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今後の予定は無しにして下さい(連載版)  作者: 徒然草


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33/36

33.幼馴染の後悔

 ラリーが後悔し、反省する話です。


 ウィラードはラリーの幼馴染。ラリーはずっとウィラードの事が大好きで愛していた。幼い頃、ラリーは将来ウィラードと結婚し、ずっと笑い合いながら死ぬまで一緒にいると当たり前のように思っていた。


「え…ウィラードがリンカ・ノアール子爵令嬢の婚約者になった?」


 だからウィラードに婚約者が出来た時は愕然とした。ウィラードはラリーと結ばれる筈なのにどうしてなのかと悲しくて、そして婚約者となったリンカを憎んだ。


「…私とウィラードは両想いなのに、何で邪魔をするのよ。」


 ウィラードとリンカは政略結婚を目的に結ばれた婚約者だった。シアン子爵家とノアール子爵家に利益の為、そんな理由でウィラードの意思を無視されて、ラリーとウィラードを引き離そうとする事が赦せなかった。


「…政略なんかに、リンカ・ノアールなんかに負けない。私とウィラードはずっと傍に居るんだから!」


 リンカや周囲に、ウィラードが好きなのはラリーだと知らしめよう。今までと同じようにラリーが体調不良になったと嘘をつけばウィラードはラリーを優先する。ウィラードは誰よりもラリーを大事に想っているのだと証明し続ける事が、ラリーに出来る政略への抵抗だった。


◆◇◆



「すまないラリー、これから僕はリンカを優先するよ。」


 ある日突然、ウィラードにそう言われたラリーはショックを受けた。リンカと良好な関係を築きたいからと言って、ウィラードに謝られてしまった。ラリーは納得出来なかった。そんな事を許せる筈がなかった。


「嫌よ…絶対にそんなの嫌っ!!」


 ウィラードに優先されなくなる事を認められなかったラリーは、リンカを説得しようとしたがリンカは冷たい反応をするばかりで聞き入れようとしなかった。そしてウィラードもラリーに会いに来なくなってしまった。


「…リンカ・ノアールなんかに、ウィルは渡さないっ!」


 会いに来てくれないのなら手紙を出そう。そう思ったラリーは手紙を書いた。


◇◆◇



「わ、私はウィルの事が好きなんです! 離れたくなんてありません!」

「わ、私はずっとウィルの事を愛しているんです。だ、だから離れたくありません!」

「ほ、本当は…、私がウィラードと結婚したいんです。わ、私じゃダメなんですか!?」 


 手紙を送った翌日、ウィラードの父であるドラート・シアン子爵がウィラードを連れて男爵家を訪れた。今までのようにウィラードと会わないで欲しい、とドラートに言われてしまったラリーは居ても立っても居られずにウィラードへの想いを全て告白した。緊張したがそれ以上に必死だった。けれどラリーの告白を聞けば、ウィラードは喜ぶ筈だと期待する気持ちもあった。


 ラリーの告白を聞いてもドラートは頷いてくれなかった。けれどウィラードは、ラリーの身体が病弱ではなかったら結婚出来ると言ってきた。ラリーの胸に喜びが膨れ上がると同時に、今までウィラードの傍に居る為に考えた嘘が足を引っ張っていた事を知ってげんなりとした。


「実はね、私が病弱なのは嘘だったのよ!」


 これで何も問題ない。ラリーが笑顔でそう言った後、何故かウィラードの様子が可笑しくなった。アレンもラリーに今まで見せた事がない程怒り、大声で怒鳴ってきた。何故、と戸惑うラリーに構う事なくウィラードとドラートは帰って行き、ラリーはアレンに腕を掴まれて、引き摺られるように部屋の前に連れて行かれて部屋の中に押し込まれてしまった。


