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「ねぇウミガメさん? 私の前では、どんなふうに踊ってくれるのかしら♪」

登場人物についての詳細は↓のとおりです。

https://ncode.syosetu.com/n7086km/58

 冬休み最終盤の、静まり返った学校。

 八々花女子高校・サッカー同好会の部室では、冷え切った空気の中、画面から漏れる青白い光がサッカー同好会のメンバー、そして顧問の三芳野の顔を強張らせていた。


 ノートパソコンの画面に映し出されているのは、兵庫のピッチ上で今、日本の頂点を決める『冬の選手権・全国決勝戦』――。

 絶対王者【神園学園】と、秋に自分たちをハコテン(完敗)にした【一文字学園】の、次元の違う頂上決戦。

 それは、画面越しであっても息が詰まるほどの蹂躙劇だった。


 キックオフ直後、一文字の誇る冷徹な『国士無双システム』が牙を剥く。

 ハツミの爆速ドリブルをデコイにしつつ、完璧に計算されたパスワークのグリッド(檻)で神園をハメ込みにいく。


 だが、神園の一軍FW、スペードのAこと剣崎英子アリスは不敵に微笑むだけだった。


「――♪ トゥイードルダムとトゥイードルディー、決闘をすることになった」


 アリスの口から、冷徹で狂気的なマザー・グースの歌声が漏れ聞こえる。

 立ちはだかったのは、一文字の誇る鉄壁の双子ディフェンス、萬屋一万と萬屋二万の2人。秋の予選で八々花の攻撃陣を絶望させた双子の「リャンメン(両面)の包囲網」に対し、アリスは歌のリズムに合わせて軽やかにステップを踏んだ。


「――♪ どちらかが、お互いの服を台無しにしたってんでね」


 一文字が「完璧な守備位置」へハメ込んだはずの瞬間、アリスの重力を無視したかのようなステップ《ワンダーランド》によって、萬屋姉妹は「距離感がバグる」錯覚に陥る。


 右足のインサイドで球に触れたと網膜が認識した次の瞬間には、アリスの身体はすでに左の死角へと音もなくすり抜けている。

 まるで画面の向こうのピッチそのものが鏡の国のように反転し、空間ごと歪められたかのような圧倒的な違和感。

 一文字の精密なデータが弾き出したはずの「ディフェンスの最適解」が、そのステップ一枚で物理法則ごと書き換えられていく。

 歌いながら楽しそうに双子を翻弄し、一文字のシステムが「計算不能」の警告音を鳴らして完全にフリーズしたその刹那、アリスのトドメの二の矢が容赦なく襲う。


「ねぇ()()()()さん? 私の前では、どんなふうに踊ってくれるのかしら♪」


 不敵に、けれど残酷にそう呟いた瞬間だった。

 一切の無駄を削ぎ落とした超高速・超鋭角の「斬首の魔剣」――《ヴォーパルブレイド》の鋭いシュートが放たれる。

 一文字のゴールキーパーである北山巳()が反応することすら許さず、その絶対的な弾道は一文字の守備網を音もなく、冷酷に解体(斬首)した。


――チィン、


 すさまじい風切り音。

 巳亀が一歩も動けないまま、一文字のゴールネットが激しく、そして無慈悲に跳ね上がった。

 圧倒的な「剣」。神園のトランプが誇る一軍エースの、それが真の実力だった。


「そんな……一文字のあの完璧な双子の壁も、玄武の守りすら、ただのおもちゃみたいに弄ばれて……」


 部室のパイプ椅子の上、椛が信じられないものを見るかのように呆然と呟く。

 その真横で、胸元を無意識にきゅっと握りしめていた鳳桐子が、押し殺した息の下から戦慄の声を漏らした。


「アタシがいなくなった間に、遥かに強くなってるっ……!」


 だが、神園学園の真の恐ろしさは、アリスの牙だけでは終わらない。

 一文字学園もまた、王者の前でただ無様に散るためだけにここに立ったわけではなかった。


 試合終盤、一文字が死に物狂いで放った『ぱいん』の空中蹴鞠。


「――アリッ。」

 ドシュッ――!


 それは、八々花との激闘を経て一文字が掴み取った、執念の、そして計算を遥かに超えた変則的な空中ボレーシュートだった。

 完璧な軌道。誰もが「一矢報いた、決まった」と確信し、スタジアムに爆音の歓声が響き渡りかけた、まさにその刹那。


 神園の新守護神・原アテナが、氷のように冷徹な瞳でその弾道を見据えていた。

 アテナは微動だにしない。恐怖も、焦りも、驚きすらもない。

 ただ、最初からそこにボールが吸い込まれるように「規律プログラム」が組まれていたかのように、そっと右手を翳すだけ。


 鉄壁の魔技――《神盾イージス》。


ドッ――、


 重い衝撃音がスタジアムの空気を震わせる。

 しかし、次の瞬間には、一文字の決死の魂が込められた弾道は、アテナの指先一つによってそのすべての推進力を冷酷に奪われ、完全にシャットアウトされていた。

 弾くことすらしない。まるで最初から止まったボールを拾い上げるかのように、アテナは無表情のまま、その掌の中にボールを完全に収めてみせたのだ。


 絶対的な「盾」。

 一文字の進化すらも、神園の完璧な規律の前には、ただの想定内のデータに過ぎない。


 画面を見つめる八々花メンバーたちの足が、あまりの次元の違う「王者の世界の差」を前に、震えるのを止められなかった。

 自分たちの蹴鞠や伝統技術は、あの完璧な矛を、そしてあの絶対的な盾を、1ミリでも破ることができるのだろうか。


 試合は神園学園の圧倒的な大差での優勝で終了。

 画面の向こうのスタジアムも、そしてこの狭い部室も、あまりの実力差に歓声すら起きず、静まり返っていた。

 配信終了の暗転が、言葉を失ったイレブンの顔を青白く映し出す。


 冷たい冬の静寂が、彼女たちの背中を、無慈悲に突き刺していた。


 ――コンコン。


 その時、重苦しい沈黙を破るように、部室の扉が静かにノックされた。

 ガラリと開いた扉の向こう、凍てつく空気を鋭く切り裂くように、その声は響いた。


「――久しぶりね、桐子」

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


次回予告――

 冬の全国選手権決勝で目撃した、絶対王者【神園学園】のアリスと原アテナによる異次元の蹂躙。

 圧倒的な世界の差に打ちひしがれるイレブンの前に立ちはだかったのは、かつての元・神園の五光の恩師であり監督だった!

 スタジアムの通路で凍りつく13人を引き連れ、向かったのは……ひまりが巫女服姿でせっせと働く、松の内最後のお仕事中の『菊堂神社』!?

 伝統芸能の申し子と、絶対的な戦術の怪物の、最悪で最高の電撃マリアージュ(合流編)が幕を開ける!


 次回、第94話【「覚悟しなさい。明日からあなたたちの『神域』を、神園を壊すための地獄に変えてあげるから」】どうぞお楽しみに!――


「アリスの《ワンダーランドッ》からの《ヴォーパルブレイド》のダブルスキルゥ!?ウミガメってそういうことか!!」

「原アテナwwwイージスwww」

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