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22話「夏休み初日!」

「はぁ〜全く...寿命が十年は縮んだよ」


終業式を終えた放課後の生徒会室、三人揃って机に突っ伏しては、心身共に押し寄せる疲労の回復に務めている。


いつもなら長万部先生と田村くんも少しして現れるのだが、さしもの終業式、長万部先生はバタバタと忙しく走り回り、田村くんもそれを受け早々に帰ってしまった様だ。


「ほんと...怒涛の展開だったね、黙って見てる事しか出来なかったよ...ごめんね」


「けど良かったんじゃない?理事長のお墨付きって相乗効果で、全校生徒が認めてくれたんだから」


「あぁ、ただ一人を除いてな」


あれから、泣き崩れた甜歌ちゃんは長万部先生に抱えられて壇上を降りた後、声にならない雄叫びを上げながら走って出て行ってしまった。


その後も仕切り直して行われた終業式では僕と理事長の一問一答形式の演説、それから平八重と白石も交えての四人での質疑応答を行い、事細かな方針と目的、そのキャッチコピーを打ち出した。


「キャッチコピーはそうっ!」


『心身連なっての浮世からの解放っ!!』


既存の形式や文化をなぞるだけでは新規性のある物など生まれない。

だからこそのこれからの未来を担う僕たちの新しい挑戦!とその為の心身の解放!


「よくもまぁそんな嘘八百言えたもんよね」


「おじい様の質問にも用意してたみたいにすらすらと答えてたもんね」


「人生で初めてついた嘘は夢の為、なんだか感慨深いな」


勿論これは詭弁であり、全く持ってそんな上等な思想などは持ち合わせてなどいないのだが、兎にも角にもそれらしく急拵えに取り繕い、無事に正式にお許しを頂けたという訳だ。


「一番の山場は越えた...いや!むしろここからが本番だな!」


「夏休みの約一ヶ月間、悪いがお前達には遊ぶ余裕など無いと思ってくれ!」


「いいわよ、元からどうせ遊ぶつもりなんてなかったし」


「ちょっとはお休みが欲しいなぁ...なんて思ったりもするけれど、頑張るね!」


「そうと決まれば...さっそく今日中に宿題を終わらせるぞ!」


「いや無理でしょっ!?どれだけあると思ってんのよ!」


「弓月くん私、今日はさすがにもう疲れたよ...」


「えぇいだらしないっ!それでも生徒会役員共か!」


「吹寄だけには言われたくないっ!!」


「今日はもう、帰ろ?...ねっ?」


なら昂った心のやり場をどうすれば...とは思いつつも彼女達同様、疲労を色濃く感じる身体を労り三人連なって早々に帰路に着く事に。


程よく日の沈んだ夕方の空は綺麗に朱色に染まり、今朝同様まるで僕たちの門出を祝ってくれている様で、背後から吹く暖かな風は背中を押してくれている様な気がした。


一学期最後となる怒涛の一日はこうして幕を閉じた。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




起き抜けの、やけに大きい心拍音を逃がさないように起き上がる。


──────なんだがデジャブ味を感じる目覚めだ。


昨夜は帰宅早々に襲われた疲労由来の眠気から着の身着のままベッドへ向かうと泥のように眠ってしまい、気がつけば既に時刻は午前九時。


余談ではあるが『泥のように眠る』この言葉は読んで字のごとく『泥』を表す訳ではない。

中国の空想上の虫「泥(でい)」が骨を持たず、海から上がるとだらりとなる様子から「泥酔」などが生まれ、それが転じて「泥のように眠る」と言われるようになったらしい。


と、まぁ起き抜けにそんな事を考えつつ、すっかりシワシワになった制服をクリーニングに出して貰うため畳み纏める。


それから朝だって言うのにいつまでも眠っている『しらす』に挨拶がてら、その尾びれを撫でてやると、どこか心地よさそうな顔を浮かべている──────気がする。


夕食も取らずに寝てしまった為空腹を引っ提げて階下へと降りてみれば母親は既にパートへ出掛けた後で、机には昨夜の晩御飯がラップされた状態で置いてある。


「母さんには、悪い事したな」

そんな思考に耽りながら口にした炒飯は、どこかいつもよりも感謝の念からか美味しく感じた。


ピンポ──────ンッ


丁度食事を終えたタイミング、まだもう少し何か食べようかなと空き巣の様に冷蔵庫をガサゴソとしていた時、ふいに鳴り響く最も一般的で慣れ親しんだ玄関チャイムの高い音が耳に届く。


「はい、どちら様ですか?」


集合住宅の奥まった位置に佇む一軒家である我が家。

うちには宗教勧誘やセールスの類は滅多には来ないが、近年は何かと物騒な為、一応念の為こうして必ず一度モニター越しに来訪した人物の姿を確認する様にしている。


「おーいっ!吹寄、来たわよ!開けなさい」


「弓月くんこんにちは〜」


見れば、あっちもこっちも小柄な女の子と、あっちもこっちも大きな物をお持ちの女の子が二人画面に映し出されている。


「あっ...」


「あっ...てなに!?もしかしてあんた。言い出しっぺが忘れてたの?!」


「弓月くん、それはないよぉ〜...」


そうだ、今朝眠りに落ちる寸前、生徒会メンバーで作ったグループメッセージに確か...


『明日は朝から三人で宿題を終わらせよう、僕はもう寝るおやすみ』と送っていた気がする。


「あぁ...いや、忘れてた訳じゃないんだ、ただ夢だと思ってたと言うか...まぁご愛嬌という事でひとつ...」


「ッ!いいから早くっ...あけなさ──────いっ!」



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