保存
1週間分のパンが焼き上がれば、希望者は俺の前に並ぶ。
付与魔術で『保存』を掛けて欲しい人達だ。
まー、いつも10家だな。
金に余裕があったり、飯に拘りがあったり、保存環境に不安があったり、
腹に自信が無かったり。
『保存』の魔術は高くは無い。
銅貨3枚でも良いし、薪2本、もしくはパン半分でも良い。
多分だけど、肩もみ券でも俺は引き受ける。
無料はダメなのだ、狭い集団で無料でやると、
以降、全ての家に無料でいつもやらなければならなくなる。
ストレスが半端無い。
俺にそういう村社会の人間関係の機微を教えてくれたのは、冒険者のニッダさんだった。
狩人として当初から村に在籍し、2年後には相棒のソフィアさんと結婚するらしい。
一緒に暮らしてるのに、5年も掛けて結婚だなんて、随分とのんびりだなと思ったが、
ニッダさんが昔に何かやらかしたらしい。
何をやったのかは、聞いていない。
ニッダさんとはたまに狩りに行く。
視点が俺とは違うので、勉強になるのだ。
森での隠れ方や(俺は『気配遮断』)
森での追跡や(俺は『感知』)
森での獲物の仕留め方(俺は『撲殺』)
大変勉強になるので、感謝している。
後、相棒のソフィアさんからは魔法について教わっている。
俺の付与魔術とは違う、属性魔法の使い手だ。
得意なのは風と水で、開拓でも随分と活躍していた。
本当は土魔法が良いのだろうけど、風の刃で木の根を切り刻むのだ。
適当に切り刻んだら、後を村民が皆で掘り起こしていく。
朝に一本、午後に一本。
100日あれば、200本。
ソフィアさんのお陰で、当初に想定していた以上にこの村は開拓が捗ったらしい。




