少年、女神におっぱいを語る。
「さて、そろそろ冷静になれましたか?」
「はい」
女神からのアイアンクローを5分間耐え切った少年、秋田健太郎はもはや心が折られて正座となっていた。
「それでは3つの力について共に考えていきましょう」
「その前に一つ良いですか女神様」
「なんですか?」
「そもそもなんで俺が勇者に選ばれたのでしょう?」
少年は女神、レシアにもっともな質問を投げかけていた。
今更な話ではあるのだがここまで少年はそれを聞かないでいたというのは、それだけその話題が少年にとって優先度が低いという心理の表れなのだろう。
少年にとって重要なのは過程ではなく結果である。
勇者になったことを理由を聞かずにすんなり受け入れたのも、そもそもこんなわけの判らない事態になってさえ微塵も動揺しないのも、そんな少年の在り方ゆえと言える。
「ああ、それですか。それについては多分何の理由もありませんよ。勇者召還は異世界の住民の中からほぼランダムで選ばれるシステムですから」
「あら、そうなんですか」
「ただその勇者として召還されるのも完全に無作為なわけではありません。悪人が勇者として呼ばれないよう出来る限り心に純粋さがある者しか召還に応じる事が出来ません」
「ほうほう」
つまりレシアの言葉を信じるのなら少年の心は純粋であるという事になる。
この少年、実のところ心はピュアな少年なのである。
「……私にはあなたが邪気の塊に思えてならないのですけれどね」
「またまたご冗談を」
「あ?」
「失礼しました」
少年は正座のままレシアに頭を下げた。
「……それではさっそく3つの力について話し合いましょう」
「そですね」
少年はピュアな心で素直に頷いた。
この状況は美人で年上な女性に正座プレイを強要されてるようで悪くないなとか思い始めていた少年だがそれでもピュアな少年であった。
「というかその3つの力ってどんなのが貰えたりするんですか?」
「そうですね……この3つの力というのはいきなり異世界に飛ばされても問題なく勇者活動を行えるよう補助するというものですので、あなたがどのような勇者になりたいかでその力の質も変わります」
「例えば?」
「もしあなたが武力で勇者を遂行しようとするなら私の世界で最強と言える武具を与える事が出来ますし、1発で見渡す限りの大地を焦土と化す炎魔法を授けたりする事も出来ますよ」
「ほう……」
レシアの話を聞いて少年はニヤリと笑みを浮かべる。
14歳という中二病まっさかりな少年にとって今の話は心の琴線に触れるモノがあった。
「フフフ……あなたもそんな力が欲しいですか?」
「いりません!!!!!」
「!」
しかし少年はその力を否定した。
そして少年のその力強い否定にレシアは思わず目を見開く。
「そんな殺生を行いかねない力なんて俺はいりません! 俺は誰も死なせない勇者を目指します!!! そうじゃないと俺は堂々と勇者を名乗る事が出来ないですから!!!!!」
「……なるほど。どうやらあなたは真に勇者たる資質を持っていたようですね」
少年の勇者像を聞き、レシアは感嘆の声をあげる。
見誤っていた。ただのお調子者の子供ではなかったのだと、レシアは少年への認識を改める事にした。
「素晴らしい志です。それでこそ私たちが力を与えるにふさわしい勇者です。今私はあなたが勇者として呼ばれたことが正しかったのだと思い直しましたよ」
「いやいや~それほどでも~、あっ、もっと褒めてもいいんですよ~?」
レシアの手の平返しに少年は気をよくしてユルユルな顔で頭をかいている。
「頑張ってくださいね。勇者として見事世界に平和をもたらす事が出来たら褒賞も与えられますから」
「ん? 褒賞?」
少年は今レシアが言った褒賞という単語に反応し、レシアに聞き返した。
「はい。私たち神から何でも1つだけ願いを叶えてもらえるという褒賞です」
「マジで!?」
「マジです」
少年の必死とも言える問いかけにも動じずにレシアは答える。
「それって本当になんでもですか!? その言葉に偽りはありませんか!?」
「え? ええ、ありませんよ」
なおも続く少年からの念押しにもレシアは頷いていく。
我々神に叶えられない願いなどない。
その事に偽りなどないのだからという思いゆえに。
「うは! 凄いですね! 流石は女神様! マジぱねえっす!」
「そうでしょうそうでしょう」
やっと少年も自分の言っていることを信じてくれたか。
レシアはそう判断してふうっと息をついた。
しかしその後に放たれる少年の言葉に、レシアは安堵から驚愕へ一変する事になる。
「じゃあ俺が世界を平和にしたらレシアさんのおっぱい揉ませてください!!!!!」
「いいですともいいですとも……………………はっ!?!?!?」
少年が願ったそのあんまりな願いに、レシアはその意味を数秒理解することができなかった。
