「者ども、初戦からちまちま守るのは辛気くさい!―― 今日はゴキゲンだ!」
登場人物についての詳細は↓のとおりです。
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――ピ、ピーッ!
キックオフのホイッスルが、初夏のピッチに高く響き渡った。
――その直後。
ブォォォーーーーーッ!!!
ブォォォーーーーーッ!!!
柘植駒高校の観客席から、サッカー場にはおよそ不釣り合いな、地鳴りのような重低音が鳴り響いた。
――ブブゼラならぬ、ガチの【法螺貝】の音である。
応援席に掲げられた陣幕のような応援旗と相まって、ピッチの空気は一瞬にして戦国時代の合戦場へと変貌した。
「者ども、初戦からちまちま守るのは辛気くさい!―― 今日はゴキゲンだ!」
法螺貝の戦鳴りを背に、王麗央の豪快な号令が飛ぶ。
その瞬間、柘植駒高校のイレブンは一糸乱れぬ動きでザザッとフォーメーションを変更していった。
地上のスペースを冷徹に、そして完璧に埋め尽くす――中央突破特化型陣形『ゴキゲン中飛車』!
「飛、存分にゴキゲンしてこいっ!」
「御意ッ! 轟飛、 敵陣 へ 斬り込み申すッ!! ――主君の命により、お命頂戴仕る!」
トップ下の位置から弾かれたように飛び出したのは、柘植駒の特攻隊長の《飛車》こと轟飛。
彼女は己の身体を一本の鋭利な槍と化して、八々花の中央守備陣を縦に叩き割るべく爆走を開始した。
――間髪入れず、麗央の暑苦しい咆哮が飛ぶ。
「甘いぞ八々花! 我が中飛車の『5筋』は容易く止まらん! 金華! 銀華! 飛の道の風通しをよくしてこいッ!」
その主君の号令に呼応し、ボランチを務める双子の《金将》将野金華と《銀将》将野銀華の二人が、一卵性双生児ならではの完璧な呼吸で爆速スプリントを開始。
轟の進路を遮ろうとした藤乃の前に立ちはだかり、力尽くでスクリーンして弾き飛ばす。
「歩希! ひふみ! ほのか! 史歩! 前を塞ぎ、逃げ場を無くして一網打尽にせよ!」
畳み掛けるように麗央の号令が飛ぶ。
その声に呼応し、ディフェンスラインを形成する4人の『歩兵』たちが、まるで巨大な防波堤そのものを前に押し出すかのような圧倒的な質量で一斉にラインを押し上げてきた。
《飛車》の突進という『槍の穂先』に引っ張られるように、《金将》、《銀将》、《歩兵》の重厚な城壁が、ミリ単位の狂いもなくピッチの中央をギチギチに埋め尽くしていく。 地上のすべてのパスコースと退路が、一瞬にして津波のような『駒』の圧力によって内側へと完璧に窒息させられていく。
「我が直線に遮るものなし! 疾風怒濤、 突破ーーーッ!!」
完璧に統率された軍勢の盾に守られ、完全に八々花のDF陣を置き去りにした轟翼が、トップスピードのまま右足を一閃。放たれたのは、文字通りの大砲のようなミドルシュートだった。
しかし、八々花の絶対守護神・松明千鶴は、そのシュートが放たれる未来位置を完全に予測し、正面で受け止めるべく完璧な位置どりを完了していた。
――ズドンッ!!
