斯くしもがも 6
結局小学生デビューを失敗した私は、友達らしい友達も出来ずに一人教室で過ごすことになる。
なにかの授業で二人ペアになって、とか数名のグループになってと言われても真っ先にあぶれるアレである。
そうなると適当に足りない組に入れてもらうか、教員とペアということが多かった。
私の鉛のように重い鈍感な心は『別にどうでもいい』と諦めていた。
そういうのも爺ちゃんや婆ちゃんは見抜いていたのか、ある日
「学校行き始めてどうだ?」
と爺ちゃんが聞いてきた。
「んー、楽しいともなんとも言えない。」
「友達はできんか?」
「男のせいでよく顔とか腫らして学校行くから、気味悪がられて友達なんて出来ないよ。でも、学校行けばご飯もあるし、家に居なくていいからちゃんと学校は行ってるよ。」
そう諦め気味に言っていたらそれを聞いてた婆ちゃんが、
「端白、ここきて座りなさい。」
と言ってくる。こういう時の婆ちゃんはとても大事な事を伝える時だということは知ってたので、婆ちゃんの前に座り、姿勢を正す。
「端白、よく聞きなさい。
あなたがいま、こうなっているのはだれかのせいかもしれない、もしくはあなたのせいかもしれない、どちらも原因なのかもしれない。それはわかりません。
しかし、ここから立ち上がらないのはあなただけのせいです。誰のせいでもなくあなた自身の問題です。だれも助けられないのですよ。あなたのことはアナタ自身で責任を持ちなさい。」
私の手を握りながら厳しく、同時に優しい声で婆ちゃんはそう諭す。
『これまでの理由はどうあれ立ち上がらないのは自分のせい』その教えは深く私に刻み込まれる。
爺ちゃんは言う。
「人間、じぶんの理解が及ばないものはだれもが怖いものでちかづきたくないもんだ。ましてや毎日のように何処か怪我してくる奴なんか意味わからんからな。
だから私は端白に無理に友達作れとか皆と仲良くしろとは言わん。
ただ、学校行けるうちに勉強して学力だけは付けておけ。勉強が出来ればそれだけでも周りの見る目は変わる。
学力というのは一番カンタンに手に入る力の一つで周りからの評価も簡単にひっくり返せる魔法の力だ。だから使える力は身につけておけ。」
そうして私は『学力』というものを考え始める。
とりあえず安直に学校の成績を上げるのがいいかと考え、私は授業も真面目に取り組むようになる。
しかし思ったよりも成績は芳しくない。
一年生の二学期の終わりにあまり成績の良くない通知表を見せながら爺ちゃんに相談する。
「なぜ成績が伸びないのか、それはお前自身がどこがわかってないか理解してないからだ。
どこでつまいづいて、どこの理解が足りなくて、どこならわかっているのか、それをじぶんで把握してないから成績があがらない事になっている。
まずは最初からひとつひとつ確実に理解している事を積み上げていくのだ。もし壁に当たったら、その壁がどんな形をしていて、どのくらいの高さでどれくらいの厚さで素材はなにで出来ているのかを見ろ。まずは全体像がわからんと手のつけようが無いからな。
そして登るのか、穴を空けるのか、埋めるのか、回るのか、下を掘るのか、崩すのか、どんな攻略が出来るかを考えろ。
問題を細かく切り分けて細分化してまずは出来ることから潰していくんだ。そうすれば出来ない本質にたどり着ける。あとはその本質とじっくり向き合えばいい。
お前もまだ幼い、いつかなにか目指したいものも出てくるだろう。その時にきっとこう思うだろう。
『こうなりたいけど、なにをしたらいいんだろう?』
もしそう思う日が来たら、まず、自分のなかであれしたらいいのかな?これしたらいいのかな?と疑問を持て。そして思いついたものは全部やれ。
無駄にはなるかもしれんが損にはならん。
ずっと頭を動かせ、思考を止めるな。」
という人生の命題とも思われる難しい答えをもらう。この命題は今でも私の頭を悩ませる。
そうして答えになったようななってないような回答をもらい、改めて私は勉強をやり直す、わかることわからないこと。
わからないことあれば職員室へ聞きに行き、理解出来ないことあれば図書館で調べる、そういう学校生活を送り始めた。
出来ることをひとつひとつ積み上げていく、それはまるで積み木のようだった。
少しづつ知識を重ねる様は高い塔を作らんとするため練り込む水のようだった。




