斯くしもがも 13
今まで私が産まれてから住んでいた場所は男の持ち家だったようだ。
今回引っ越すに当たり、家中の掃除をした。
どうやらこの家を賃貸物件にするようだった。
そのまま私達は3月の終わりにいそいそと引っ越しをした。
次の新しい家は賃貸の一軒家だった。
継母が教員なこともあり、また数年で引っ越すかもしれないからという理由で賃貸を借りたらしい。
新しい家には、庭があり池があり、ちょっとした家庭菜園ができそうな畑があり、砂利の駐車場があり、主屋と以前の持ち主が書道教室に使っていた畳の敷いた小屋があった。
中に上がると畳の部屋が4つ。
男と継母の寝室、私と姉の寝室、服やタンスを置く部屋、応接間。
あとは居間と台所、フローリングの二部屋のひとつは男の部屋ともう一つは私と姉の勉強部屋と継母のピアノ置き場になった。
離れの小屋は畳を板を張り直して砂袋やサンドバック、ミットなんかを運び込み、男と私と姉の格闘道場の様なことになった。
これまで普段の生活空間でやってたものが生活空間から切り離され別の空間で行われるという事実に嫌な予感しかしなかった。
本来ならばきっとワクワクするような新生活が錆色に変わる瞬間だった。
引っ越してからも男は相変わらずで家に居たり居なかったり、仕事もなにをしているのか分からず、むしろ外で仕事をそもそもしていたのかわからない生活を送り、家にいる時は、言ったことが出来てないだの生意気だだのテスト点数が悪いだの勉強の仕方が悪いだのなにかと理由を付けて私を殴っていた。
継母は引っ越してから新しい学校では受け持つ人数が増えたのか仕事の量が増え、帰りも遅くなり夜の9時や10時に帰って来ることも少なくなかった。
また妊娠もしてるので段々とお腹も大きくなり、あまり激しい運動はせず身体に負担を掛けないようにしていた。
それによりどんな事が起こるかというと、当然男の私への当たりは強くなった。
学校からの帰りが遅いと言われては殴られ、
空手の稽古と称しては竹刀でボコボコされて、
勉強の効率が悪いと言われては物が飛んでくるという毎日だった。
最初は身を挺して庇ってた継母も仕事が忙しくて目が届かなくなり、段々と身重になってくる自分の身体を優先して私が虐待されていてもそっと目を逸らし、別の部屋に行くようになった。
そうしてつかの間の平穏は終わりを告げる。
元に戻ったというよりは余計に酷くなった。
皮肉なことに私の身体は歳を重ねるごとに頑丈になり男も私を素手で殴るのがきつくなってきたのだろう。
段々と木の棒や竹刀、木刀、まな板となにかと物を使うようになってきた。
それでも私は少しでも器官や内臓がやられないようひたすら丸くなり耐えていたので
頭はコブだらけ、腕や足は内出血だらけで何時も生きていた。
べつに継母に裏切られたとか、男への恨みとかはその当時心になかった。
姉も居たが、正直印象にない。私と違い、多分うまく人生を立ち回っていたのだろう。
この頃ひたすら私が思っていたのは一つだけ。
「死なないように」
それだけだった。