強烈な弾丸ライナーが千鶴の分厚いグローブに正面から吸い込まれ、凄まじい重低音がスタジアムに響く。
「千鶴パイセン、ナイスセーブなんよ!……だけど、相手も止まる気は1ミリも無いんよ!」
ベンチのカスミがノートPCを抱えたまま鋭く叫ぶ。
千鶴からボールが配給され、八々花が攻撃へと転じる、その攻守切り替えの瞬間――。
地区予選の勝利者、一文字学園すらも苦しめた、柘植駒高校の定石の一つが動き出す。
《飛車》による突入と共に前線を押し上げられた柘植駒のディフェンス陣――。
それがそのまま布石となり、ハーフウェイラインを侵略。八々花にポゼッションがあるにも関わらず、オフェンスを許さぬ圧力をかけていたのだ。
「さあ、詰めろの時間だ」
ゴールマウスの最奥から、麗央の冷徹な一言がスタジアムの盤面に宣告される。
すでにピッチの中央をギチギチに埋め尽くしていた《金将》《銀将》《歩兵》の重厚な城壁。それらが一斉に八々花のパス筋へと牙を剥き、逃げ場を無くすための即時包囲網へと一瞬で変貌した。
カウンターに打って出るつもりの八々花だったが、前を向くことすら許されない。
地上のすべての退路をパズルのように完璧に限定され、まるで退路をすべて絶たれた王将の如く、地上の盤面で完璧に 詰まらせられていくのだった。
(ふふっ――まさか、相手が自ら、私が望む陣形を組んでくれるなんて)
窒息するかのような盤面。
しかしそんな状況にあって、菊鞠は内心、ほくそ笑んだ。
「ひまちゃん!」
そんな菊鞠の心情を読んだか、桜から綺麗なロブパスが届けられる。
「ようっ!」
菊鞠はそのボールを、請い声と共に蹴り出した。
。
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そのボールは、《歩兵》4人の右足に当たると、まるでピンボールのように弾かれてバイタルエリアへと抜けていく。
完璧な規律でハメにいったはずの歩希、ひふみ、ほのか、史歩の4人は、自分たちの美しい陣形がそのままボールの反射板に利用されたことに、驚愕のあまり目を見張る。
そしてそのピンボールの如き激しいリフレクションの先。
地上の将棋盤をあざ笑うかのように、中空を鮮やかに渡ったボールの落下地点へ――まるで、遠見の好手に届けるように、相手の死角へ静かに『潜んでいた』選手。
『雲居の月』が、顔を出した。
八々花が誇る八番のライトサイドハーフ――薄 満月だ。
彼女が一歩も動かずとも、そのままダイレクトでボレーシュートを叩き込める、寸分の狂いもない至高のアシスト。
桜から菊鞠へのパス。
そして菊鞠から満月への、チェインバウンドを完全に計算し尽くしたピンボールパス。
それはまさに、花札をピッチ上に再現したかのような、完璧なる《花見》から《月見》への風雅なる役の連動。
「なっ!横歩取りぃッ!?――だが、そう簡単に詰ませはせんぞッ!」
ゴールマウスの奥で、王麗央の黒白の鬣が驚愕に跳ね上がる。
バイタルエリアの最奥で、あつらえ向きの最高のパスを目の前にした八々花のライトサイドハーフは、黙々と自分の仕事を敢行すべく、その右足を一閃する――。
放たれたのは、地上の重力を嘲笑うかのような鋭い縦回転を伴ったドライブシュート!
「ぬぅうぉおおおおおおッ!! !!」
麗央は大柄な体躯を爆発させ、地響きを立てるかのような猛々しい咆哮をあげた。
獅子の如き凄まじい反応速度で肉体を限界まで伸ばし、八々花の誇る最高の一撃の未来軌道へと、その巨大な両手を突き出す。
――ガキィィィンッ!!!
金属バットで殴りつけたかのような凄まじい衝撃音が響き、満月の放った一撃は、麗央の渾身の両拳パンチングによって辛うじてゴールラインの外へと弾き出された。
「フゥーッ!」と、黒白の鬣を激しく揺らしながら、暑苦しい息を吐く麗央。
それを見た満月は悔しそうに顔を歪める。
初手からお互いの最大出力の技が真っ向からぶつかり合った、夏のインターハイ予選の初陣。
その後、両者は互いに攻めて守ってを繰り返すが、決め手に欠ける千日手の様相を呈し、【0-0】のまま、前半終了となった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
初戦からいきなり冬の準優勝校・柘植駒高校との大激戦が開幕!
将棋をモチーフにした対戦相手だったので、サッカーの物語でありながら、将棋用語をふんだんに詰め込む、異例の回となりました。
が、予想外に違和感なさすぎて、逆に笑えてきましたね。
意外とサッカーと将棋、親和性あるんでしょうか?(暴論)
あと、柘植駒高校のチームメイトの名前を考えるのが割と楽しい回でした。
他の八々花にしろ一文字にしろ神園にしろ、余った分をどう扱うかで迷っていたのに、柘植駒高校は足りない!
なので、「歩」を4枚揃えてみました!。
他にも角行や桂馬、香車など、次回に出せるといいんですけどね。
「桜・菊鞠・薄満月のパスワークが美しすぎた!」
「将棋の戦術をサッカーに落とし込む柘植駒、強敵だけどオ○オ先輩がやっぱり愛おしいw」
「千日手をここからどうひっくり返すのか、後半が気になりすぎる!」
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★【重要:第1回キャラクター人気投票・本日締め切り!】★
第100話から開催しておりました人気投票ですが、★この第105話の更新(コメント欄)をもちまして、完全に締め切り★とさせていただきます!
見事【1位】に輝いたキャラクターには、第123話あたりで、そのキャラが最高に輝く『単独主役センター回』の執筆を完全確約いたします!
あなたの推しの一票が、物語の未来を決めます。
最後の滑り込み投票、コメント欄にて熱くお待ちしております!
次回第106話、千日手の盤面を打ち破る、八々花イレブンの戦術は!?




