「すげぇ、見た目もオレオだ!」
登場人物についての詳細は↓のとおりです。
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インターハイに向けて、特別顧問の天堂任見からの猛特訓によって体力をすべて絞りつくされ、すっかりしおしおになった八々花イレブン。
少しだけ広くなった新しい部室の中は、現在、完全に死屍累々の様相を呈していた。
床に転がる2年生レギュラー陣に加え、入部したばかりで一番体力のない新入生の萩原赤音と菖蒲田青衣の二人は、未だかつてないシゴキの破壊力に真っ先に白目を剥いて文字通り全滅している。
むしろこの地獄絵図の中で唯一まともに生き残っているのは、直接しごかれたわけではないマネージャー組(カスミ、まつり、春日井恋々)の三人くらいなものだった。
恋々にいたっては、あまりの先輩たちの変わり果てた姿に恐怖でガタガタと震えている。
そんな部室に、インターハイ予選の抽選会に行っていた、キャプテンの鹿戸椛が、しごかれたわけでもないのに、力なげにトボトボと帰還した。
その顔は別の意味で完全にヘロヘロで、真っ白に燃え尽きている。
「……ごめん。ボクの右手、やっぱり呪われてるかも……」
椛はガタガタと震える手で、組み合わせの紙を差し出した。
「どしたん?話聞こか?」
ヘロヘロになっているイレブンの代わりに、比較的元気な種村カスミが反応する。
「ああ、カスミくん、聞いてくれよ、実は――」
若干涙目になりながらカスミに話しかける鹿戸椛。
だが、それよりも速く――。
「悪いけど、寸劇を見てるほどお人好しではないの。寄越しなさい」
「あっ」
特別顧問の天堂が、椛の手から抽選結果が書かれた紙を奪い取った。
「へぇ、面白いじゃない」
天堂任見はそこに書かれた内容を見ると、不敵な笑みを浮かべる。
その視線の先にある書類を、横からカスミがノートPCを抱えたまま覗き込んだ。
「なぁなぁサクラちゃん。やっぱり鹿戸パイセンの右手、幻想殺しなんよ」
「カスミちゃん、不吉な例えはやめて……って、えええっ!? 1回戦の相手……『柘植駒高校』!? ――そげぶっ!」
桜の絶叫が部室の天井を突き抜けた。
あまりの衝撃に、自分の脳内のオタク回路が勝手に「その不運をぶち殺す」と叫んでしまっていた。
ぶち殺されるどころか、こっちの心臓が止まるレベルの大凶クジである。
「つ、柘植駒って……冬の選手権予選で一文字学園と決勝を争った、あの準優勝校!? 」
菊鞠が床を這いつくばりながら組み合わせのトーナメント表を覗き込み、ポカンと口を開ける。
「「「また初戦からラスボス級引いてるーーー!!!」」」
「さすが椛先輩ッス! 冬の選手権に続き、初手から最強クラスの敵をブチ抜くなんて、持ってるッスね!アッシ、シビれたッス!憧れたッス。ガフッ……」
床に倒れていた新入生の萩原赤音が、一瞬だけ大型犬のように吠えて、そのまま再び気絶する。
「ちょっと萩原さん大丈夫ですか!? それにしても、初戦から準優勝校だなんて……」
菖蒲田青衣は、入部したてにしていきなりの試練に、ガタガタと震えるばかり。
そんな新入生たちも交えて大パニックを起こしているイレブンを、天堂任見は冷徹な一瞥で射抜く。
「あら。この程度の相手を倒せないようでは、神園学園はおろか、一文字学園に勝つことすら無理よ。これは試金石。チャンスだと思いなさい」
「ひっ……!」
天堂の放った静かな、しかし絶対的なプレッシャーの言葉に、部室の空気が一瞬でビシッと張り詰める。
一文字、そして神園。
その高すぎる頂を思い出し、メンバーたちの目に闘志の火が灯り直した。
「……ま、任見先生の言う通りなんよ。一文字の一軍(麻雀)にリベンジする前に、その一文字とガチで殴り合ってた将棋盤(柘植駒)をひっくり返すのは、ウチらにとっても最高の腕試しになるんよ♪」
カスミがノートPCの画面をパチンと叩く。そこにはすでに、柘植駒高校の『王』を中心とした、堅牢なる将棋陣形のデータが映し出されていた。
「相手のキャプテンは、ゴール前にそびえ立つ絶対守護神――『王 麗央』」
「……オレ○?」
案の定、萩子が脳直で呟いた。
「おいおいカスミ。こいつ、試合中に牛乳に浸したら美味しくなるタイプか?」
「お菓子じゃないんよ。 獅子の如き熱さを秘めた、県内屈指の超実力派GKなんよ」
カスミのツッコミを背に、キャプテンの椛は、髪をかき上げてふっと笑う。
「地上の将棋盤がどれだけ硬くても関係ないよ。ボクたちが目指すのは、女子高等サッカーの頂点。そのための序章は、彼女たちに奏でてもらうとしよう」
「……ご自身のくじ運の悪さを誤魔化して、いい感じにまとめようとしましたわね」
牡丹がジト目で椛を睨む――が、ふっと口元を緩め、彼女もまた不敵に笑った。
