↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
36/102

「ちづちゃんのあの無自覚な守護獣っぷり、ヤバい……。」

「――ごめんくださいませ」


 牡丹は菊堂神社の社務所の玄関を開け、そっと中を覗き込んだ。


「神酒盃さん――菊鞠さんは、いらっしゃいますか?」


 高校生らしからぬ堂々とした社交性を見せる牡丹。


 その背中を、サッカー同好会のメンバーたちが少し離れた後ろから遠巻きに見つめている。


「あーし、こーゆートコ入るのぶっちゃけ初めてなんだケド」


「ちょ、蝶名林さん、躊躇ためらいなさすぎです……」


「だろー! ボッタンのこういうトコ、遠慮ねーよなって思うぜ!」


 口々に牡丹の振る舞いを褒めちぎる一同。

 ――褒め、る?


「人の車のミニバーを好き放題に漁っていた萩子さんには、言われたくありませんわね……」


 牡丹は振り返り、ジト目で萩子をキッと睨みつけた。


「――ごめんくださいませ」


 気を取り直すように小さく咳払いをして、改めて社務所の奥へと声をかける。


「はーい――!」


 パタパタパタ。


 廊下を軽快に駆けてくる足音が響いたかと思うと、すぱんとふすまが開き、菊鞠が姿を見せた。


「お待たせして申し訳ありません。――どうぞ、お上がりください」


 菊鞠は手際よく人数分のスリッパを玄関に並べ、奥の廊下へと一同を促す。


「お邪魔いたしますわね」


「お邪魔しまーす」


「ちーっす」


 菊鞠に案内され、一同は社務所の奥にある広々とした大広間へと足を踏み入れた。


 畳の香りが心地よく漂う部屋の中央。


 そこには、すっかり用意された布団の中で、鳳桐子が泥のように深く眠っていた。


 そのすぐ傍らには、頼れる守護神――松明千鶴が、付き添うようにドカッとあぐらをかいて座っている。


「――ん。みんな、おせーよ」


 千鶴がポニーテールを揺らし、低めの声で言った。


「起こさないように参拝を済ませてきましたのよ。鳳さんの様子はどうかしら?」


 牡丹が歩み寄り、布団の中の桐子の顔を覗き込む。


「ああ、完全に使い切ってやがる。息は穏やかだし、ただの寝不足だ。心配ねぇよ」


「そう……、なら良かったわ」


 安心したように胸をなでおろす牡丹。


 その周囲で、他のメンバーたちも「よかったー」と小さく息を吐いていた。


 ――だが。


 そんな穏やかなお留守番風景を前に、部屋の入り口付近で、完全に『限界』を迎えている一角があった。


(ひゃ、ひゃあぁぁぁぁぁ!!! ちょっと待って無理しんどい!!! 寝ているきりさんの枕元にずっと寄り添ってたの!? ちづさん、その距離感は何!? これもう実質、新婚の看病イベントじゃん!!!)


 幕之内桜は、長い前髪の奥で目を血走らせ、狂いそうなほどの脳内絶叫を上げていた。


 ピッチの底を支えるセンターバックとしての冷静さは完全に消え失せ、一般人擬態ステルスモードのブレーカーが焼き切れそうになっている。


 すると、その肩が、ポン、と叩かれた。


「サクラちゃん……、ウチの言った通りだったっしょ……?」


 隣に並んだ種村カスミが、咥えたチャッパチュプスをピコピコピコピコ!と凄まじい速度で上下させながら、蚊の鳴くような小声で囁いてくる。


「看病するスパダリ千鶴パイセン……。尊すぎて、大広間の天井突き破ってキマシタワーが建つんよ……。脳汁が、脳汁が止まらんのよ……!」


「た、種村さん声、声……っ! あう、でも、ちづさんのあの無自覚な守護獣っぷり、ヤバい……。絵面が神すぎて、網膜に永久保存したい……!」


 つい数分前、お賽銭箱の前でカスミの「左右カップリングブラフ」に引っかかり、無残にもオタバレしてしまった桜。

 しかし、秘密を共有した今の二人には、一切の遠慮がなかった。

 周囲の一般人メンバーにバレないよう、大福を前にした子リスのように小刻みに震えながら、水面下で熱い「同志の契り(アイコンタクト)」を交わし合う。


「あんたたち、そこで何をコソコソ震えていますの?」


 牡丹のジト目が、不審な動きを察知してピシャリと飛んできた。


「ひゃいっ!? な、なんでもありません!」


 桜は飛び上がるようにして直立不動の姿勢を取る。

 その完璧なパスカット(誤魔化し)を見て、カスミはフフンと鼻を鳴らした。


「さーて、それじゃあウチらの『新しい同好会』の書類、パパッと書いちゃうんよ!」

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


次回予告――

【「蝶名林さま! あーし、一生ついていくっしょ!」】


どうぞお楽しみに!


――

「菊鞠のおもてなし無双がもっと見たい!」

「サッカー同好会のドタバタが大好き!」

と思っていただけましたら、ぜひページ最下部にある【☆☆☆☆☆(星ボタン)】や【ブックマーク】で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!


よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。