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「……ほわぁ!」

登場人物についての詳細は↓のとおりです。

https://ncode.syosetu.com/n7086km/58

 萩子の悲痛な叫びを吸い込んだ、あのどこまでも高く眩しい夏の青空。

 その同じ太陽の光を浴びて、どこまでもキラキラと深く澄み渡る、息を呑むほどに美しい海が広がっていた。


 観光客の喧騒など1ミリも届かない、静寂と気品に満ちた白砂の海岸。


 都会の喧騒から隔絶された、選び抜かれた者だけが立ち入ることを許された由緒正き海岸線の奥――そこは、蝶名林の家が丸ごと私有する、正真正銘のプライベートビーチであった。


 午前十一時。

 お抱え運転手の滑らかなブレーキングによって、誰もいない海岸線に佇む蝶名林家の私有別荘へと、最高級リムジンが静かに停車した。


 重重しいドアが静かに開いた瞬間、車内の心地よい冷気から一転して、夏の眩しい太陽の熱気と、どこか高貴で清涼な海の匂いが流れ込んでくる。


 まず真っ先に車外へと降り立ったのは、黒の長袖ラッシュガードを纏った千鶴であった。

 千鶴は眩しそうに少しだけ目を細めると、すぐさま振り返り、車内に残る絶対的エースへと躊躇いなくその右手をスマートに差し伸べた。


「おい桐子、車内と違って外はとても暑いから気を付けろ。ほら、手を貸せ」


「あはは、千鶴は相変わらず過保護だねぇ。アタシは大丈夫だよ」


 桐子は嬉しそうに目を細めて苦笑しながらも、差し出された千鶴の手を当然のようにしっかりと握り返し、優雅な足取りでリムジンから降り立った。


 そのまま相棒の手にエスコートされながら、目の前に広がるサファイアブルーの海岸線を優雅に見渡す。


「へぇ……。夏休みをこんなに綺麗な海で過ごせるなんて、本当に悪くないね」


 そんな2人のすぐ後ろから、大きな水着バッグを両手に抱えて最後に降りてきたのは柳だった。


「……ほわぁ……っ」


 車外へ出た瞬間、目の前にドカンとそびえ立つ大富豪の私有別荘と、観光客が1人もいない白砂の絶景を前にして、柳は短い感嘆の息を漏らしたまま、完全に絶句してその丸い目を驚きで極限まで大きくさせていた。


「うっわ、マジやばッ! 海、超サファイアブルーじゃん! これ加工ナシで一瞬でバズるやつっしょ!」


 少し遅れてリムジンから飛び出してきたまつりが、早くもスマホを掲げて大はしゃぎの声を上げる。

 そんなまつりのカメラのシャッター音を背に受けながら、最後に車外へと降り立った牡丹が、いつもの淑やかな微笑みのまま、優しく言葉を添えた。


「SNSに上げるときは、場所が特定できないようご注意くださいましね? ネットに上げてはいけない場所が分からないようでしたら、スタッフにも確認させますよ?」


 さらりと告げられた、本物のセレブ(特権階級)ならではの、ガチすぎるネットセキュリティの親切な忠告。


「うっ、あーし、危うく一瞬で位置情報ジオタグごと世界に晒すところだったっしょ……!」


 まつりがスマホを抱えてリアルに冷や汗を流す横で、車から降り立った面々は、それぞれの方法で極上リゾート空間に感嘆の息を漏らすのだった。



「それでは、皆さんのお部屋へご案内いたしますわ。荷物は、使用人が運びますので、そのままどうぞこちらへ」


 さらりと告げられた、荷物すら自分で持たなくていい富豪のおもてなし。

 牡丹が優雅な足取りでエントランスへと進むと、その圧倒的なスケールに驚きを隠せない面々が、おそるおそるその背中を追い始める。


「本当にすごいな。ここは本当に日本なのか?」


 ガラス張りの回廊から差し込むサファイアブルーのきらめきを見上げ、千鶴が腕を組んだまま、低い声音で感嘆を漏らした。


「ふふ、これならアタシの退屈な休養エコモードにも、贅沢すぎるくらいの特等席だね」


 千鶴の隣で、桐子がいつもの気怠げな、しかしどこか楽しそうな調子で長い髪を弄びながら、いたずらっぽく目を細める。


「一生かかっても、お目にかかれないね。いや、プロ選手になればあるいは、かな?」


 続くように歩を進める椛が、往年の宝塚トップスターのオーラを放ちながら爽やかに微笑み、サッカー選手としてのガチの野心を日常にサラリと覗かせる。


「……ほわぁ!」


 そのすぐ後ろで、天井の巨大なシャンデリアと、観光客が1人もいない白砂の絶景を交互に見つめながら、柳は語彙力を完全に失ったピュアな声を漏らして目を丸くしていた。


「やっば! あーし、もうセレブの仲間入り!? こんなん勘違いしちゃうっしょ!」


 最後に邸宅へ滑り込んだまつりが、至高のバズ空間に胸を躍らせ、スマホを握りしめて大はしゃぎの声を上げる。


 それぞれの方法で特権階級の極上リゾート空間に圧倒される一同を連れて、牡丹は更衣室の白い扉をそっと開いた。


「さあ、お着替えはこちらでどうぞ。ちょうどお昼時ですし、お部屋には皆さまがすぐにつまめるよう、簡単な食事サンドイッチなども用意させてありますわ。お貸しするP&Pの限定レースパレオも、こちらに用意させてありますので、どうぞお使いになってくださいね」


 そう言って微笑む牡丹の視線の先、更衣室の特等席には、海チームの人数分に加えて――もう一枚、綺麗に畳まれた幻の限定パレオがポツンと並べられていた。


 「せっかく萩子さんの分も用意しましたのに、とても残念ですわね……」と、言外にそんな寂しげなニュアンスを漂わせながら、お嬢様は淑やかに首を傾げる。


「ふふっ、あのバカは今ごろ駅前ロータリーで浮き輪抱えて泣いてるよ、きっと!」


 萩子の性格をよく知る椛が、楽しそうに肩を揺らして笑い声を上げた。


 その言葉にみんなで小さく苦笑しながら、華やかな少女たちは、まずは用意されたその簡単な食事で心地よくお腹を満たしていく。


 それから、めいめいの個性が詰まった自前の勝負水着を手にすると、期待に胸を膨らませて更衣室へと滑り込むのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


次回予告――

 牡丹のプライベートビーチ付き別荘にて、水着に着替える一行。

 ――それは、夏のバカンスと呼ぶに相応しい光景だった。

 

次回、

【「うっわ、マジ最高っしょ!! 何これ、全員ビジュ爆発しすぎてて、あーしのスマホのカメラロールが一瞬で潤うやつじゃん!!」】

どうぞお楽しみに!


――

「水着回きた!」

「千鶴埋められとるw」

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よろしくお願いいたします!

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