「っ、何なのよ…どうしてよっ!」


 ラリーは何故こんな扱いをされるのか、全く分からなかった。


◆◇◆



「ラリー、僕と結婚したいんだよね? なら、協力して欲しい事があるんだ。」


「えっ!? …も、勿論よっ!」


 数日後、ウィラードがラリーに会いに来た。ドラートはウィラードとラリーの結婚をまだ認めてくれず、ラリーと会うのはこれで最後にしろと言われたらしい。なんて酷い仕打ちをするのかとラリーは悲しくなったが、ウィラードがラリーと結婚する為に作戦を考えてくれていた事にラリーはとても喜んだ。


「リンカに悪口とラリーの僕への想い、そして病弱が嘘だった事を全て話して欲しいんだ。」


「…へ?」


 リンカの悪口を言って全てを話す、それでどうしてウィラードと結婚出来るようになるのだろうかと疑問に思った。しかも相手はあのリンカだ。リンカがラリーの想いを聞いたところで引き下がるとはとても思えない。


「大丈夫、僕に考えがあるんだ。頼むよラリー、僕の為に協力してくれ。」


 ウィラードには何か考えがあるから提案しているんだ。ウィラードを信じなくてどうするんだとリンカは自分の中の疑問を払拭した。


「ええ、勿論よウィル。私、頑張るから!」


「…有難う、ラリー。」


 ウィラードは嬉しそうな笑みを浮かべた。


 そして計画通り、ラリーはレストランに行ってリンカに全てを話した。男爵家に帰り、リンカに会いに行った事を知られてアレンは激怒してきた。怖かったけれど、ラリーはウィラードとの未来の為に耐えた。それにラリーの為に何の役にも立たなかったアレンの事なんて、ウィラードと結婚してしまえば気にする必要が無くなるのだと、そう思っていた。



◆◇◆



 ――パァンッ!


「今すぐ謝れぇっ!!」


 一瞬、何が起こったのかラリーには分からなかった。頬に衝撃を受けたと思いきや、次第に痛みが広がっていった。


 話し合いが始まり、リンカに謝罪しろと言われたラリーが反抗したらアレンに平手打ちされた。父親どころか、他人に暴力を振るわれたのは初めてで、怖くてショックで頭の中が真っ白になった。ウィラードに言われた通り、リンカに文句を言って全てを話しただけなのに…何故こんな目に遭うのか分からなかった。


 …それでも全てはウィラードとの未来の為。それだけがラリーの心を支えていた。


「ラリーの嘘が、ラリーの存在が僕の人生を滅茶苦茶にしているんですよっ!! 僕は被害者だっ! こんなにも責められるだなんて可笑しいじゃないかっ! 僕は悪くないっ! 僕じゃないっ! 悪いのは全部ラリーだぁっ!!」


 ウィラードは怒りの形相でラリーへの憎しみを叫ぶ。


 …ラリーは何も分かっていなかった。ウィラードはラリーに恋愛感情を抱いた事がない。嘘をついていたラリーを嫌悪し、憎んでいた。ラリーを騙して陥れようとしていた。愛するウィラードからの嫌悪と憎悪に、殴られた時のショックなんて生温いと思えてしまうくらいの絶望がラリーを襲った…。


 




◇◆◇





「…今日で最後。」


 もうすぐ日が沈むであろう頃に、ラリーは自分の部屋で今までの出来事を思い返していた。いよいよ明日、ラリーは男爵家を追い出されて領地に向かう。


「お父様との食事は、夕食と明日の朝食で最後なのね…。」


 話し合いが終わってから、ラリーはずっと部屋に引き篭もり誰にも会わずに過ごしていた。だが食事は必ずアレンと一緒に食べた。常に気不味さは漂っていたが、それでもアレンに会いたかった。


 話し合いの中でもその後も、ウィラードの真実に絶望していたラリーをアレンは気遣ってくれた。そしてラリーの為に男爵位を手放す決断をし、ラリーを見放さないと言ってくれた。ラリーは嬉しかった。どんなにラリーに怒りを向けて暴力を振るっても、最後には娘として大切にしてくれるアレンに心の底から感謝した。


