


 短い会話。


 それだけで通じる。


「何その通じ合ってる感じ」


 蓮也が眉をひそめる。


「怖いんだけど」


「お前もだ」


「は?」


「さっきの」


 視線が向けられる。


「出てたぞ」


 一瞬、間が空く。


「……あれ?」


 蓮也が小さく呟く。


「やっぱ気のせいじゃなかったの?」


「違うな。明確に“出ていた”」


「なによそれぇ」


「問題ない」


「ほんとに?」


「制御されていないだけだ」


「それ問題あるやつでしょ」


 嶺二が蓮也の隣に腰を下ろす。


「……で?」


 短く問う。


「どうなってる」


「単純だ」


 カップを傾け、一口飲む。


「距離に関係なく“繋がる”」


「……は?」


「共鳴だ。お前たちの力は、独立していない。相互に影響する」


 沈黙。


「……つまり?」


 蓮也がゆっくりと口を開く。


「さっきのアレで、兄貴に繋がったってこと?」


「そうなるな」


「いや、なんだか便利ね」


 嶺二は小さく笑った。


「違いねぇ」


「連絡の必要ないし」


「位置も分かる」


「合理的だろう?制御すれば問題ない」


「その制御が出来てないんだけど!?」


「慣れろ」


「またそれ!!」


 そのやり取りに、嶺二が小さく息を吐く。


「……で」


 視線が向く。


「どうすんだ」


 少しだけ考える。


 そして。


「そのままでいい」


「いやよくないでしょ!」


「この前も言ったが、段階的に慣れればいい」


「ほんと適当よねあんた」


「本質だ」


「それ便利な言葉すぎるでしょ!」


「喧しいな……アイリーンみたいな事を言うな」


 騒がしい声に元の世界に居る妹を思い出す。


 月に一度の手紙で報告すべきだろうか……とても面倒だ。


 だが、やはり報告しなければならない。


 嶺二と蓮也の力は、より明確に、より深く、繋がった。


 ただ、この二人の力は独立していない。


 その全てを報せておかなければ、向こうに戻った時にガミガミと煩く言われるのは目に見えている。


(……まぁ、たまには面倒も悪くないか)


 そう思う。


 理由は単純だ。


 この現象は。


 この繋がりは。


「……面白いからな」


 小さく呟いた。


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