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その夜、ケイは奇妙な夢を見た。
暗闇に包まれた空間に立っている。
「ここは……どこだ?」
周囲には、不気味な亡霊たちが彷徨っていた。
黒い影が蠢き、怨念の囁きが聞こえてくる。
「お前は無力だ」
「何も変えられない」
「再び、母を失うのだ……」
ケイは震えを感じた。
亡霊たちが皆、回帰前の大人のケイの顔と姿をしていたからだ。
貴公子と謳われたアルトレイ伯爵家の次男、ケイ。
美しい黒髪と黒い瞳、そして端正な顔立ち。
能力低下に苦しめられながらも、鍛えた肉体は若々しい牡鹿のよう。
だが、ケイの顔をした亡霊たちの目は虚無だった。
一筋の光もない闇そのものだ。
亡霊たちはケイに取り憑こうとしてきた。
冷たい手がケイの体を掴み、絶望を植え付ける。
「やめろ……!」
ケイは必死に抵抗するが、亡霊たちは笑い声を上げた。
「無駄だ」
「お前は無力だ」
「絶望に屈するがいい」
ケイは心が折れそうになった。
(また、同じ過ちを繰り返すのか……)
(また、母様を失うのか……)
亡霊たちは嘲笑を浮かべ、ケイを囲んでいく。
「絶望に堕ちるがいい」
「再び、絶望を味わうのだ」
その時、ケイの脳裏に母ポーラの微笑みが浮かんだ。
優しく微笑む母の姿が、ケイの心を温めた。
(俺は、母様を守るためにやり直したんだ)
(もう、絶望には屈しない)
ケイの目に決意の光が宿った。
「俺は、もう負けない! 母様を守るために、俺は強くなるんだ!」
勇者の光がケイの体から放たれ、眩い光が闇を照らした。
亡霊たちは悲鳴を上げ、光に飲み込まれて消えていく。
「消えろ……!」
ケイは叫び、勇者の光を全身にまとった。
その光は集まって、ケイの手の中で輝く剣として現れた。
放たれる金色の光が、亡霊たちを浄化していく。
「ほほーう。夢の中とはいえ、なかなかの活躍なのだ。相棒」
ピアディの声が響いた。
「こ、ここは夢なのか?」
「うむうむ。われ、夢見の術は得意なのだ。少しだけ手助けしてやったのだ」
見よ、とピアディは小さな手を伸ばした。
その先には深くて暗い海の底が見える。
――ピアディと出会った、回帰前の光景だ。
よく目を凝らすと、海の底に神殿がある。
だが黒い闇が絡みついて入り口が閉ざされている。
ケイの持つ光の剣が、再び金色の光を放った。
光は神殿の封印の一つを溶かす。
……少しだけ、海底神殿を覆う闇が薄くなった。
「そなたの決意、意志の強さを強さを見せてもらったのだ。さあ、――現実へ戻るのだ」
ケイはピアディをぷにっと抱き上げ、光の中で微笑んだ。
「俺はお前の期待に応えられてるか?」
「まだまだなのだ。せめて現実でも光の剣を出せるほど精進するのだぞ!」




