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「ねぇねぇ、せっかくやき、一緒に苫小牧観光しようや!」

 ギラギラとした真夏の太陽が、北海道のどこまでも広大な大地を眩しく照らしつけていた。


 緑の絨毯が一面に広がる名門──北駒牧場。

 あの夜、宿舎のラウンジで熱い観光計画を練り上げていた桜とカスミの2人は、ついに、競馬の血統を肌で感じられる至高の聖地へと足を踏み入れていた。


「ふわぁっっ……! 見て見てカスミちゃん! 血統の概念が、概念が至る所から溢れ出てる……!」


 長い前髪を激しく揺らしながら、桜の脳内データ回路は早くも限界突破を迎えていた。広大な大自然と美しいサラブレッドたちの姿を前に、完全に一人で明後日の方向へと悶絶しかけている。


「サクラちゃん、落ち着くんよ。あんまり大声出すと、お馬さんがびっくりするんよ……」


 口元にチャッパチュプスを転がしながら、はしゃぐ桜の手を優しく引いて歩く天才スコアラー。

 データ分析の鋭さとは裏腹に、念願だった北の大地をどこか楽しげに満喫しにかかるカスミの足取りは、いつになく軽い。


──だが、その時だった。


 ある名馬の美しい馬体を誇る柵の前で、一際目立つ2人組の少女の姿が、桜たちの視界へと飛び込んできた。


 一人は、高級ブランドの私服を気高く着こなし、左右の美しい縦ロールを揺らしながらも、どこか不器用そうな眼差しで馬を見つめている少女。

 そしてもう一人は、柵に身を乗り出して「おーい! 元気しちゅうかーっ! うち、明日絶対に負けんでぇーっ!」と、長いポニーテールを元気に揺らしながら、無邪気な土佐弁で馬に向かって吠えている少女だった。


「うららさん、そんなに大声を上げては、お馬さまが驚いてしまってよ」


 左右の縦ロールを優雅に揺らしながら、高飛車なお嬢様口調で嗜めたのは金王美輪だった。呆れたようにため息をつきつつも、その眼差しには、うららの靴についた土汚れを気にするような不器用な優しさが滲んでいる。


「かまんかまん! 金王ちゃんこそ、明日うちが何回ぶち抜かれても、後ろで完璧なブロックをしてくれるき、うち信じて走るだけやき!」


 ポニーテールをはつらつと揺らし、春乃うららがニシシと肉食獣のような不敵な笑みを浮かべて美輪を振り返る。


 どれだけ絶体絶命のピンチに追い込まれようとも、最後方のお嬢様がゴールを死守し、最前線の不屈の星がすべてをひっくり返す。

 梅原監督の冷徹な予測理論の裏で、そのシステムを支えている最強の連動性──最高峰の信頼の連携を、桜とカスミは文字通り、この北駒牧場の風の中で目撃してしまったのだ。


「ひ、ひえぇぇっ……!!!(尊死)」


 ──だが、その時だった。


 カサリ、と。


 桜が尊さのあまり後ずさりした拍子に、牧場の乾いた草を踏み締めた、わずかな足音。

 その瞬間、世界の空気がピリッと一瞬にして張り詰めた。


 美輪とうららの2人が、それまで馬に向けていた穏やかな眼差しを完全に消し去り、風を切り裂くような鋭さでバッと同時にこちらを振り返った。


「──あら」


 金王美輪が気高く顎を引いて、その切れ長の瞳に冷徹な勝負師の光を宿す。


「ニシシ、見覚えのあるジャージやねぇ。……キミたち、明日の相手の『八々花女子』のメンバーかな?」


 ポニーテールをはつらつと揺らし、春乃うららが不敵な笑みを浮かべて一歩を踏み出してきた。

 つい先ほどまで馬に向かって無邪気な土佐弁を響かせていた少女の肉体から、ピッチ上に君臨する絶対的ストライカーとしての、逃げ場のない圧倒的な覇気が溢れ出す。


「ひっ……!」


 その梅原商業高校が誇る2大エースの凄まじいオーラを正面から浴び、桜の長い前髪が恐怖と緊張でガタガタと震え出す。

 完全自由行動ののどかな大自然の中で、まさか決勝進出を懸けた準決勝の前哨戦が、この北駒牧場の風の中で唐突に開幕してしまった──そう誰もが確信し、冷や汗を流した、まさにその刹那。


