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今後の予定は無しにして下さい(連載版)  作者: 徒然草


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5.婚約者の事情

 ラリーとの話が終わったと思いきや、ウィラードと話す事になった回です。


「リ、リンカ!」


「っ、ウィラード?」


 ホワイト男爵家から帰る為に馬車に乗ろうとしたリンカをウィラードが呼び止めた。


「…また待ち伏せていたのですか?」


「そんな言い方しなくても良いじゃないか!? その、リンカとラリーがどんな話をしたのか気になってしまって…。」


「…。」


 そういえば昨日、ウィラードとの話が途中で終わってしまっていた事をリンカは思い出した。

 

「ウィラード、今時間はありますか?」


 それにリンカもウィラードとラリーがどんな話をしたのか。何故ラリーを優先する事をやめようと決めたのか。そして、リンカに()()()()()()と言ってきた事の意味を知りたかったので、ウィラードと話をする事にした。

 


◇◆◇



 馬車はホワイト男爵家から離れ、邪魔にならない場所に停めた。


「まず、昨日ウィラードが私に赦して欲しいと言ってきた事について質問させて下さい。あれは、どういう意味ですか?」


 移動中、リンカとウィラードは一言も話さなかった。別にリンカがウィラードに話しかけるなと言った訳でも雰囲気を出した訳でもない。けれど何となく、馬車が停まるまで話をする雰囲気ではないとリンカだけでなく、ウィラードも感じていたのだろう。


「どういうって…リンカが仕組んだんだろう!? 惚けないでくれ!」


「…はい?」


 リンカの質問に対して、ウィラードはリンカを睨みつけてきた。リンカは理由が分からずに眉を顰めてウィラードを見返した。


「あ…っ、その、すまない。悪いのは僕だって分かってるよ。は、反省してるさ。」


 リンカの様子に何を思ったのか、すぐにウィラードは気不味そうな顔をして謝罪した。


「…ちゃんと説明をしてくれませんか?」


 リンカが改めて質問をすると、ウィラードは気不味そうな顔のまま口を開いた。


「…リンカに今後の予定を無しにしろと言われたあの日、僕は周りからどんな風に思われているのかな、って気になったんだ。」


「…。」


 ウィラードは今まで周囲からの評価を気にしていなかったらしい。ウィラードの評価は“婚約者よりも幼馴染を優先する令息”という、事実をそのまま言葉にしただけのモノだ。


 婚約者を優先しないなんて問題がある。本当は幼馴染のラリー・ホワイト男爵令嬢の事が好きなのではないか。婚約者である子爵令嬢よりも幼馴染とはいえ、男爵令嬢を優先するなんて何を考えているのか。といったお世辞にも良いとは言えない噂となっている。


「リンカは、こうなる事を狙っていたんじゃないのか? 僕の評判を悪くする事で僕に嫌がらせを…婚約解消をしようと考えたんじゃないのか?」


 リンカとウィラードは家同士の政略結婚の為に婚約者となった。家同士の利益の為なら、本人達の意思は関係ない。けれど醜聞や悪評のある家と繋がりを持てば不利益になる。婚約者にそういった問題があるならば婚約解消や婚約破棄をするのも珍しくはない。


 そして、これはリンカがウィラードとの結婚は絶対に嫌だと思ったら使おうとしていた手段でもあった。


「私がウィラードの悪評を広めていると思ったから、私が怒っていると思ったのですね?」

 

「実際にそうなんだろう!? 今後の予定を無しにすればそれでいいと君は言ったが、赦せなかったんだろう?」


 ウィラードは声を張り上げる。リンカに怒るというよりは、自分の状況を何とかしたいという必死さが込められていた。


「…前にも言いましたが、私はただウィラードが体調を崩したホワイト男爵令嬢の元へ行った、としか周りに言っておりません。これは悪口ではなくて単なる事実でしょう?」


 リンカは冷静に言葉を返す。リンカはウィラードの事を悪く言った事なんてない。幼馴染が心配なのだから仕方がないと、リンカなりにウィラードを配慮したつもりだ。それ以外の言葉を口にした事は、周りどころか家族にもない。


「ですので、これはウィラードの行動が周りにとって悪い評価を付けられるモノであったというだけです。違いますか?」


「そ、それは…。」


 リンカの主張を反論する事が出来ない様子で、ウィラードは勢いをなくしてしまった。


「それより、私は今までウィラードが周りの評価を気にしていなかった事に驚きましたよ。自分の評判を承知の上でホワイト男爵令嬢を優先していると思っておりました…貴方は何れシアン子爵家を継ぐのですよね?」


「うぅっ…。」 

 

 リンカは呆れを隠せずにウィラードを見ると、ウィラードは気不味そうに情けない声を出した。自身の行いは自分だけでなくて家の評価にも繋がる。その事を理解していないのか、それとも忘れていたのか…尊重するしない以前にウィラードという人間が伴侶となり、子爵となる未来に不安を感じてしまった。


