表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第1章【交わるはずのなかった者たち】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/18

ep.16「魔獣と呼ばれないもの」


 室内は静かだった。


 窓の外には昼の光。


 時間の流れは穏やかだ。


 ソファに腰を下ろし、手元の光る板に視線を落とす。


 指を滑らせる。


 同じ図柄を繋げる。


 消える。


 また繋げる。


 消える。


 無駄を省いて降ってくる図柄の配置を予想する。


 新たな魔法陣術式の研究にどこか似ているところがある。


「またそれやってるの?」


 背後から声。


 振り返ると、蓮也が呆れた顔で立っていた。


「問題あるか」


「あるわよ」


 腕を組む。


「どんだけハマってんのよ」


「スマホが俺を離してくれないんだ」


「アホなの」


 ため息を吐かれた。


 そして。


「ほら、行くわよ」


「……どこへだ」


「外。兄貴も呼ぶから」


 そのまま俺から取り上げたスマホを操作し始めた。


(……外、か)


 少し考える。


 この世界の観察としては悪くない。


「構わん」



 三人で並んで歩いていた。


 人の流れに混じる。


 違和感はもうない。


 完全に俺自身も“この世界の一部”として扱われている。


「着いたわよ」


 蓮也が足を止めた。


 視線を上げると大きな門。


 広い敷地。


 そして。


 中から感じる──


「……何だこれは」


 わずかに目を細める。


 敵意はない。


 だが、人間とは異なる気配が複数。


「ここが動物園よ」


 蓮也が軽く言う。


「動物……園?」


「動物を飼ってるとこ」


「……動物」


 入場して中へ進む。


 視界に入ってきたのは。


 巨大な獣。


 だが。


 檻に囲われている。


「……な」


 思わず、足が止まる。


「なんだ……魔獣を飼育しているのか?」


「魔獣じゃないわよ」


 蓮也が即座に否定する。


「ただの動物」


「ただの……?」


 視線を向ける。


 牙。


 爪。


 筋肉量。


(どう見ても戦闘向きだが)


「そして客達は愛でるんだ」


 隣で嶺二が淡々と告げる。


「愛でる……?」


 理解が追いつかない。


「従魔みたいなものなんだろうか……」


 蓮也が笑う。


「そうねぇ……ペットとか、そういう感覚に近いのよ」


「……戦わせないのか?」


「そんな事させないわよ」


「……」


 沈黙。


(合理性に欠けるな)


 だが。


 周囲を見る。


 子ども。


 大人。


 誰もが穏やかに笑っている。


 恐怖はない。


 緊張もない。


(……そういう文化か)


 納得する。


「にしても兄貴」


 蓮也が横目で見る。


「動物園似合わないわねぇ」


「うるせぇ」


 短い返答。


 だが、否定はしない。


 そのまま歩く。


 次々と現れる“動物”。


 どれも興味深い。


 だが、脅威ではない。


 それが不思議だった。


 檻の中の獣が、こちらを見る。


 目が合う。


 襲ってはこない。


 ただ、見ているだけだ。


(……戦わないのか)


 その在り方が、少しだけ新鮮だった。


 三人並んで見て回る。


 言葉は多くない。


 だが、不自然ではない。


(……悪くない)


 そう思う。


 風が吹く。


 穏やかな空気。


 危険はない。


 敵もいない。


 ただ、時間が流れている。


「どう?」


 蓮也がふと聞く。


「面白い?」


 少しだけ考える。


 そして。


「……悪くない」


 素直に答えた。


 蓮也が笑う。


 嶺二は何も言わない。


 だが、その歩幅は自然と揃っていた。


 視線を前に向ける。


 この世界。


 理解できないことは多い。


 だが。


(……退屈ではないな)


 小さく、そう結論付けた。


「こっちのふれあい広場で餌やり出来るわよ?」


「餌を与えてなんの利益があるんだ?」


「餌食ってる所が可愛いんだ」


「兄貴が言うと違和感しかないけど……まぁ、そういう事よ。どうする?やってみる? 」


「……やる」


 この世界の文化は興味深い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