「ねぇねぇ、せっかくやき、一緒に苫小牧観光しようや!」


「……へ?」


 桜の前に静かに一歩出て身構えていたカスミの口から、完全に思考がフリーズした間抜けな声が漏れ出た。


 あまりにも予想外すぎる、屈託のない超絶フレンドリーなお誘い。

 ピッチ上の獰猛な肉食獣の如き気迫はどこへやら、ポニーテールをぶんぶんと嬉しそうに揺らすうららは、ただ純粋に「遠征先で見つけた同世代のサッカー仲間」との遭遇に目を輝かせる、天真爛漫な女子高生のそれへと一瞬で様変わりしていた。


「ちょっと、うららさん!? あなた何を言い出すの。明日わたくしたちが倒す対戦相手に対して、あまりにも危機管理能力が欠如していましてよ!?」


 背後から、左右の縦ロールを激しく揺らした金王美輪の、高飛車ながらもガチで焦り狂ったツッコミが牧場に響き渡る。

 お嬢様としての気高きプライドを完全に身内からへし折られた守護神の狼狽を他所に、うららはニシシと笑いながら、呆然と立ち尽くす桜とカスミとの距離を一気に詰めていく。


 最強の敵による、あまりにも清々しいフレンドリーな突撃。

 ミリ秒単位の予測を誇る梅原商業高校──その2大エースが放つ圧倒的なペースに、別の意味で完全に巻き込まれていく。

 八々花女子高校の貴重な休暇日は、ここから誰も予想し得なかった、最高に賑やかな北海道観光のドタバタ劇へと猛烈な勢いで舵を切っていくのだった──。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。


 さて。

 次なる相手は格闘ゲームチームのはずなのに、何故か某ウマな娘なゲームが混じっているようないないような気がするかもしれない、そう思われるかもしれません。


 安心してください!


 思いっきり、混ぜてます!


 「格闘ゲームなら、やはり初代格闘ヒロインの春麗だろ!」と思って作った「春乃うらら」。


 そこで、またもや作者の悪い癖が出てきました。

 「この娘、高知県出身にしちゃえ!」と。その瞬間に不屈の星の遺伝子が100%マージされました。


 そしてKOFのキングに相当する、ゴールマウスの守護神・金王美輪。

 ええ。金王(キング)美輪(ヘイロー)です。


 格ゲ界を代表する男装の麗人(キング)の脚技を持ちつつ、どれだけ泥をすすろうが気高く君臨し続ける一流のお嬢様のハイブリッド。そんな美輪お嬢様が、天真爛漫なうららさんに振り回されて「危機管理能力が欠如してよろしくてよ!?」とガチ焦りする、最高峰のGⅠ級てぇてぇ連携(コンボ)を北駒牧場で生目撃(?)していただきました。


 うららさんのまさかの土佐弁ナンパに、処理落ち(……へ?)したカスミちゃんたち。

 ここから始まる、誰も予想し得なかった敵味方入り乱れての苫小牧観光のドタバタ劇(あるいはその裏の梅原監督の影)も、どうぞお楽しみに!


「安心してくださいで大爆笑したw 確信犯すぎるww」

「金王(キング)美輪(ヘイロー)のネーミングセンス、天才のパズルなんよ……」

「うららさんの陽キャ爆弾最高! 次回の大混乱観光も全裸待機します!」


と思っていただけましたら、ぜひページ最下部にある【☆☆☆☆☆(星ボタン)】や【ブックマーク】をポチッと押して応援していただけると、梅原商業戦に向けた執筆への大きな大きな励みになります!

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