↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第2章【この世界での過ごし方】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/62

ep.28「零れた力」


「いやー、面白かったわね」


 蓮也が伸びをする。


「そうか」


「そうかじゃないでしょ」


 軽く笑われる。


 擦れ違う人の流れ。


 騒音。


 日常の中に戻ってきた感覚。


「ちょっと休んでく?」


 蓮也がふと立ち止まる。


「近くにカフェがあるのよ」


「そうか」


◇


 店内は静かだった。


 外とは違う。


 曲は流れているが音が抑えられている。


 空気も落ち着いている。


(……こういう場所もあるのか)


 案内された席に着く。


「セレス、何にする?」


「映画館では甘い物にしたからな……今度は甘くない物がいい。何かあるか?」


「そうねぇ……じゃあ任せて」


 ーー注文から少しして目の前に置かれた飲み物。


「これは?」


「ホットコーヒーよ」


 一口飲む。


「……苦いな。だが、悪くない」


「そうでしょう?ここのは格別良い豆使ってるのよきっと!」


 香りが残る。


 それが不思議と嫌ではない。


 寧ろ心地良い。


「すっかり慣れたわね」


「順応は早い方だ」


「それは見てて分かる」


 軽く笑う。


 静かな時間が流れる。


 会話も少ない。


(落ち着くな)


 そう感じた。


 その時だった。


 カップが、わずかに揺れた。


「……?」


 視線を落とす。


 波紋。


 ほんの一瞬。


 だが確かに揺れた。


(風ではないな)


 店の扉は閉じている。


 原因がない。


 その直後。


 空気が微かに変わる。


「……っ」


 隣を見ると蓮也の様子がおかしい。


「どうした」


「……え?」


 本人は気付いていない。


(……零れ出ているな)


 力が。


 無意識に。


「……何これ」


 蓮也が眉を寄せる。


「なんか、変じゃない?」


「感じるか」


「ちょっとだけ」


 その瞬間。


 空気がさらに揺れた。


 密度が増す。


「……」


 俺は静かに目を細めた。


(強いな)


 今までとは違う。


 偶発ではない。


 “出ている”。


 それもーー


(制御されていない)


 映画の余韻で高揚しているからか……


「蓮也」


「なに?」


「落ち着け」


「は?」


「いいから」


 短く言う。


 一瞬の間。


 そしてーー


 すっと、空気が戻る。


「……あれ?」


 蓮也が周囲を見る。


「今の何?」


「……気のせいじゃないな」


 小さく呟く。


「何よそれ怖いんだけど」


「問題ない」


 そう言うがーー


(実質、問題はあるな)


 確実に、段階が進んでいる。


 これはーー


◇


 ーー同時刻。


 別の場所。


「……おい」


 低い声。


 嶺二だった。


 目の前の男が動きを止める。


「どうしたんですか」


「……いや」


 一瞬だけ、間が空く。


(……蓮也、か)


 分かる。


 覚えのあるあの感覚。


 あの重なり。


「……少し外す」


「え?」


「すぐ戻る」


 それだけ言って、歩き出す。


 足は迷わない。


 理由も、説明もない。


 それでも確信している。


◇


 ーーカフェ。


 再び静かな時間。


 だがーー


 先程とは異なる。


(……来るな)


「どうしたの?」


 蓮也が覗き込む。


「いや」


 短く答える。


 そしてーー


 入口の方へ視線を向ける。


 まだ、誰もいない。


 だが。


(……間違いない)


 近づいている。


 その感覚だけが、はっきりとあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。