泥化
村長に納める塩は、父親の借金の返済の足しとなり、
俺の家は雰囲気が明るい。
畑は順調、末の息子は魔術師で小銭と肉を取ってくる。
生活は安泰といえど、更に借金返済が早まるとなれば、それはパパ・ママも嬉しくてはっちゃけるってもんだ。
で、母さんが身籠った。
おおう、、そうですか。
いや、嬉しいのだ、慶事なのだ。
やったね!タエちゃん、ってなもんだ。
しかしそうなると、家計にもう少し手を入れておきたい。
体が大きくなった兄貴らに畑は任せるとして、俺は新たな金策を考える事にした。
考えたのは製鉄だ。
いきなり何だ?と思うかもしれないが、森の先で赤茶けた山肌を見つけていたのだ。
製鉄なんて考えた事も無かったので迷ったが、えいやっ!とやってみる事にした。
甲本ヒロトも『考える前に、やっちゃいな』って言ってたからな。
誰だ、甲本って。
『磁力』『磁化』『帯電』、、適当に岩を割り出し、付与魔術を施す。
無事に磁石となった岩に縄を結び、それっぽい岩に近づけては、岩を割る。
地味だし、この岩がどれだけになるか分からないが、やるだけやってみよう。
最悪、母親の裁縫針くらいにはなるだろう。
岩を割っては持ち帰り、
畑と川の間に新たに建てた小屋には、どんどんと鉄鉱石が積み上がった。
しかし困った、鉄鉱石から不純物を取り除かないといけないが、
石灰も無ければ、ウチは川の上流なのだ。
川上で製鉄なんかして川を汚しては、俺は村の真ん中で裁きを受けるハメになるかもしれない。
考えてもしょうが無いので、大きめの石に凹みを作り、実験をする事にした。
「『泥化』!」
不安なので普段はしない、気合いと共に発声して、神様パワーを期待する。
出来る?出来るよね、神様信じてるよ。
普段の祈りか、神父様への寄進が効いたのか、『泥化』は成った。
石の凹みに置いた鉄鉱石は、見事にドロドロに溶けた。




