少年、女神のお父さんに挨拶する。
山賊達と戦う1日前、少年は白い世界で目を覚ました。
「……おろ?」
少年は目を開けると何が起こったのかわからないといった様子で辺りをキョロキョロ見回し始めた。
「あるぇ~? なんで俺こんなとこにいんの?」
目の前に広がる白の世界を見ながら少年、秋田健太郎は首を傾げていた。
「さっきまで失恋で傷ついた心を癒すために自室で「おっぱい刑事清純派」の乳揺れシーン抜粋編集をしていたはずなのに……」
「……あなたはさっきまで一体何をしていたのですか?」
少年が先ほどまで行っていた所業を口に出したその時、どこからか女性の声がし始めた。
「! 曲者!」
「いや曲者じゃないですよ……あなたのほうがよっぽど曲者ですよ……」
少年は警戒し女性の声は呆れていた。
2人の間にあるギャップは天と地ほどの差があった。
いや、正確には神と人という差があるのだが。
「私は女神レシア。世界「レンシア」を管理している神の一柱です」
「あ、これはどうもご丁寧に。俺の名前は秋田健太郎って言います。こんな名前ですけど千葉県在住です。よろしくお願いします」
レシアと名乗る女性の名乗りを受けて少年も人としての礼儀として自己紹介をしつつ頭をぺこりと下げた。
少年はこれでも常識人なのである。
「はあ……それであなたは何故ここにいるのですか?」
「そんなの知りませんよ。というよりあなたは今どこにいるんですか?」
ここは何処かと聞くより先に少年は大人の女性の声であるレシアの事が気になっていた。
何時でも何処でも少年は冷静だった。
冷静にこの声の主は美人かな?巨乳かな?と思っていたりしていた。
「おっと、すみません。確かにお話をする時に顔も見せないのは失礼ですよね」
そしてそのレシアと名乗る声の主は少年に謝り、次の瞬間白の世界に金色の光が満ちた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!! 目が!!!!! 目がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
いきなりの強い発光現象をもろに見てしまった少年の目は強烈な目くらましにあってしまった。
目を閉じながら少年は白い地面をゴロゴロと転がりまわる。
「わわわ! ちょ、大丈夫ですか?」
それを見てレシアは少年を気遣う声を出した。
「俺はいつでも元気ですよ! でも光るならそう言って!」
だが少年はすぐ近くから聞こえる女性の声に反応して飛び跳ねすぐさま直立姿勢をとり始める。
「そ、そう……大丈夫なのは良かったですけれど……」
そんな少年のハイテンションぶりに若干引き気味になっている女神レシア。
2人のテンションの差はとどまるところを知らない。
「……ふぉおおおおおぉぉぉ……」
そして少年の目が良好になり、その目がレシアを捉えた瞬間、少年の口から感嘆のため息なのか気を練っているのかよくわからない声が出始めた。
「うつくすぃ~……」
若干イラッとくる発音で少年はレシアのことを美しいと称した。
確かにレシアは均整の取れ顔立ちと体のスタイルや風もないのにさらさらとなびく黄金の髪など、女神と呼ぶにふさわしい美貌を持ち合わせていた。
「でも無乳ですね」
しかし貧乳であった。
いや、いっそのこと少年の言うように無乳と称した方が正しいのかもしれない。
「…………」
「あだだだだだだだだ!!!!! ごめんなさいごめんなさい!!! 無乳とかいってごめんなさい!!!!!」
少年は女神にアイアンクローを受けていた。
この女神、何気に武道派であった。
「……わかればいいのです、わかれば」
だが一応少年が謝った事により、リンゴを容易く握りつぶすかというレベルの握力から解き放たれて少年は助かった。
「……無乳なの気にしてるんですね」
「あ?」
「いきなりガン飛ばさないでください怖いです」
なおも無乳と言う少年に殺気のこもった目つきを向けた女神は既にキャラ崩壊寸前であった。
「……それで? あなたは何故ここにいるのですか? ここは普通の人には入れない領域のはずですよ?」
「いやだからそんなのわかりませんって。気づいたら俺ここにいたんですよ?」
「そんな……」
少年がなぜここに来れたのかわからない女神はその場で頭を抱えてしゃがみこんでしまった。
「ここは神聖な領域のはずなのに……神と眷属、それに勇者候補しか立ち入ることができないはずなのにどうして……」
「それはワシのほうから話そう」
「!? お父様!?」
