牧畜
村のほとんどの家は農家で畑をやっている。
違うのは村長と副村長と、川を挟んだ山側にある畜産を営むゴイスさん。
ゴイスさんの家は他の家々よりも広く、
柵に囲まれた牧草地を持っていて、牛と豚と鶏と兎を飼っている。
50名の村を賄うのならそこまでの頭数は要らないのだけど、
村長のブランゲルさんが騎士出身で、肉に並々ならぬ情熱を持っていているのだ。
村の家々から出た野菜クズを、ゴイスさんの家まで持っていくのが俺の共同体での仕事だ。
一番年少だから、押し付けられているとも言う。
家々を回って、荷車を引いて坂道を上がり、豚と鶏と兎に餌をやる。
まあ、皆嫌がるが俺はそうでもない。
荷車は『軽量』化してるから坂道も楽だし、
クズ野菜はその日か前日に出たばかりのモノだから、腐ってもいない。
樽に詰めて、倒れないように縄をするだけだ。
良いものは形をそのままに兎へ。
鶏には雑穀と混ぜて、少し乾燥させて。
残りは『粉砕』して、全部豚さんの腹の中だ。
どいつも俺が持ってくる廃棄物だけじゃなく、牧場の隅で土を掘り返して勝手に食ってるから、
足りようが足るまいが、俺の知ったこっちゃない。
、、どうせコイツらは俺の食卓には登らないしな。
肉を食うの村長と副村長と、冒険者の家々だ。
彼らは村を守る戦力であるから、筋肉が必要なのだ。
農民にも筋肉は必要だが、筋肉の質が違う。
俺が餌やりと水やりを終えて、柵の向こうから豚の尻を眺めていたら、ゴイスさんがやって来た。
「アオか、終わったのか?」
「終わったよ」
村の人間は多くは喋らない。
喋ると腹が減るからな。
俺も面倒くさくなくて良いので、問題ない。
「アオ、明後日に豚をバラす」
「分かった、日の出る前で良いの?」
「ああ」
村長さんからリクエストなのか、明後日に豚を一頭バラすらしい。
俺にはその手伝いをしろとさ。
俺は3年間の解体実績があるから、村の人間よりも慣れているのだ。
今年手伝いきったら、行商のオレインに言って、解体用のナイフを買ってくれる約束だ。
いつまでも河原の石でやりくりくるのもだし、
俺は報酬無しに働くのが嫌なのだ。