「ですが、天堂特務監督の仰るとおり。柘植駒高校を倒せないようでは、わたくし達は一文字学園には届かないのですからね。ええ。リベンジの前菜として、この上ない相手ですわね」
◇
――そうして迎えた、インターハイ予選の当日。
五月晴れの初夏の空気の下、全国高等学校総合体育大会予選の会場であるスタジアムのピッチ裏。
出陣を控えた八々花女子高校イレブンの前に、女性としてはかなり大柄な体躯をした少女が仁王立ちしていた。
彼女こそが、柘植駒高校女子サッカー部の部長にしてキャプテン、王 麗央だ。
名前に違わず、百獣の王の鬣のような猛々しい黒い髪。だが、その真ん中には、不自然に白いメッシュがスッと一本走っている。
「すげぇ、見た目もオ○オだ!」
興奮する猪目萩子。涎を拭け。
「はっはっは! そうだ。あまりに皆が私のことを○レオ、オレ○と言うのでな。どうせなら見た目もそれっぽくしてしまおう、と思い至ったわけだ。どうだ? 似合うか?」
ガハハと豪快に笑いながら、自慢の白黒メッシュを親指で指し示す麗央。その一切の邪気のない100%の善意と生真面目さに、桜は一瞬だけ天を仰いだ。
(乗っかっちゃうんだ!? あだ名に対して、そんなに全力でコミットしちゃうタイプの人なんだ!?)
「って、感心してる場合じゃありません! 萩子さんも涎を垂らして食べようとしないでください!」
「ちぇー。でもよサクラ、あいつマジで良い奴そうじゃん。お菓子買ってやりたくなるな。やっぱ、ナ○スコなんかな?ジュビ□?」
「だからお菓子じゃありませんし、その話題を擦るのはやめましょう!色々と大人の事情で怒られちゃいますから!!」
そんな八々花のいつものコントを、麗央はフッと真剣な眼差しに変えて見据えた。
大柄な体躯から放たれる圧倒的な威圧感――「王将」のオーラが、一瞬にして周囲の空気をピリリと引き締める。
「ふざけ合うのはここまでだ、八々花女子高校サッカー部。冬の選手権予選……君たちが一文字学園を相手に繰り広げた泥臭くも熱い激闘、この王麗央、しっかりと網膜に焼き付けている。……だが!」
麗央は一歩前へ踏み出すと、地響きが立ちそうなほどの気迫で言い放った。
「インターハイ初出場の君たちに、この予選の『先』へ進む資格があるかどうか――我が柘植駒の完璧なる必勝の定跡』をもって、ここで直々に試させてもらうッ! 我がゴールマウス、一歩たりとも通さぬと知れぃッ!!」
黒白の鬣を揺らして吠える絶対守護神。
その熱い宣戦布告に、菊鞠の瞳にも静かな、しかし確固たる闘志の炎が灯る。
いよいよ、運命のホイッスルが鳴り響こうとしていた――!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
103話でお留守だったキャプテンの椛さん、届け出どころか、呪われた右手でとんでもない大凶クジを引き当てて戻ってきました(笑)。
桜のオタク反射神経によるツッコミ(そげぶっ!?)も炸裂しつつ、ついに夏のインターハイ予選が開幕です!
八々花女子=花札、一文字学園=麻雀、神園学園=トランプと来たので、他のテーブルゲームは……と考えて、白羽の矢が立ったのは「将棋」。
そして、キャプテンの名前を考えていて、「王」は当然入れるにしても、名前は……と思い至ったのが百獣の王であるライオン(レオ)で、そこから麗央の名前を引っ張ってきたのですが。
作者の悪い癖が出ました!
オレオになっちゃいました!!
最初はそのあだ名にキレるタイプか?と考えたのですが、王たる者、その程度のイジりも楽しむ度量にすると、かえってかっこいいよな、と・
そして会場で遭遇した、自らあだ名にコミットして髪型を寄せてきた柘植駒高校の王麗央キャプテン。
リアルな版権とJリーグの歴史を色々と怒られないかハラハラしつつ弄ってみました。
ジュビロ磐田の元サポーターなんで許してくださいなんでもしますから!(なんでもするとは言っていない)
真面目で暑苦しい彼女が敷く『必勝の定跡』に対し、ひまり達の空中蹴鞠サッカーはどう挑むのか……!?
「イマジンブレイカーwそして桜、もう隠れオタク設定やめろw」
「オ○オ先輩、早くも愛されキャラの波動がするw」
「次からの試合が楽しみすぎる!」
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★【第1回キャラクター人気投票・いよいよ次話で締め切り!】★
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1位に輝いたキャラの【第123話あたりでの単独主役センター回】をかけた熱い一票を、まだまだお待ちしております!
次回第105話、スタジアムに響き渡る『あの音』と共に、いよいよインターハイ予選1回戦がキックオフ!お見逃しなく!




