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「変えない意志と変わる色」  作者: 揺木 わかな (ゆらき わかな)
1節

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12/17

「彩録館に残された記録」


伊織は部屋の布団の中にいるとき、街彩花の彩録館の中に置いてある、挿絵録について思い返した。


そのとき、刻の連なりから作品へと成り得た逸話(いつわ)記譚(きたん)想綴録そうてつろくについて思考していた。


その内容は、古来より伝わる、ふるめかしい語り記録、演出されていた。


ーーーーーー


「はなのゆくすえ」


はなは、ある森にいた。

いかな理由によりここにいるのか、はなは記憶にない。

しかし、それについて思考するということも、はなはしない。

ひたすら前へ前へと進む。


あるとき、そこにいた『はな』は、余波の気配に気を取られていた。


さやさやと木の葉のこすれる音、チチチと鳴く鳥の声。感知して受け取れる感覚に、足は軽くなる。


さらに森の奥へ奥へと歩き進める。

そのとき。かさかさ、と、音は鳴る。そちらの方へ、ふいに目を向けた。


サラサラの毛並み、つんと誇り高い鼻、折りたたまれた耳、しなやかな脚。なにより目についたのは、そのほそい目。


はな「きつね……」


そのきつねから伝わる意志は、こちらの頭へと浸透してくる。


きつね「きみは、〝言の葉の森〟に捕らえられたまよいのこかな?」


きつねの言う意味はわからない。

たいした説明もないまま、きつねは話し進める。


きつね「この森から帰りたいなら、方法はひとつ。それは」


きつねの口端は笑みに浮く。

きつね「おもしろい言の葉に依るのさ」


きつねの笑みは、ますます悪たれたものになる。


空はかすかな色合いに縁とられ、闇というのに適う色になる。月明かりに照らされている。


きつね「はなはそろそろこの森から抜けたいと思う。それなら、美しい言の葉をつくるといい」


はなは、己の背丈を超える大木に向かい、思いついた言の葉を話す。


はな「『月とはな、満ちりて朔の放つ夜』」


きつね『月とはな、満ちりて朔の放つ夜』ときたか。そうかい、そうかい。いやあ。お見それしたよ」


きつねは少しさみしそうな顔つきになる。


きつね「ああ。はな、たのしいよ。お礼にこの森から帰してやろう。よく聞いておくれよ」


そして、このような言の葉を口にした。


きつね「このはにはなはとらえられることもなし(木の葉に花は捉えられることもなし)



ーーーーーー


そのような説話の内容は、眠れないくらい思考回路の中を旋回していた。楽しいひとときについて、思い返せたこと、嬉しくなれた。

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