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-虚蝉-  作者: 微睡みの白
Saltat in limine anima ~魂は狭間で踊る~
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境界のまなざし 3

3人の生活が始まって2,3ヶ月も経った頃だろうか?

いつも通り一人で登園して、一人で暇を持て余し、一人で帰るという工程を繰り返す日常に石を投げ込む子供が居た。

私が5歳頃だったので同じく、5歳の男の子だ。

いつも通り部屋で一人で積み木をしているとソイツはやってきて、積み上げた積み木を蹴り壊して笑顔で言う。

「お前、かーちゃんいないんだってな?やーい片親ー。お前が悪い子だからかーちゃんに捨てられたんだろー。ステゴだステゴー」

恐らくソイツは自分が言ってる意味を半分も理解せず言ってるのだろう。

大方、園か家庭かどこかで親か誰かが私のことを話してたのをソイツは聞いてたのだろう。その周りが言っていることをそのまま私にぶつけたのだろう。

そう思いながらその笑顔見てたら、ソイツの家庭ごと壊してやりたくなった。

なにがそうさせたのかわからないまま気がついたらソイツの顔を殴ってた。

しかし殴ったは殴ったのだが、如何せん私はこれまでにちゃんとしたご飯を食べてこなかった()()()()()()()()

ソイツにダメージを与えるには背丈も、力も、筋力も、重さも何もかも足りなかった。

もちろんその後は馬乗りにされてボコボコにやられた。

結局、私が鼻血を出し、腕を噛まれて少し血を流したところで若い女性が止めに入り、人生初の喧嘩は黒星におわった。

まあそこから大変なのは園の職員達。私とソイツを別々の部屋に連れていき、私を手当する人以外はバタバタと走り去っていった。

手当をするおばちゃんは私の鼻血を拭きながら聞く。

「なんで喧嘩になったの?」

「私を馬鹿にしたから。」

「馬鹿にされたら喧嘩していいの?」

「なんでだめなの?」

「お友だちなんだからまずは話し合わないと。」

私は友達でもなければ名前も知らないわ、誰だよ。と心の中で悪態を付きながら、

「でも話が通じなかったら?」

「それでもちゃんと向き合って話さないと、手を出すのは良くないよ?」

おばちゃんからそれはもう道徳のお手本の様な答えが返ってきた。

話が終わらないのでわかったような顔をしながら頷いておくが、全く反省はしていない。悪いとも思っていない。むしろ私は私の意思を殴るという行動で示せて満足していた。


園で怪我をするような喧嘩するとどうなるか、当然双方の親に連絡が行く。

つまり私の場合、男の方に喧嘩したのがバレる。

電話で男と連絡を取り合った職員が平謝りしてたけど男は

「血が止まって普通にしてるならそのまま帰らせろ」

と言ったらしいが、なんとか職員が食い下がって迎えに来るように言っていた。


結局男は19時頃、車で私を迎えに来た。

しばらく外で、男に職員が今日の喧嘩の経緯を話している。しばらくすると私の方に来て

「おい、帰るぞ」

それだけ言って車の方に歩き出す。

私も急いでそれについていき、男は運転席に、私は助手席に乗る。

私はシートベルトを閉めるが男はシートベルトもせずに車を動かす。

走り出す車、ホープの匂いが強くする車内、吸い殻が山盛りの灰皿、なにか流れているラジオ。

不意に男が口を開く。

「なにした。」

私はボソボソと言う。

「バカにされたから…殴った。」

「それで?」

「ボコボコにやられて血が出た。」

男はため息をつき、しばし沈黙する。

・・・。

突然、眼の前が白くなる右からの衝撃と共に私は左サイドの窓ガラスに頭をぶつける。

なにが起こったのかわからないままいると、

「喧嘩に負けるとは何事だ!!!」

運転しながら男が怒鳴り散らす。

「どうせお前の事だからなにも出来なかったのだろ!噛みつきの一つぐらいしてこんか!ヘタレが!」

更に殴ってくる。せっかく止まった鼻血がまた流れ出す。

右から男に殴られる衝撃を感じつつ手と白い服が鼻血であかく染まるのを見て、「運転しながら殴るとか器用だな…男の怒る所そこかよ…。」とまるで他人事のように思いながら殴られていた。



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