向井葵
「ハルちゃん、大丈夫?」
「うん、来てくれてありがとうねひまわりちゃん」
「気にしないで!私たちは同期なんだからさ!同期がこんなに落ち込んでたらそりゃ飛んできちゃうよ」
そう言って笑顔を見せてくれたひまわりちゃんは私にガッツポーズして安心させようとしてくれる。
「うん……ありがとう」
あのイレギュラーから1日経った。
そのたった1日で、私たちの評価は酷く変わってしまった。
新宿のダンジョン協会公式SNSから私のランクは詐称であり、そしてイレギュラーの件も自作自演であると発表された。さらにそれだけではなく、テレビのまでもが私の事務所のありもしない悪事を公表している始末である。
そのせいで今では日本の国民の大半が私たちを非難し、マスコミも事務所に押し寄せている。幸い私たちの住んでいる家はバレていないが、それがバレるのも時間の問題だ。
そんなどうしようも出来ない中、ひまわりちゃんは私のことを心配して家まで来てくれた。料理も洗濯も何もする気が起きなかった私にご飯を作ってくれて、家の家事もしてくれた。
ひまわりちゃん――向井葵ちゃんは私と同期のダンジョン配信者。栗色の髪のボブカットの元気な女の子。背は150cmと小さいながらも身の丈以上の大剣を使って戦うそのギャップと、どんな時でも見せる太陽のような笑顔に人々は魅了されて今では登録者50万人と多くのファンを手に入れている。
だけど、今はそんな彼女の優しさが逆に棘となって私の心を刺してくる……そんなひまわりちゃんに無理をさせてしまう私に腹が立つ……
そんなひまわりちゃんに今は目も合わせることが出来ない。
「…………」
そんな気まずさを紛らわすために私はスマホを取り出し、疑いが少しでも晴れていないかとかすかな希望をもってSNSを見る。
だが、
〝有名になるために自作自演に加えてランク詐称までやるとか……必死過ぎるのが気持ち悪いし、ファンに失礼だと思わないのか?〟
〝S級A級どころかB級かどうかも怪しいだろw〟
〝今までは努力で実力を身に着けた人達だと思ってたのに、がっかりです〟
〝さっき桜花の城のももの配信荒らして来たわw〟
私だけじゃなく、被害は仲間の皆にも及んでいる。私のせいで後輩のももちゃんやみんなは配信を続けることができなくなってしまったし、今では外も歩けない状況になってしまっている。
私のせいで、私のせいで……
ひまわりちゃんは、ううん……ほかの仲間も皆優しいから私を責めることは一度もなかった。それどころかみんな私が気に病んでいないか心配してくれている。
つらいのは私だけじゃないはずなのに、みんな自分のことを後回しにして私の心配をしてくれる。
ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……っ。
「あれ……」
そして気づけば
どうして?なんで、なんで私の目から涙が流れているの?あれ、おかしいな……拭っても拭っても止まらない……
泣きたいのは巻き添えを食らったひまわりちゃんのほうだろうに、今一番私が弱いところを見せちゃいけないのに……
「ハルちゃん……」
「ちがっ、これはちがうの、ごめ――」
「大丈夫、大丈夫だからね……っ」
「ッ……!」
無意識にもあふれ出る涙は止めようとしても止まる気配は一向になく、私にはその涙を誤魔化すことしかできなかった。だから私は謝ろうとしたのだが、その瞬間私はひまわりちゃんに抱きしめられた。
「私が明日配信してハルちゃんの疑惑を頑張って晴らすからね!」
そういって私に見せるひまわりちゃんの笑顔はいつものような太陽のような笑顔ではなく、どこか苦しそうな……そんな無理して作られたような笑顔だった。
彼女は私に心配させないように、少しでも元気になってほしくて最大限の笑顔を私に向けてくれた。
そうしてひまわりちゃんは私から離れ、玄関へと向かう。
――無理しないで。私がなんとか頑張ってみるからひまわりちゃんは隠れてて。……ごめんね。
そんな言葉たちが私の頭の中を無数に駆け巡る。ひまわりちゃんはこんな状況で配信をして少しでも真実をしってもらおうと行動しようとしてくれている。
……本当は私がやらなきゃいけないのに、私はここでひまわりちゃんを止めなきゃいけないのに……
そうして私は彼女の方へと手を伸ばし、
「あ……っ」
だが、その手が彼女に追いつくことはなかった。
無理だ……私にはひまわりちゃんを止める資格なんてない、ないんだ……だから……
だから、
「うん、ありがとう……」
私には遠くなっていく彼女の背中に向かってそう返事することしかできなかったのだ。
暗い……ということで
――ちょっとした番外編――
イッヌ「なぁにそのおじいちゃんみたいなしゃべりかたは~?」
ヌッコ「たわけめ!この話し方はあたし――ワシの尊敬する猫の大先輩の話し方じゃ!」
イッヌ「ふ~ん、前の方がかわいかったのに……残念」
ヌッコ「ふんっ!」
イッヌ「それにその猫ちゃんの大先輩って黒猫ちゃんなんでしょ~?きみは白猫じゃないか~」
ヌッコ「か、かんけいないもん!そんなのあたしが能力つかっちゃえば!……あっ、コホン……というかそっちこそなんじゃそのおっとりした喋り方は」
イッヌ「ん~?えへへ~これはね~?リザお姉ちゃんの喋り方を真似したんだ~!そうすれば大人っぽく聞こえるでしょ~?もうウチは子供じゃないんだからね~!」
ヌッコ「たわけ!話し方が変わろうとおぬしはまだ青いままじゃ」
イッヌ「むぅ、きみもまだまだ子供なんだからねっ!」
イッヌ・ヌッコ「「ふんっだ!!」」