「約束ですからね! もう取り消し不可ですからね!」
「ちょちょちょ待って! 何!? あなたは神から授けられる褒美をそんな事に使うつもりですか!?」
「えっ」
「いやいやいや、えっじゃないですよ! あなたはわかってるんですか!? あなたが望むなら巨万の富を得ることだって出来るんですよ!? 1つの国の王になる事だって出来るんですよ!? 今あなたが言った望みよりもこっちのほうが魅力的でしょう!?」
レシアはこの褒賞によって得られるものの価値を示す事によって少年に考えを改めるよう説得する。
この褒賞はより有意義に使えるものなのだと、胸を揉むなどという愚かしい行為のためだけに使うものではないのだと言い聞かせるかのように。
「マジですか。それはそれで確かに魅力的な褒美ですね」
「そうでしょう? ですからさっきの願いは取り消して他のことに――」
「でも俺はおっぱいを揉みたいんです!!!!!」
「はぁ!?!?!?」
「俺はおっぱいが揉みたい! 俺はレシアさんのおっぱいが揉みたいんです!」
少年はレシアに向かっておっぱいが揉みたいと連呼した。
とても初対面から1時間もたっていない女性に言う事ではない。
ましてや神に言う事でも断じてない。
「そんなこと巨万の富を得て他の女性に頼めばいいじゃないですか! 王になって好き放題揉めばいいじゃないですか!」
レシアは必死になって少年を説得しようとする。
別に自分じゃなくてもいいじゃないかと、他の褒賞を得て別の女性の胸を好きなだけ揉めばいいじゃないか、と。
しかしその説得は少年に対して無力だった。
「……お金でレシアさんのおっぱいは揉めるんですか?」
「え?」
「権力でレシアさんのおっぱいは揉めるんですか?」
「い、いえ……そういうことは無いですが……」
「だったら俺はレシアさんのおっぱいを揉むことに褒賞を使いたいです!!!!! お願いします! レシアさんのおっぱい揉ませてください!!!!!」
「えええぇぇ……」
そう。少年は理解していたのだ。
レシアのおっぱいを揉めるとしたらこの褒賞を使う以外に術は無いのだ、と。
女神たるレシアのおっぱいは金や権力などで揉めるような代物ではないのだ、と。
「な、なんでそんなに私のおっ……胸を揉みたいんですか?」
「そこにおっぱいがあるからです」
おっぱいマイスターたる少年は極めて真剣な声でレシアにそう言い放った。
確かにそこにおっぱいがあれば揉みたくなる。
1つの真理である。
そしてそのおっぱいが富や権力で揉めないものなら尚更揉みたくなるのが男の心理であろう。
「……私、胸大きくないですよ? ……あなたはこんなのがいいんですか? こんなものに……価値なんてありませんよ?」
だがそれに対してレシアは自らの胸を白い服越しに撫で、そんなことを寂しそうに言った。
自らの体の貧相さを自嘲するかのように、自らの胸が貧相である事を確認するように。
少年が必死に願ったその褒賞は価値が無いと馬鹿にする言動だが、それは自らをも傷つける諸刃の剣としてレシアの心を抉った。
しかしそんな言葉は少年にとってどうでもよかった。
「おっぱいに良し悪しはあれど、おっぱいは大きさで優劣が変わるものではありません」
「え?」
少年はおっぱいについて語る。
「大きいおっぱいは長所として捉えられる場合が多いですが、逆に小さいおっぱいが短所になるというわけではありません」
「…………」
「無乳、大いに結構じゃないですか。それはあなたの短所ではありません。むしろ長所なのです」
「…………」
「とある偉い女子高生は言いました。貧乳はステータスだ! 希少価値だ!……と。それは無乳においても変わる事はありません」
「…………」
「大きいおっぱいには大胆さや豊かさ、そして母性を感じさせるといった良さがありますが、小さなおっぱいには慎ましさや素朴さがあり、形が美しいまま崩れにくいという良さがあります。その魅力はどちらも等しく我々の心を締め付けるものです」
「…………」
「なのであなたも自分のおっぱいを卑下するような発言はお止めなさい。あなたのおっぱいは大変価値があるものなんですから」
「……はあ」
「わかっていただけたようで何よりです。おっぱいの伝道師たる私も嬉しい限りです」
「…………」
「ではもう一度言います。俺にあなたのおっぱいを揉ませてください」
「……あ、はい。もういいです、どうでも」
女神はおっぱいを語る少年にドン引きだった。
それがたとえ少年なりにレシアを励まそうとした話であっても、とても初対面から1時間もたっていない女性に語ることではなかった。
ましてや神に語ることでも断じてなかった。
レシア内の少年に対する好感度はストップ安になった。
こうして少年は世界平和の完遂後に女神のおっぱいを揉む権利を手に入れた。
祝日的なあれなので2時間で書きました。
次の投稿は絶対来週。




