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「うっわ、マジ最高っしょ!! 何これ、全員ビジュ爆発しすぎてて、あーしのスマホのカメラロールが一瞬で潤うやつじゃん!!」

登場人物についての詳細は↓のとおりです。

https://ncode.syosetu.com/n7086km/58

 夏の日差しが最も眩しく輝く、正午近き頃。

 各自がお気に入りの自前の勝負水着へと着替えを終え、サファイアブルーの海へと繋がる、別荘の重厚な扉が静かに開かれた。


 まばゆい陽光の下、一番に皆の前へと降り立ってきたのは――やはり牡丹であった。


 自前の気品あるミントグリーンのビキニの上に、純白の『P&P』の限定レースパレオをリボンのように優雅に腰に巻いて。


 その隣へスッと並び立った椛は、普段の男前なオーラとは裏腹に、背中が大きく開いたシックな漆黒のワンピース水着を完璧に着こなし、お揃いの純白パレオをまるで宝塚のケープ(マント)のように格好よく肩から翻している。


「さあ、お手をどうぞ。ボクの美しい牡丹くん」


 椛が麗しい笑みを浮かべてスマートに右手を差し伸べれば、「あら、ありがとうございます、椛さん」と牡丹が少し頬を染めてその手を握り返し、2人は絵画のような美しさで白砂のビーチへと歩みを進めていく。


 そんな華やかなトップステージに続くようにして、更衣室から姿を現したのは千鶴と桐子であった。


 千鶴は、自前の長袖の黒いラッシュガードに、スポーティなショートパンツスタイル。

 お嬢様から貸し出された『P&P』の限定レースパレオを「動きにくいから」と更衣室に残し、首元までガッチリとジッパーを閉めた1ミリの隙もないその佇まいは、浜辺の上でも相変わらず男前な守護神そのものであった。


 その隣で、いつもの気怠げな調子で長い髪を弄ぶ桐子は、千鶴の黒とは対照的な、驚くほど色鮮やかな深紅のホルターネックビキニをまとっていた。最高級ブランドの純白レースパレオを胸元で贅沢にクロスさせ、アンニュイでありながらも目を奪われるほどセクシーに大人っぽく着こなしている。


「ふふ、千鶴のラッシュガード、相変わらず隙がないね。せっかくの海なんだから、もうちょっと前を開けたらどうだい?」


「お前が開きすぎなんだ、桐子。……おい、風が冷えるといけないからパレオをはだけさせるな」


 千鶴が低い声音で過保護に桐子のパレオの裾を整えてやる中、その背後から、ボストンバッグを抱えるようにして最後に出てきたのは柳だった。


 柳の水着もまた、彼女のしなやかな肉体美をそのまま引き立てる、自前の紺色のセパレート型アスリートスポーツ水着。

 千鶴の背中を追うように、お洒落なヒラヒラを更衣室に置いてきたらしく、飾らないその姿は彼女の職人のようなストライカーとしての美しさを逆に鮮烈に際立たせていた。


「……んっ」


 周囲のあまりの華やかさに少しだけ気恥ずかしそうな表情を浮かべながらも、目の前のサファイアブルーの絶景と先輩たちのタカラヅカステージに、丸い目を驚きで大きくさせて佇んでいる。


「うっわ、マジ最高っしょ!! 何これ、全員ビジュ爆発しすぎてて、あーしのスマホのカメラロールが一瞬で潤うやつじゃん!!」


 最後に、更室──ではなく更衣室から爆速で飛び出してきたまつりは、トレンド最先端の鮮やかな蛍光ネオンピンクのチューブトップビキニ姿。


 お揃いの純白レースパレオをこれでもかとギリギリの超ミニ丈で腰に巻きつけ、抜群のスタイルを惜しげもなく披露しながらスマホのシャッターを連打した。


 最後に更衣室から爆速で飛び出してきたまつりが、スマホのシャッターを連打して大はしゃぎの声を上げる中、牡丹と椛、そして千鶴と桐子の4人は、白砂の上に設営されたラグジュアリーな大型パラソルの特等席へと向かって歩き出す。


 自前の紺色アスリートスポーツ水着を纏った柳も、大きな水着バッグを抱えたまま、影のようにスッとその後に付き従っていた。


 だが、サマーベッドが近づいてきたその時、柳が千鶴のラッシュガードの袖をボソッと引いた。


「……ん」


 短い口癖と共に、柳はしなやかな腕をスッと伸ばし、少し離れた沖合にぽつんと浮かぶ、小さな島をその指先でピシッと指し示してみせた。


 言葉は一切ない。

 だが、その丸い瞳と指先から放たれるオーラは、「あそこまで、柳とガチの遠泳で競争しませんか」と全力で誘っているのが一目で分かった。距離にして、およそ一キロといったところか。


「なんだ?……あの島まで競争? 俺は桐子を見てる。お前ひとりで行ってこい」


 千鶴は柳の指先を見ただけでその意図を瞬時に見抜き、視線は1ミリも桐子から動かさないまま、低い声音で男前に断った。

 普段から言葉を交わさずとも互いの目線だけで完璧なディフェンスラインを築き上げている、本物の相棒同士だからこその阿吽の呼吸。そして、片時も桐子を1人にはさせないという、守護神ならではの絶対的な過保護ガード。


「……ん」


 千鶴に断られた柳は小さく一度だけ頷くと、次の瞬間にはその場から音もなく弾け飛んでいた。


シパパパパッ!


