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ハルの決意

 ひまわりちゃんに助けられてから1日経った。ひまわりちゃんはあの後配信で必死に桜花の城や私の噂が嘘であると訴えかけてくれた。

 

 だが、結果は無意味だった。


 みんな……ごめん……っ


 SNSを閉じた私は、誰もいない薄暗い部屋の中で一人事務所の皆に謝る。

 私たちのことを信じてくれる人は少数であるが存在する。けど、それでも現在批判の声が大きい。


 悪いのは全部私だ。

 2日前、私があの時イレギュラーのドラゴンを倒せていたら……魔力の歪みに気づいていち早く退く判断が出来ていたら……

 

 葛林《くずばやし》に嵌められた。


 おそらく前から私たち……いや、私の事務所を潰す為の材料を蓄えていたのだろう。私を自分の物にするという欲望の為だけに……


 私のせいで事務所の仲間や私を拾ってくれた代表、それだけじゃなく、私たちを信じてくれているファンの方々にも迷惑をかけてしまった。


 今ではテレビをつけるとどこも私たちの事務所の根も葉もないうわさをでっち上げた報道をしている。


 さらには事務所のみんなの配信にまで荒らしが行ってしまっている。そのせいで体調を崩したのか事務所の仲間のひまわりちゃんとももちゃんとの連絡が取れない状況になってしまった。

 このままでは桜花の城が崩壊してしまう。みんなに救われた恩を仇で返すことになってしまう……

 だから、この件にケリをつけるには――……



♢♢♢



 白鷺さんに助けてもらった日。

 救助に来てくれたもみじさん達と一緒に新宿ダンジョンから脱出した後、ダンジョンのすぐそばにある協会支部へ諸々の報告しに来た時、私だけ支部長室に呼び出された。

 その時はただ謎のポーションの男について少し聞かれるだけだと、そう思っていた。


 だが――



「あなた自分が言っていることが分かっているの!?」


 そのあまりにおかしな発言に思わず思いっきり支部長室の机叩いてしまった。そしてそんな驚く私を見て葛林は気味の悪い笑顔を浮かべる。

 

 葛林茂雄《くずばやししげお》――協会本部長である葛林銅鑼《くずばやしどら》の息子であり、親の力のおかげで支部長まで上り詰めた男。B級探索者で、また背は高く見た目も爽やかであるということから女性人気が高い。だが、それとは反対に裏で違法な武器や素材の取引をしているという黒い噂もある男。

 

 私は昔から、探索者になった時からこの男が嫌いだった。

 普段から私のことを舐めまわすように見てくる視線が、自分の力ではないのにも関わらず上の立場で良い気になっているこの男が気に食わなかったのだ。


「どうやら聞こえなかったようだな。だが俺は優しいからな、もう一度だけ言うぞ?その男の顔、名前、住んでいる場所を教えるんだ。顔と名前は知っているんだろう?それならば探索者の登録名簿に情報があるはずだからな」

「……知ってどうするつもりなの?」

「決まってる。その男を捕らえてインチキポーションの生成方法を教えさせた後残りのポーションを奪い、そして口封じのために殺す。いくらS級と言っても俺の新鋭部隊の前で抵抗なんてできないだろうからな。瀕死の状態から生き返れるなんて一つ売るだけで大量の金が手に入る。そうすれば琥春《こはる》、君にも分け前は大いに与えてやろう。それこそ一生を遊んで暮らせるくらいにはな?」


 どういうこと……?いくら今までも気持ちの悪い男だったとはいえここまで外道なことを口走るような男ではなかったはず……


「どうだ?悪い条件ではないだろう?」

 

 それにおそらく私が葛林白鷺さんの情報を教えたとしても葛林とその新鋭部隊はなすすべなく撃退される。

 だって白鷺さんのバックにいるあの白猫さんの存在と、その異常なまでの強さを知っているのは私だけなのだから……

 

 だからこそここで私が彼の情報を渡したとしても白鷺さんはケガ一つなく追い返すことができるだろう。ただ、問題はその後だ。

 そんなことになってしまったら世間に白鷺さんの存在が嫌でもバレてしまう。そうなればいずれ日本だけでなく世界中が白鷺さんと白猫さんを巡って争いが起きる。

 

 白猫さんは根本そうなることが嫌で私に言ったのだ。

『公にしないでくれると助かる』と……


 だから、


「……嫌です」

「あ?」

「嫌です。あの人の情報は一切渡しません。話はそれだけですか?それでは失礼します」


 そう答えを残して私は葛林に背を向け、支部長室の扉のドアをとった。

 その時、


「待て!」


 もう話すことは無いと思い、この部屋から退出しようとしたが、葛林に引き留められた。

 まだ何かあるのか?と思ったが、あんな交渉をしてくる男だ。どうせ大したことないだろう。


「……いいのか?」

「何がですか?」

「後悔することになるぞ?」

「そんなことはしません。私は私の利益の為だけに恩人を売るようなクズではないので」


 もう限界だ。こんなクズと話していると頭に血が上って今にも切りかかりそうになる。


「ふ、ふふふ……そうか、考える時間が足りなかったよな。俺は優しいから答えは2日だけ待ってやる。2日後の夜19時、新宿ダンジョン60階で待つ。その時にお前が男の情報を渡せば、それかもし本当に渡したくないのであればお前は俺の女になれ!そうすればもう一度考えてやる!そうでなければきっと後悔するからな……」

 

 最後まで葛林は何か言っていたが、その発言を右から左に聞き流して私はその部屋を出たのだった。

 

 そして


 そして、



♢♢♢



「――行くしかない……か」


 そうして私はいつものように装備に着替え、薄暗い中約束の場所であるダンジョンへと向かうことにする。

クズの書き方わかんねぇ……

前回の話もそうだけどこういう暗い回は書きなれてないからわかりにくかったらごめんね(´;ω;`)

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