 …それと同時に、そんなアレンにラリーがしてきた行動を振り返り、激しい後悔に襲われるのだった。


 ラリーが病弱だと信じたアレンはラリーをとても心配し、今まで以上に甘やかしてくれた。色んな医者を呼んだり、身体に良いとされる食べ物や民間療法を調べてきた。時には集まりを欠席して、ウィラードと同じくラリーの傍に居る事を選んだ時もあった。そんなアレンに、ラリーは感謝を全くせずに鬱陶しいと思っていた。


 ラリーの嘘が発覚した後、アレンはラリーに冷たくなった。今となっては当然の事だと理解しているが、あの時のラリーはアレンの態度を理不尽に思っていた。そしてラリーにとってはアレンよりもウィラードとの未来の方が大切だった。だから部屋で大人しくしろというアレンの言葉を無視して、ウィラードの計画に協力した。憤るアレンを怖いと思いつつも、心の何処かでいい気味だと思っていたのかもしれない。


 アレンの気持ちや都合、ホワイト男爵としての立場については何も考えた事が無かった。ラリーの頭にあったのは、ウィラードと楽しく過ごす自(・)分(・)の(・)事(・)だけだった…。



『“病弱だから仕方がない”…貴女はそう言うだろうと思います。でも環境がどうであれ、貴女は誰かの為に何かをしたり、我慢をした事があるのですか?』


 かつてリンカに言われた言葉が頭の中を過る。言われた時はリンカへの敵対心と、認めたくないという逃避から否定した。けれど今となっては認めざるを得なかった。


 恋愛感情ではないが幼馴染としてラリーを想ってくれていたウィラード。過ちを犯したラリーに憤りながらも心配してくれる父親のアレン。そんな2人の為にラリーは何かをしたり、我慢しようとした事はなかった。


「…ごめんなさい。」


 無意識に謝罪の言葉がラリーの口から溢れる。


 本当はウィラードと共に領地に行きたくない。平民の暮らしなんて想像出来ない。ウィラードが怖い。ずっとこのまま令嬢として男爵家で暮らしたい。    


「……。」


 でもそれは叶わない。こうなったのはラリーの自業自得なのだから受け入れるしかない。もし叶う方法があったとしても、これ以上アレンに迷惑をかけるわけにはいかない。


 ラリーのやるべき事は、ノアール子爵の筋書き通りに病弱の振りをしてウィラードと共に領地に行く事。平民となり、生涯を終える事だけだ。


「っ、…嫌だ、怖いよ。」


 …分かっているのに、自分に何度言い聞かせても逃げたいと思う気持ちが襲ってくる。考えるだけで、身体が震えてしまう。


「明日なんて、来なければ良いのに…っ。」


 ラリーは逃れらない明日に怯え続けた…。


 ウィラードとは違い、ラリーは反省して成長出来たのではないでしょうか。ラリーは反省しないまま、自分は可哀想だと嘆き続けて終わる展開も考えたのですが、この後の展開を考えてこんな形になりました。この程度では成長したとは言えない、生温いと思う読者様もいらっしゃると思いますが、そんな感じです 笑


 誤字脱字報告、感想、評価してくださる皆様に何時も感謝しております。今後もどうぞ宜しくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
まぁ今更なんでまったく同情はしないし自業自得だとは思うけど、未だに逆ギレしてるあの屑よりはまだ多少マシとは思うわ。 あれと一生過ごすとか恐怖だろうけど、過去のあなたが色んな人に迷惑をかけて死ぬほど願っ…
ウィラードはこの期に及んでも保身とか不貞腐れだけなので、それに比べると大分マシに感じますね……。やっぱり母親が死んじゃったのが痛いな。生きてれば多分初期で叱ってくれたと思うし、アレン氏もここまで甘やか…
ちょっともとから頭が弱い感じ?けどちゃんと反省し始めている、ウィラードの方がまったく駄目なのでまともに見える。
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