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-虚蝉-  作者: 微睡みの白
Via vitae ~過去の影を踏みしめながら 未来の光を探す旅路 真理はその途中でふと現れる 風のように~
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斯くしもがも 9



以前書いたように私の家の家系はそれなりに資産があった。


それを持っていたabuelo が亡くなったことで家系纏めての大騒動になった。


abuelo の遺言書も有ったそうだがその遺言書には


『死んだあとのことなど知らん。好きに分けろ。』


ホントかどうかは知らないが要約するとそんな事が書かれていたらしい。


abuelo らしいといえばらしいが…。


そうなるともう親戚という親戚が黙ってなかった。自分も親戚だと名乗る顔も見たこと無い人々もいた。


また何処からか聞きつけてきたのか、「資産運用どうですか」とか「いい話が…。」とかなにかと甘言を吐く輩、欲望の亡霊達もいっぱい来た。


あれほど表面上は仲良くしていた親戚同士が、本家、分家係わらずabuelo の通夜の時から牽制し始めてギスギスしていた。


『abuelo がまだ居るのに何してんだろうこいつらは』と紺鉄のような冷めた心で見ていた。


それからはだれかと顔を合わせると、やれ屋敷がどうだ、土地がどうだ、あの事業がどうだ、会社がどうだ、何親等がどうだと、とにかく遺産の話。もはやそれ以外の会話はしてないくらいずっとその話ばかり。


ときには怒鳴り合ったり、胸ぐらを掴み合ったり、殴り合ったり、とにかくそこまで感情を人前でむき出しに出来るものかと驚いた。


ちなみに爺ちゃん婆ちゃんは


「別に要らん。弁護士先生に任せる。」


と言ってさっさと身を引いて平和に過ごしている。


会合だったり親戚付き合いだったり電話だったり、何かあるたびに男を含め毎日どこかで争いが絶えなかった。


ほんとうになにをそんなに躍起になっているのか分からなかった。その当時は「遺産」というものがどういうものでどのくらいの規模なのかなんて知らなかったが、少なくとも私は、その「遺産」というものはabuelo のモノだったものというのはわかった。


自分で築き上げたものでもないものでどうしてそこまで争うのか、それほどの価値なのか私には分からなかった。


もちろん私は分家筋のさらに曾孫でもともと分配になんの関係も権利もないので蚊帳の外からその様子を冷静に見れたのは良かった。


そんな笑えるほど醜い争いが2-3ヶ月も続いた頃だろうか。


この争いと関係あるかないかは別として、私も顔も知らない親戚の誰かが死んだ。


結局死因は自殺だと言っていたが、本当のことは私にはわからない。


その後段々と争いも下火になっていき、気がつけば私の知らぬ所で決着が着いたようだった。


いったいabuelo はこの一連の光景の何を見せたかったのだろうか?


いったい何を学び取ってほしかったのだろうか?


今でもそうふと思い返す時がある。


ひとつ、私がこの事で学んだのは


『人の本質は醜い』


ということだった。



ただ今でもこの件について一つだけ心残りがある。


あの日abuelo が少年のような笑顔で私に見せびらかしていたELGINの懐中時計。


あれはいったいどこに行ったのだろうか?


願わくばabuelo の手元かabuelo を大切に思って大事にしてくれている人の手元に有りますように。


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