使徒
「アオ、来ていたのですね」
神父様が柔らかい声で呼び掛ける。
「こんにちは、神父様」
俺は短く答える。
目上の相手より長く喋る事は不敬なのだ。
「声を掛けてくれれば良いのに、、料理ですか?」
「はい、森の恵みです」
神父様はにっこりと笑い、胸で感謝の印を切った。
「神と、敬虔な使徒に感謝を」
使徒、、俺の事だ。
兎肉のソテーとスープが出来上がり、神父様の待つテーブルに運ぶ。
以前の神父様にはメイドが着いていたが、今の教会は神父様ひとりだ。
多分、、前の神父様は貴族の末席だったんじゃないだろうか。
辺鄙な田舎の開拓村に飛ばされて、大分と不機嫌だったからなあ。
しかし怖いのは村の娘に不埒を働いた後だった。
神父様は謎の病気を頂いたのだ。
俺には分からないし、分かりたくも無いが、
、、誰かが森のキノコでも使って、やったんじゃないかなあ?
知らんけど。
神父様の目の前に決められた所作、決められた皿の置き方で食卓を整える。
右手に茶碗だ。
神父様が祈りを捧げるのを背に、俺は部屋を出る。
神父様が食事を取っている間に、炊事場を片付けるのだ。
やっぱり人手が必要だよなー。
俺が毎日来れる訳でも無いのだもの。
神父様は自分で自炊も出来ると言うけども、明らかに慣れて無いものな。
子供の身ではどうにも出来ない悩みを考えると、モヤモヤする。
炊事場を整え、火の始末の確認をして礼拝所に向かう。
中央の神の像を見るが、祈るべきか迷う。
(いや、今でも食えてるのだもの、感謝するべきだな)
俺は俺をこの世界に落とした(かもしれない)神に跪き、祈りを捧げた。




