25.身勝手な行動をした結果 3
喚くウィラードにリンカが言いたい事を言う回です。
「ぼ、僕はリンカと婚約破棄をしたくありません! それに貴族じゃなくなるだなんて…ラリーなんかと一緒に追放だなんて冗談じゃないっ!!」
「っ…。」
ウィラードは不満をぶち撒ける。顔を顰める者、無表情でウィラードを見つめる者が居る中で、ラリーだけは辛そうな顔をして俯くのをリンカは見た。
「…愚息が度々取り乱して申し訳ない。後は身内で話をつけます。」
ウィラードの父であるドラートはウィラードを無視する。ウィラードとラリーが追放される日は何時にするかや、慰謝料の額等話し合わなければならない事はまだ存在する。しかしこの場ですぐに決められる事ではない。それに不満を漏らして話し合いを長引かせるウィラードは邪魔でしかない。
ドラートはシアン子爵家に戻った後、どんな手を使ってでもウィラードを従わせるだろうとリンカは思った。
「…では、次に会う日を何時にするかだけ決めておこう。」
「そうですね。」
リンカの父であるサーマンとラリーの父であるアレンが頷き、解散する流れが生まれる。
「っ、巫山戯ないで下さいっ!!」
ウィラードが再び声を張り上げた。
「っ、どうしてですか? 婚約破棄されて、除籍されて、追放されるだなんて酷すぎる…あんまりじゃないかっ!!」
「はぁ…、何時まで醜態を晒すつもりだ。」
物語の悲劇の主人公のように項垂れ、声を振り絞るウィラードにドラートは溜息を吐く。これ以上ウィラードが何を喚こうが決定は覆らない。ウィラードを無視して解散して終わりだ。
「…解散する前に、ウィラードに言わせて頂きたい事があります。宜しいでしょうか?」
リンカがそう言うと、全員が目を丸くしながらリンカを見た。リンカはこのままウィラードが、自分を可哀想だと思い込んだままでいる事に納得が出来なかった。リンカが何かを言ったところでウィラードの考えは何も変わらないかもしれない。
けれど、言わせて貰いたい事があった。
「…。」
リンカに反対する声は上がらず、リンカがサーマンを見ると軽く頷かれて許可が下りた。リンカが視線をウィラードに移すと、ウィラードは何処か緊張した様子でリンカを見ていた。
「ウィラード、私との約束を覚えていますか?」
「や、約束?」
ウィラードは緊張の中に、不安を混ぜたような様子になった。
「私達の今後の予定を無しにして欲しい、と言った数日後に貴方はまた予定をつくりたいと言ってきましたよね。その時、私と約束した事があったでしょう?」
「…勿論、覚えているさ。」
ウィラードは渋い顔をしたままだが頷いた。
「僕がリンカとの約束をドタキャンしたら、婚約解消を考える…というやつだよね。」
「はい、よく覚えておりましたね。」
リンカは肯定した。
「っ、僕はリンカとの約束をドタキャンしてない。夜会に一緒に出席したし、レストランで食事もしただろう?」
「はい、そうですね。約束をした日から私達は2回約束をしましたね。この約束は護られておりました。」
ウィラードはドタキャンしなかった。それはリンカも認めている。
「ですがもう一つ約束した事がありましたよね。」
「…えっ?」
ウィラードが驚いた顔をする。
「ドタキャンの事よりも前に私が言った事なのですが、此方は忘れておりましたか?」
「えっ……。」
ウィラードは必死に思い出そうとしている様子だ。逆に言えば、それは覚えていないという証拠にでもあった。
「“ウィラードの事でホワイト男爵令嬢が私に絡んで来ようとしたら、絶対に止めて下さいね”…とお願いしたんですよ。」
「…あ。」
リンカが答えを言うと、ウィラードは思い出したかのように目を見開いた。
「…。」
