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-虚蝉-  作者: 微睡みの白
Saltat in limine anima ~魂は狭間で踊る~
18/41

境界のまなざし 4 ~男の過去~



少し男の話をしよう。


どこまで本当でどこから嘘かは私にはわからないので、()()()()()()だが。



男はとある名家の一人っ子、長男として育つ。


めちゃくちゃ親、親戚中から可愛がられて育つがあまりに構われるのを嫌いグレた。


とりあえずそこら辺の強そうなヤツに片っ端から噛みつき殴り合いをしていると不思議と勝てた。


それからは毎日毎日身体を鍛えつつ喧嘩三昧。男の親も少しは心を学んで欲しいと空手を習わせたが余計に格闘技狂いに拍車がかかり毎日だれかと喧嘩して帰って来るから男の親も頭を抱えてたようだ。


しかし何故か頭も良かったようで、喧嘩ばかりしてた割には入試にも落ちずそこそこの高校に行け、上位の成績を維持して特待生を勝ち取り、良い大学も卒業出来た。


そこの大学教授からも「お前、教授になれ」と言われるレベルだった。


結局大学には残らず定職にもつかず、毎日繁華街で酒を飲み、喧嘩をし、女の子を侍らして暮らしてた。飲み代は喧嘩と賭けで賄っていた。


繁華街に出入りしてるととやはり出てくるのは反社。


ある日いつも通り飲んでいると因縁つけられボコボコにしたら事務所に連れて行かれる。そこでも暴れたらなぜか「上」に気に入られ、何かと仕事が回ってくるようになる。主に賭博場や夜のお店の用心棒として。


25歳くらいでそれなりの金額が溜まったから用心棒を引退してデカいトラックを買って長距離運転手を始める。


1年も経たずに事故を起こしてその際、左足にパイプが刺さり治療したが予後不良で腐りだしたため、左足を根本から切断。以後義足生活になる。


義足生活のときのリハビリ病院でしりあったのが世話をしてた看護師の女でいったい男の何処に惚れたのかわからないが後に結婚、姉と私が生まれた。


男本人とその周りの人からの話をまとめるとこんな感じになる。その話を聞いて初めて女の職業を知った。


ちなみに男はより大きな権力を手に入れたいと思い、女と離婚する少し前から司法書士になろうとしていた。しかし結果は筆記試験を2回ほど落ちていた。


暴力だけでは勝てない何かがあったのか、それとも足を無くして暴力を使えなくなったので新たな権力を求めたのか、私は恐らく後者であろうと思う。


男の話はひどく映画的で誇張ぶいていたが、少なくともその暴力的な力だけは本物だった。


あまりこの話を聞いた幼い当時はあまり信じてなかったが、もう少し大きくなったときに男と男の地元のよく暴れた繁華街へ行く機会があった。


そこへ行くと、誰もが男を知っていて頭を下げていた。あの時は世話になった、助かった、と男に感謝を述べる。果たしてあれは感謝だったのか、緊張だったのか…私にはわからなかった。


なにもかにもが気に入らず、大嫌いな男であったが、その繁華街で大の大人達からリスペクトされる男の背中は少しだけカッコよかった。そう思う私の心を認めたくない嫌悪感が襲う。



基本的に男は腕っぷしで人生を生きてきた為、私が喧嘩に負けたのが許せなかったのだろう。


園で喧嘩してきて以来、私と姉はなにかと格闘技を男から強制されるようになる。


私もいい迷惑だが、姉にとってもいい迷惑だったであろう。


同時に私達への男の暴力のハードルが下がった瞬間でもあった。


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