 足元が不安定なはずの白砂のビーチを、まるで乾いたピッチの上であるかのような凄まじい足さばきで爆走していったかと思うと、


ザバァッ!


 勢いのままサファイアブルーの海へと躊躇いなくダイブし、水飛沫を上げて飛び込んでいったのだった。


 そんな野生の相棒の爆速スプリントを見送ってから、数分後。 夏の心地よい波の音と潮風に包まれた千鶴は、過保護な警戒心とは裏腹に、パラソルの下でついウトウトと心地よい微睡まどろみの中へと落ちていってしまった。


 ──そして、どれほどの時間が経った頃だろうか。


「……ん? 何だ……身体が動かない……っ!?」


 ふと意識が戻り、目を覚ました千鶴は、自分の肉体が1ミクロンも砂浜から動かせないという異常事態に、初めてその男前な顔を戦慄に歪めた。


 見れば、千鶴の首から下の全域が、これでもかと頑丈に、完璧な黄金比率の砂の山によってガッチリと埋め尽くされている。


 そして驚くべきことに、すぐ横で「しーっ、千鶴が起きちゃうよ」と悪戯っぽく唇に人差し指を当てながら、楽しそうにスコップを動かしているのは――他ならぬ、自分が守るべき対象であるはずの桐子であった。


 その隣では、1キロの遠泳から息一つ切らさずに戻ってきた柳が、バケツを両手に持ったまま、まるでピッチのセンターサークルを整備し終えた職人のような大真面目な顔をして佇んでいる。


 ……いや、それどころではない。

 2人がかりでペタペタと力強く叩いて固められている千鶴の胸のあたりには、本人の男前なキャラクターをあざ笑うかのように、やたら立派でドデカい『双子山』の砂の連峰がこんもりと形成されていた。


「お前ら……寝ている俺を物理的に固定するだけでなく、俺の胸の上にやたら立派な山脈ディフェンスラインを築き上げるな……!!! 早くここからパスカット(掘り出し)しろ、柳、桐子……!!!」


 顔を耳まで真っ赤に染め、身動きの取れない砂の山の中から怒号を飛ばす千鶴。


「ふふっ、八々花の守護神にふさわしい、見事なディフェンスラインが形成されているね。実に頼もしいよ」


 パラソルの奥から、椛のスマートでどこか意地悪な、しかし最上級に優雅で綺麗な笑い声が響き渡る。

 ピッチの上での千鶴の鉄壁の格好よさを誰よりも認めているからこそ、この砂まみれの無様な(可愛い)姿が可笑しくてたまらないのだ。


 エコモード期間中でありながら、久々に柳との無言の見事なコンビネーションを相棒の肉体の上で成功させた桐子は、「ふふ、千鶴が大人しくて、柳もアタシも大助かりだよ」と、スコップを抱えたままこの夏一番の最高の笑顔を咲かせるのだった。



 その後、恥ずかしさで砂山を豪快に爆発させて脱出した千鶴も合流し、足元の不安定な砂浜でのビーチサッカーがスタートした。


 あのゴールデンウィークの出会いから今日にいたるまで、蹴鞠保存会の泥臭い練習に何度も通い詰め、地道に体に叩き込んできたその成果。数ヶ月の時を経て積み重ねられた本物の技術は、この夏の砂浜の上で、完全に柳の血肉となって大開花していた。


 柳が白砂を豪快に舞い上げながら放った『シュバッッ!』とキレ味鋭いボレーシュートが、サファイアブルーの海を背景に、完璧な空中コントロールの軌道を描いていく。


 やがてサファイアブルーの海が、茜色から深い夜の藍色へと移り変わる頃──浜辺には、牡丹の手配した最高級の肉を焼く贅沢なBBQバーベキューの香ばしい匂いが広がり始めていた。


 夜のプライベートビーチの静寂に、みんなで火を付けた手持ち花火の優しい光がパチパチと静かにきらめく。


「はいチーズっしょ!」


 スマホを掲げたまつりのカメラの向こうで、夏の夜風に髪を揺らしながら、お腹いっぱいに極上の肉を堪能して楽しそうに笑う華やかな海チームの5人。


 ──なお、この段階で、昼の簡単な食事に続いてこれほどの最高級ステーキ肉(BBQ)を満喫している者たちの誰もが忘却の彼方に置いて行ったのは。


 ――そう。


 ただただ静かに波の音が響き渡る、そんな贅沢で眩しい夏の夜空の向こう──。

 午前十時の誰もいない駅前ロータリーで、大きな浮き輪を抱えたまま、魂の抜けた白目で大号泣していた不憫な相棒の叫び声だけが、虚しくエコーのように木霊こだましているかのようであった。


『うわあああああああああん!!!!! ウチのビービーキュー(肉)があぁぁぁッ!!!!!』


 だがその声も、海のさざ波の音に掻き消え、誰の耳にも届くはずもなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


次回予告――

 大寝坊をかまし、駅のロータリーに置いてきぼりをくらった猪目萩子。

 グループ全体NINEに恨み節を叩きつけた彼女に、救済の手が!?

 

次回、

【『私の家、菊堂神社の近くに、川があるのですが』】

どうぞお楽しみに!


――

「桐子によって埋められる千鶴w」

「それを手伝う柳w」

と思っていただけましたら、ぜひページ最下部にある【☆☆☆☆☆(星ボタン)】や【ブックマーク】で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

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