18.話し合いと暴かれる嘘 2
話し合いの続きです。
話し合いが始まり、ウィラードの予想通りにラリーの父であるアレンが追い詰められていく姿を見るのは悪くない気分だった。だがラリーを社交界から外す、というのは前にウィラード達と話し合った時に決定した事だ。それを今回の件で決めたように話すアレンを内心で嘲笑った。
その一方で、ラリーの反省する気がまるで無い姿に苛立ちは募った。ラリーが反省する気が無いからこそ、ウィラードは同情の余地はなく追い詰めることが出来るのだが…幼馴染の本性を知る度にウィラードは自分の過去の行いを後悔した。思う事は色々とあったが、それでも順調に話し合いは進行していた。
だがリンカの父であるサーマンは、ラリーの社交界からの追放と慰謝料で事を済ませようとした。そんな事は許せないと思っていたウィラードは焦った。しかしリンカが声を上げた為、ウィラードは安堵した。リンカとも目が合い、リンカはウィラードの為にもラリーを追い詰めてくれるのではないかと期待してしまった。
けれどリンカはラリーの口からの謝罪だけを求めて終わってしまった。アレンがラリーを平手打ちする姿に多少は驚いたし、ラリーが打たれる姿にいい気味だと思いもしたがそれどころではなかった。
このままでは話し合いが終わってしまう。これでは何の意味もない!
「それで本当に良いんですか? お金だけで解決だなんて…。」
焦ったウィラードは気が付くと発言してしまっていた。自分の隣に座る父親、ドラート以外の顔がウィラードの視界に入る。
「…あぁ、ホワイト男爵とホワイト男爵令嬢の事が心配なんですね。表向きはお金だけで済ませると言っていますが、裏でホワイト男爵達を陥れようと思っているのではないかと不安なのですね?」
そんな訳無いだろう、とウィラードは内心で吐き捨てるが口にする事は出来ない。ウィラードの言葉を幼馴染一家を心配するモノだと解釈したらしいリンカにウィラードは表情を強張らせる。
「私が騙すような真似をするとでも?」
リンカの父であるサーマン・ノアール子爵は眉を顰めてウィラードを見返す。
「い、いえ、そんな事は考えておりません! 僕はただ…」
「ウィラード。」
焦るウィラードに父であるドラートはこれ以上何も言うなと制止の意味を込めて名を呼んだ。
「息子がすみません。ノアール子爵があまりにも寛大な措置を取られた事が信じられなかったみたいです。失礼しました。」
「…そうか。」
サーマンは少し間を空けてから返事をした。一先ずウィラードの発言を誤魔化せそうだがこのままでは不味い、何とかしなければとウィラードは焦り続ける。
「何故、“あまりにも寛大な措置”だと思われたのですか?」
リンカがドラートの言葉に質問してきた。
「ホワイト男爵令嬢は社交界から追放されます。それにまだ慰謝料の額は決まっておりません。それなのにどうしてですか?」
「…ラリー嬢の行いを秘密にすると判断されたのですから、寛大だと思うのは当然ですよ。」
続くリンカの質問にドラートは言葉を詰まらせる事なく答える。ラリーは病弱だと偽り周りを騙し続け、婚約者の仲を壊そうとしたのだ。それなのにラリーは非難されずに田舎に逃げ、お金だけで解決しようだなんて寛大すぎるとしか言いようがない。
「そう思うのは当然だろう、リンカ。」
ウィラードも父の言葉に同意して発言する。
「ラリーはずっと自分は病弱だなんて嘘をついて皆を騙してきた。そのせいで僕達は婚約者として過ごせた筈の時間を奪われたんだよ。それなのに世間にバラさないなんて…」
どうか考え直して欲しい。ウィラードはそう願いながらリンカを見つめる。
「待って頂きたい、それはどういう事ですか?」
サーマンが眉を顰めてウィラードとドラートを見ながら発言した。
「えっ、だから、ラリーは自分が病弱だなんて嘘をついて皆を騙してきたのに…って。」
「初耳です。」
サーマンの返事にその場の空気が固まる。ウィラードは困惑しながらリンカを見た。
「は、初耳…? え、えっ…リンカ、話してないのか?」
「何の事ですか?」
リンカは何も知らないと言わんばかりにウィラードを見つめ返す。
「私は“ホワイト男爵令嬢はウィラードに昔から想いを寄せている事、ウィラードと結婚したいと思っている事、そして私のような冷たい人はウィラードの婚約者に相応しくないと言いました。”と話しましたよ。」
言った言葉を全て暗記しているのか、リンカは自分の発言を繰り返した。
「ホワイト男爵令嬢が病弱だったのは偽りだったなんて、言ってませんよ?」
「っ!?」
あり得ない…そんな馬鹿な! ウィラードの頭の中は真っ白になる。冷静さを失ったウィラードはラリーを睨みつけた。
「っ、ラリー! どうして言わなかったんだ!?」
「ふぇっ…?」
ラリーは自分の父であるアレンに平手打ちされたショックが抜けきれていないのか、間抜けな顔でウィラードを見返した。
「全部言うようにお前に言ったよな!? よりにもよって、どうして…」
一番大事な病弱の事を言わなかったのかと、ウィラードは怒りに任せてラリーを怒鳴ろうとした。
「ウィラードッ!!」
ドラートの大声が聞こえた瞬間、ウィラードははっ、と我に返る。
「あっ…。」
この場の全員の視線がウィラードに集まる。
「ウィ、ウィラード君?」
娘への言葉に困惑した様子を見せるアレン。
「…。」
この状況を理解しておらず、ただ呆然とウィラードを見つめ返すラリー。
「どうやら、まだ話し合いは終わりそうにないな。」
ウィラードに不信感を募らせた様子で話し合いを続ける事にしたサーマン。
「ウィラード。」
相変わらずの無表情でウィラードの名前を呼ぶリンカ。
「ホワイト男爵令嬢が病弱だと嘘をついていた…それも驚きましたが、貴方はそれを知っていたのですか?」
「っ…そ、それは…。」
ラリーが何も言っていない以上、病弱が嘘だとリンカとサーマンは知らない。そして本来であればウィラードが知っている事も可笑しいのだ。困り果てたウィラードは助けを求めるようにドラートを見る。
「…。」
ドラートはウィラードの失態に憤るように睨みつけてくるだけで何も言わない。助ける気はない、そういう事なのだろう。
「っ……。」
ウィラードは今の自分の言葉が何よりも不味かった事をようやく理解するも取り返しはつかない。これから始まる地獄の話し合いに怯え、立ち竦む事しか出来なかった…。
ウィラード、やらかしました。まだ話し合いは続きます。
ここまで読んで下さり有難うございました! 文章を読みやすくする為のアドバイスも有難うございました。




