パン
家々にはそれぞれ炊事場とカマドがあるが、パンは焼けない。
パンは村で一カ所で、1週間分を焼くのだ。
これは燃料の節約や労力の節約という意味以外に、領主(村長)の権利であり税の代わりなのだ。
皆が必要とする主食と塩で、権力者が専売権を得るというのは、
東西の数々の文明が行ってきた事だ。
歴史スキーなら、現代のサラリーマンの語源が塩や、サラリウムな事は既知だろう。
村のパン焼きは、パンこねは皆でやるが、焼きは職人の家が行う。
付与魔術師である俺の役目は、焼き釜の横で燃料節約のために『温』を付与する事だ。
(付与魔術師の才能がある事が知られた話はまた後日)
単に火力を上げるだけなら放ったらかしで良いのだが、俺は焼きムラが気に入らない。
『温』『対流』で、釜の温度を最適(と思われる)状態に留めるのだ。
パン焼き釜は、釜だ。
現代のオーブンと違い、地面に伏せたお椀のような釜の内側に、平たいパンを専用の長い木べらで『パンっ!』と貼り付けるのだ。
「だから、パンなのか、、」
「あん?」
俺のボヤきに汗だくでパンを焼く、オーレンが首を傾げる。
村が出来て3年、彼のパン焼きも熟練の技になったもんだ。
パンが焼けるまで5〜7分程。
ちょうど釜にパンを『パンっ!』とやって、1週すれば最初のパンっが焼き上がる頃合いだ。
焼きが甘ければ、もう一度中に入れる。
まあ大体余熱で、焼けるし、
多少の生焼けでも皆気にしない。
開拓村はおおらかなのだ、クレーマーは村長の剣の前で堂々と言えば良い。