「……。」


「いいですかウィラード。私はもう貴方に怒ってなんていませんし、赦さなければならない事も無いのです。」


「…あぁ、そうだね。」


 黙り込んでしまったウィラードに、確認するようにリンカが言うとウィラードは頷いた。これで、ウィラードがリンカに赦して欲しいと言った件については解決だ。


「では次に、ホワイト男爵令嬢の話を聞きたいのですが…私を優先しようと思ったのは貴方の評判が下がるのを止めて、改善しようとしたからですよね?」


 今までの話でウィラードの思惑を想像出来たリンカは指摘する。ウィラードがこのままリンカと逢わず、ラリーを優先すればウィラードの評判は悪いままだ。さらにリンカが今後、“ウィラードとはそもそも約束していない”と周囲に事実を話せば婚約者として問題しかないと思われるのは間違いなかった。

  

 リンカの父であるノアール子爵には、当然この事をリンカは話していた。けれどノアール子爵は微妙な顔をしながらもリンカが我慢している訳ではないと分かったからか、何も言わなかった。ノアール子爵家としては()()()()の事なら婚約解消を決行するつもりはないのだ。ここでリンカがウィラードとはもう結婚したくないと言えば、ノアール子爵も考えたかも知れないが…。


「そ、それはっ…確かにそうだけど、でも、それだけじゃない!」


 ウィラードは真剣な眼差しでリンカを見た。


「僕はリンカに愛されたい。婚約者として、何れ夫婦になる者として心から結ばれたいんだよ!」


「…は?」


 思いもよらなかったウィラードの言葉に、リンカはポカンッと口を小さく開けて間抜けな声を出してしまった。

 

「愛はなくていいとか、尊重し合うとか、そういう関係じゃなくて、ちゃんと夫婦になりたいんだよっ!」


「……。」


 いや、無理です。


 リンカはすぐにそう言いたくなったが口を噤んだ。ウィラードの今までの態度と人柄から好きになれる要素がリンカにはなかった。でも今正直に言っても良い言葉とは思えず、何も言う事が出来なかった。


「……。」


「……。」


「…あと、ラリーの事なんだけど。」


 ウィラードは何も言わないリンカに返事を急かす事はしなかった。自分に非がある事は理解している様子だ。もしくはリンカに拒否されるのを恐れたのかもしれない。そして、ラリーの名前を出した。


「これからは婚約者のリンカとの約束を優先したいから、リンカと約束のある日は体調を崩しても我慢して欲しいとお願いしたんだ。そうしたら、嫌だとごねられてね。」


 ラリーと話した時の事を思い出しながら話しているのか、ウィラードは渋い顔をした。


「“絶対に嫌だ、私を優先して”と言ってくるだけだった。僕の事情を話したのに、自分の主張ばかりでさ…僕はこれまでラリーを心配して、ラリーの事を優先してきたのに、ラリーは僕の事を考えてくれないんだなと分かってしまって…ラリーを心配する気持ちが小さくなってしまったんだよ。」


 何処か疲れた様子で話すウィラードに、リンカは自分の想像が当たっていた事が分かった。ラリーはウィラードを尊重しなかった、だからウィラードはラリーと距離を置きたいと思っているのだろう。


「…そういう訳だから、今後は絶対にリンカとの約束を守るよ。信じてくれないか?」


 リンカにはウィラードが嘘を言っているようには思えない。ラリーを優先しないのならば、リンカには断る理由がなかった。


「…分かりました。そういう事でしたらまた婚約者として予定を立てましょう。」


「っ!」


 リンカが了承するとウィラードは笑みを浮かべた。


「ですが、ホワイト男爵令嬢とはちゃんと話をして下さい。彼女はウィラードが私を優先する事に納得していない様子でした。私がウィラードを赦せば、また自分を優先してくれると思っていたようです。」


「っ、そんな事をリンカに言ったのか…迷惑をかけてごめん。でもラリーの言う事は気にしなくていいから。」


 ウィラードはラリーと話し合うつもりがないのか苦笑いをして気にするなと言ってきた。ラリーの様子を知っているリンカとしても、ラリーを説得する事を諦めたくなる気持ちが分からなくもなかった。


「これはお二人の、幼馴染の問題です。私は今後巻き込まれたくありません。」


 だがリンカはもうラリーと関わりたくなかった。


「もしウィラードの事でホワイト男爵令嬢が私に絡んで来ようとしたら、絶対に止めて下さいね。」


「わ、分かったよ。」


 ウィラードは苦笑いしたまま頷いた。リンカはウィラードを信用できないが、言質は取れたので良しとする事にした。

 

「それと、ウィラードが私との予定をまたドタキャンするような事があれば今度こそ婚約解消を考えますので…分かってますよね?」


「っ、も、勿論だ! 俺はもうラリーを優先しない!!」


 リンカからの圧に押された様子を見せつつもウィラードは頷いた。こうしてリンカはウィラードとの予定を再び立てる事に了承したであった…。



 ウィラードと再び婚約者として予定を立てる事にしたリンカですが果たしてどうなるのでしょうか…。ウィラードは今後挽回出来るのでしょうか 笑 というお話でした。

 最後まで読んで下さり有難うございました! もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
あたおか幼馴染みが憑いてくるし、今後何かやらかしそうな男とは家の事情が何とかなるなら手を切りたい所だなー
さっさと別れて付き合いを断絶するが一番の正解だと思う 話が通じないし・・・ 婚約者もその幼馴染も自分のことしか考えてないお子様
で、今度は「病弱な幼馴染を捨てて自分の幸せだけを考える男」と噂されるようになって掌返すんだろ?その噂流すのはラリーだけどな。
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