頭を抱えていたレシアと、今俺の部屋に親入られたらおっぱい刑事見られてやべーなぁと思考をあさっての方向に持っていっていた少年のところへ更にもう1人、威厳のある男性の声が聞こえ始めた。
「久しぶりじゃの、レシア。元気にしておったか?」
「は、はい! お父様の方も御壮健なようでなによりです!」
「そうかそうか」
レシアと謎の男の声はそんな会話をし続けていた。
そして蚊帳の外に置かれた少年が謎の声を主に向かって声をかけた。
「初めましてお父さん。俺の名前は秋田健太郎14歳。花も恥らう中学生です。レシアさんとはまだ手も繋いですらいない仲ですが俺は彼女との事を真剣に考えていますのでどうぞ末永くお付き合いください」
「何いきなり彼氏紹介みたいな自己紹介してんですか!?」
レシアが少年の謎挨拶にツッコミをいれていた。
この女神、何気にツッコミ体質であった。
「ふむ、君が秋田健太郎だね?」
「あ、はい、そうです」
少年の戯言を懐の深さでスルーした謎のお父さんは少年に声をかけた。
「君を呼んだのは私だ。レシアではない」
「あ、そうだったんですか」
少年を呼び出したのは謎のお父さんであったという事実を少年は淡々と受け止める。
少年は女性と話す時以外、あんまりテンションが上がらない性質なのである。
「お、お父様。何故彼をこの領域に招いたのですか?」
そしてレシアは謎のお父さんへ疑問を投げかけていた。
「それはの、レシア。お主が管理している世界に勇者を派遣しようと思っての」
「ゆ、勇者をですか!?」
レシアは勇者という単語を聞くと途端に慌てだした。
「うむ。近頃お主の世界は治安が乱れておるのう? わしには全てお見通しじゃぞ?」
「う……」
図星を突かれたのかレシアは声をつまらせていた。
その世界の神としての管理が行き届いていないことを看破されたレシアはその場で項垂れる。
「しかしそれもそこまで酷い状況ではない。勇者を1人派遣するだけで世界の治安も回復するじゃろう」
「……その勇者が彼ということですか?」
レシアはそう言いながら少年をチラ見する。
「あ、どうも、勇者の秋田健太郎です」
そしてそんなレシアに向けて少年はキメ顔で自らは勇者と言い放った。
少年は今の会話で全てを悟るほどの異次元的な理解力を持っていた。
「つまり俺はレシアの世界で勇者になればいいんですね? お父さん」
「そういうことじゃの」
「でも俺弱いですよお父さん。近所のゴローにも泣かされるくらい弱いですよお父さん」
少年の言う近所のゴローとは幼馴染の女の子の家が飼っているチワワのことである。
そのチワワは何故か少年が近づくと思いっきり噛み付くため、少年とは犬猿の中だった。
ちなみにこの表現だとあたかも少年が猿であるというように思えてしまうのだが、まあ似たようなものである。
「大丈夫じゃ。お主の体には勇者としての本分を全うできるよう強靭な身体能力を授けよう」
「おお! 流石ですねお父さん!」
「そして更にお主が望む力を3つまで授けよう」
「おおお!! 太っ腹ですねお父さん!!」
「さっきから私の親をお父さん呼ばわりするの止めてもらえませんかね。お父さんと呼ぶ事に何の躊躇いもないのホント止めてもらえませんかね」
謎のお父さんと少年の話が盛り上がっていたところへレシアが今更なことをツッコんでいた。
「まあよいではないか。広義的に見ればワシがこの少年の親であるということも間違いではないのだからのう」
「ぐぬぬ……」
しかし謎のお父さんは娘の抗議をやんわりと受け流した。
些細なことではブレない朗らかなお父さんであった。
「ワシはそろそろ業務に戻らねばならぬので3つの力についてはレシアと一緒に決めるが良いぞ」
「あ、はいわかりましたお父さん。レシアさんのことは任せてください」
「だからちょくちょく彼氏面で喋るの止めてくれませんかね!?」
「ふぉっふぉっふぉ。では達者での」
「式の日取りが決まりましたら連絡させていただきますので」
「何の式を挙げるつもりですかねえ!? ちょっとここであなたの告別式でも挙げれるようにしましょうかねえ!?」
女神が完全にキャラ崩壊している中、謎のお父さんの声は聞こえなくなった。
「さて、マイハ二ー、子供は何人くらいの方がいい?」
「だからもうそれ止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
調子に乗りすぎた少年はその後女神にアイアンクローをくらっていた。
日曜だったので2時間で書きました。
次の更新は今度こそ来週。




