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あなたは一体、何者なの?

〝ハルちゃん!!〟

〝何の声!?!?〟

〝救助が間に合ったの!?〟

〝でも救助部隊はまだ30分ほどかかるはず〟

〝カメラが地面しか映してなくて何も見えない……〟

〝ハルちゃん大丈夫!?〟


「だ……れ……」


 目の前に突然見たことない人が現れた。しかもその人はあの推定S級モンスターのドラゴンの攻撃を片手で受け止めてる……


――――ありえない


 私は腐ってもA級探索者だ。年は21とまだ若いが、それでもS級に一番近いと言われているほどに実力はある。

 

 そんな私が立ち向かうことはおろか、逃げることすら出来ない相手の一撃を《《片手で止めた》》……?


 両腕、そして全身を使い、その上『魔力のアルマドゥーラ』を全身に纏って、ならまだわかる。


 それを魔力の波動すらなく、さらに片手だけで止めたというの……?嘘だ、そんなことがありえるの?しかも見たところ防具はつけていないように思える。まるで休日の学生みたいなラフな服装……理解が追いつかない。


 と、そんな突然のありえない状況に呆けていると……


「……ッ!?」


 攻撃を軽々と受け止められて怒ったのか、ドラゴンが今のは序の口だと言わんばかりにしっぽを振り上げて、更なる攻撃のモーションに入る。

 

 が、目の前の男の人は依然とこちらを向いて、私のことをじっと見たまま動かない。


 気づいてないのか?


 それか、見えないバリアのようなものを張っているのか?いや、それはないだろう。彼が魔力を使った痕跡は一切感じられない。

 

 冷静に考えると、さっきは獲物にトドメを刺すための一撃だ。瀕死な獲物に全力を出す馬鹿はいない。

 そう考えれば先ほどのガードはまだ考えることはできる……が、この攻撃はおそらく別物だ。魔力の波動が先ほどと違い過ぎる。


 もしかしてこの人……魔力を感じることが出来ない……?


 いや、今はそんなことを長考している暇はない、早くこの人に伝えないと……

 

 このままでは私もろともぺしゃんこになってしまう、そう感じた私はボロボロになった体を奮わせ、残った力を振り絞ってその一言を叫ぶ。


「うしろッ!」


 が、そんな私の不安は杞憂であったと知ることになる。


「わかってます。それと、少し冷えますごめんなさい――――『雹閃ひょうせん』」


 そのしっぽが振り下ろされる瞬間、それは起こった。


 男の人はドラゴンに向き直り、そしてもう片方の手の先を向け、その言葉を放った。


 刹那、洞窟の一面が一瞬にして青白く染まった。


「……へ?……なにが……おき、て……」

「無理しないでください、えーとどこに」

「なに、を……」


 目の前の3m級のドラゴンが、そして洞窟の床、壁、天井の全てが氷と化した。

 吐く息は一瞬にして白くなり、ドラゴンの炎の熱によって灼熱になっていた気温は一気に南極のように冷える。

 きっとダンジョン適正のない一般人なら今の寒暖差で体調を崩すだろう。


 そんな一撃を、今のを……この人が……?

 

 たった一瞬、そのドラゴンに向かって指先を向けてその言葉を放っただけで……この威力……?


――――化け物だ


 かつてあった競技、陸上で人間がスタートから30mまでの区間を100%の速さで走ることが出来ないように、魔力をゼロから最大にするには必ずラグが生じる。

 

 それがこの人には一切なかった。

 気づいた時には魔力が膨れ上がり、そして気づいた時にはそれがまたゼロになっていた。


 一体何者なの?

 

 そして、そんな状況だというのに目の前の男はまるで日常の一コマみたいなテンションでカバンを漁っている。


 確実にS級……いや、もしかしたらSS級かもしれない。だが、この人を探索者ランキングで見たことがない。細身、170cmほどの身長なら曲者ぞろいのランキングで逆に印象に残るはずである。


 本当にこの人は、何者なの……?


 その意味不明な状況に理解が追いつかず、頭の上にはてなを浮かべている私に男の人はある一瓶の液体を渡してきた。


「あ、あったあった……はい、これ飲んでください」

「これ、は……?」

「これはポーションと呼ばれているものです、これを飲めばある程度体が良くなります」

「……あ、ありがとう、ござい……ます」


 そうして私はそのポーションをありがたく受け取る……が、その色を見た瞬間、私は飲むのを躊躇った。


 ポーション――ダンジョン内でモンスターを倒したことによるドロップ報酬や宝箱の開封によって手に入るアイテム。それを飲むことである時は魔力が回復したり、またある時は体の傷が癒えたりする代物。

 ポーションの存在によって世界の医学に革新が起きたほどである。


 だが、そんなポーションには微々たる効果しか現れない。

 

 確かに上級ポーションとなれば骨折くらいは回復する、だが、私のケガは無理だ、完全にキャパオーバーである。

 自分の身体のことは自分が一番よくわかっている。私のケガはポーションなんかじゃ治らない。骨はおろか、内臓が何か所も逝ってる。


 それこそ国の大病院で手術を受けなければならないほどのケガだろう。だが、そんなボロボロの状態でここ渋谷ダンジョン下層80階から大病院へ着くまでに急いだとしても2時間はかかる。

 

 そしてこのポーションは色からして中級ポーションである。これでは延命にもならない……


 だからこそ、


「自分のことは……自分が一番、わかってます、だから、そのポーションは、うぐっ!?――――」

「いいから飲んでください、きっと治ります」


 いくら中級ポーションと言っても10万円はする。それをこれから死ぬとわかっている人間に使うのは悪いと感じた私は断ろうとしたのだが、その言葉は無理やり口にその液体を流し込まれることで遮られてしまった。


「いきなり何をする……んで……す……へ?」

 

 刹那、


「う、そ……!?」


 先ほどの痛みが嘘だったかのように体が軽い。打撃を防いだことにより骨がボロボロになり、使い物にならなくなった腕が嘘みたいに動く。


「……全快してる……!?」

「よかったですっ!」


 その言葉が聞こえた私はその人に向き直る。

 

 推定S級のドラゴンをあんな一瞬で倒し、しかも無理だと思っていた私をたった一瓶のポーションのような液体だけで全回復させたその人に――――


「あなたは一体、何者なんですか」

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