リンカがチラッとラリーを見ると、ラリーは何とも言えない顔で此方を見ていた。本人を前にして言うのはどうかとリンカも思う。しかし婚約破棄する以上、ウィラードと2人きりになる方が問題だ。リンカはラリーに直接文句を言われたのだし、これくらいは意趣返しだと思う事にする。
「思い出してくれたようですね。それでウィラード、貴方は何をしたのですか?」
「…っ。」
ウィラードの表情が強張る。
「ホワイト男爵令嬢は貴方に頼まれて私に、ウィラードの事で絡んできました。貴方は止められなかったのではなく、仕向けてきたのです。」
リンカはウィラードを冷たく睨みつける。
「婚約破棄はお父様の判断ですが、もし婚約を継続する流れになっていたなら、私は婚約解消する為に知恵を絞り、行動していたでしょうね。」
リンカが婚約破棄を望んでいると言葉に出し、ウィラードにぶつけるとウィラードは顔を青褪めさせた。
「待ってくれリンカっ! その、本当に覚えていなかったんだ! ドタキャンしない事しか意識して無くて…わ、悪気はないんだよ!」
ウィラードは必死な様子で言い訳をしてくるが、リンカは聞く気はなかった。
「結局貴方は最後まで、私の事を尊重してくれませんでしたね。レストランでの食事も、婚約者として時間を共にする為ではなく、幼馴染を陥れて私を利用し自分の評判を回復する為だったんですものね。」
幼馴染を優先してリンカとの約束は後回しにされた。今後の予定を無しにして欲しいと願ったのに、リンカに愛されたい等と言って無理だと言われてしまう。約束を取り付け、婚約者として向き合っていくのならば仕方が無いと思ってみれば、自分の名誉の為に利用されようとした。流石のリンカもウィラードを憎らしく思ったのだった。
「私は貴方に、私を蔑ろにせずに尊重して欲しいと言った筈です。自分は大変で可哀想なのだから仕方が無い…そんな理由で私は今後も尊重される事は無いのでしょうね。」
「〜っ、そ、それは、僕の評判が回復したらリンカの事を尊重して、今度こそ大切にするよ!」
ウィラードの言葉は、自分が満足出来る状況になるまではリンカを尊重出来ないと言っているに等しかった。
「つまり貴方は、自分が満足出来る状況とやらになるまでは、私を尊重せずに自分の都合を押し付け、時には私を利用すると言う事ですよね。」
「っ! い、いや…その…。」
リンカの指摘にしどろもどろになるウィラードに、リンカの目線は冷めていく。
「貴方が除籍され、追放される理由に納得が出来なくても私の知った事ではありません。ですが、私と婚約破棄される事に納得出来ないのであればこう考えて下さい。私が、貴方との今後の予定を無しにしたいからです。」
リンカの意思で婚約破棄が決まった訳ではない。全ては当主であるサーマンが決めた事だ。そしてサーマンが判断したのはウィラードの行いが縁を持つ事でノアール子爵家に不利益を生じさせると判断したからである。そんな事はこの場にいる全員が分かっていた。
「貴方が何を企もうと、私が婚約破棄の撤回なんてさせません。」
けれど誰も口を挟まない。リンカが何を言ったところで婚約破棄は元々決まっていた事だからだ。そして、ウィラードがどれだけ傷付いても自業自得としか思わなかったからだろう。
「私と貴方の今後の予定は無しになりました。」
リンカが事実を伝えると、ウィラードはショックを受けた様子で床に座り込んでしまった。
リンカの言葉も本来ならば問題あるかもしれませんがウィラードがアレすぎて寧ろ言ってやれ、という雰囲気になっております 笑 最初はリンカとウィラードのデート中にラリーが問題を起こしてドタキャンして…という流れになる予定だったのですがこうなりました。ラリーと接触させるな、という約束をしておいて良かったです 笑
何時も読んで下さる皆様、本当に有難うございます。もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです。




