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-虚蝉-  作者: 微睡みの白
Via vitae ~過去の影を踏みしめながら 未来の光を探す旅路 真理はその途中でふと現れる 風のように~
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斯くしもがも 14

引っ越しのせいなのか、お陰なのか、

ともあれ改めて私は3年生の春に小学校デビューの機会を得た。

ただまあ当時生きることで精一杯な私は、もはやこの学校で仲良くできようが出来なかろうがどうでも良かった。

とりあえず理不尽な暴力にさらされる時間を減らすために、

理不尽な暴力の理由を少しでも減らすために学校へ行っているようなものだった。

端から見たら逃避にも見えるだろうが、これは私が生きる中で出来る防御でもあった。

男の手の届かない社会の枠組みに身を置くこと。

他人の目がより多い場所。

男の行動がより不利に見える人々の中。

要するにより日当たりの、風当たりのいい場所に身を置くことで私は生き長らえる知恵とも言うべき結果だった。

生死の係わらない時間がある学校はある意味、安らぎの時間でもあった。


以前の小学校はさほど大きくなく、一学年2クラスほどだったが引っ越した先の小学校は一学年5クラスのそこそこ大きい小学校だった。

1学年の人数が多ければ多少紛れるかと思ったが転校して1週間ほどで顔を腫らして登校したらやはりドン引かれた。

それからは以前と同じ様に私の周りには空間が出来るようになったが、3年生ともなってくればそれなりに誰もが自我が確立し個人を主張してくるようになる。

中には顔の腫れた私をからかって来るような奴も居たが、

『何を考えてコイツはこんな事してくるんだろう?』

と不思議に思い、ソイツの目をじっと見ていたら、少し怯えた顔して何処かへ逃げていった。

それからは私の知る限りあまりからかわれることもイジメられることもなかった。

ただそれなりに皆と私との間には壁はあった。

私から話しかけることも、話しかけられることもなかったので、学校生活自体は穏やかなものだった。私はこれ幸いとひたすら読書に励んだ。

時間があれば図書室へ行き本を借り、図書室でも教室でもジャンルを問わず図書室の本を端から読んでいった。


夏も終わり、秋になり始めた頃だっただろうか?

私とクラスメイトとのこの壁にすこしだけ変化があった。

ある日、クラスメイトの一人が相変わらず読書をしている私の前に立って口を開く。

「なあ、どうしてそんなに点を取れるんだ?いつもノートとってないだろ?」

他人を気にしてなかった私にいきなり声を掛けられて驚く。

「え?あ?ん???」

周りを見るがどうやら私に声を掛けてるようだ。

「今日返ってきたテスト、どれも平均以上だろ?どうしてそんな良い点をいじできるんだ?とくに今回のテストむずかしかっただろ?」

ああ、そういえばテストが帰ってきてたな?とぼんやりと思い出し、べつに特別なことはしてないと答える。

強いて言えば、どこがわかるのかわからないかの細分化をして明確にしていくって作業を繰り返すだけだと答えるが首をかしげられた。

話を聞くと私が転校してくるまでクラスでは上位にその子は居たらしい。

もちろんもっと頭が良く、成績の良い子も居たようだが、みんな塾に通っていたり、必死に勉強してたりとわかりやすく優等生揃いだったようであまり負けても納得はいってたらしい。

そして自分は勉強が出来ると自負し自信を持ってたようだ。

ただ私が転校してきてからは特に勉強もせず、たまに顔を腫らして学校に来て、ロクにノートも取らず、本ばっか読んでる不気味な存在なのになぜかテストの点が負けることが多いことがとてもくやしかったようだ 。

どうにか勝とうと必死に勉強したのに勝てないという事実にこれまでの自信が砕かれたらしい。

それでどんな勉強をしてるのかどうしても気になり恥を忍んで私に声を掛けたらしい。

初めから私の事をカンニングだとか疑って掛からず、プライドもあるだろうにそれでも聞きに来た名前も知らないソイツのその姿に私は感心すら覚えた。

少しだけ他人に興味が湧き、

「ちょっとテスト持ってこいよ」

と声をかけ、テスト用紙を持ってこさせ間違った箇所の答案を見る。

私の場合、何事にも「なぜそうなるのか、なぜその答えになるのか」を理解出来ないと頭に入らない(たち)で、公式を暗記しろとかマニュアルを覚えろとかそういう暗記系が大の苦手だった。

今回私に声を掛けたソイツも同じ様な質で

『これはこことここがこうなるからこの答えが導き出される』

と一旦問題をバラして順序立てて教えてやると、すんなり入ったのか

『お前すげーな!めっちゃ分かったわ』

とすごく喜んでいた。

そうして15分ほどの勉強会にも似た時間は過ぎていった。

ソイツからはなんかすごく感謝されたが、別に私は特別なことをしたつもりはなかった。

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