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《SFファンタジー冒険譚》物理と知識で魔法世界を再定義!―拾った助手は2000年前の知識の管理者(旦那様)でした。追放された没落天才令嬢の私は最強の娘たちと「世界」を再構築!―合計9⃣3⃣0⃣0⃣PV  作者: ざつ
第3章:帝都編:鋼鉄の玉座と傀儡の皇帝

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第65話:【心臓】再定義される「絆」 

 光の奈落を抜けた先。そこは地上200メートルにそびえる塔の真下、地下数百メートルに位置する、アリスの真の心臓部だった。


「な……ッ!? 墜落死を覚悟したが……床が柔らかい?」


 真っ先に立ち上がったのは、驚愕に目を見開いたバルガス将軍だった。当然よね、普通なら今頃みんな床のキスしてるはずだもの。


「魔法? 失礼な。これは精密な『局所重力変動制御』による慣性の中和ですわ。重力子を計算できない帝国兵の脳細胞には、奇跡にでも見えるのかしら?」


 ピッコが着地早々、毒を吐きながらコンソールを操作する。


「魔法でも、あんたたちの言う物理でもないわ。これは真理(科学)を探究した結果生まれた、人知の結晶……完全に人工的な制御技術よ、バルガス将軍。人工物だからこそ、私たちの意思で御せるの」


 私が鼻を高くして説明すると、背後でシスターズたちの容赦ないツッコミが飛んできた。


「母様。さっき落下中に『死ぬぅぅ!』って叫びながら、重力の計算式を三回は間違えてましたわよね? ピッコさんが補正してくれなかったら、今頃わたくしたち全員、床にハンダ付けされたオブジェになってましたわ」

「……母様、見栄っ張り。……ダサい。ピッコさん、もっと怒ったほうがいい」

「オーボエ! ルーテ! そこは黙っててよぉ!」


 オーボエとルーテの冷ややかな視線が刺さる。……だ、だって怖かったんだもん!



 そんな騒がしいやり取りを遮るように、ホールの中心で一人の少女のホログラムが姿を現した。――アリス・アルテミシア。2000年前の天才にして、この世界の設計者。


「……ようこそ。不確かな未来を選び取った、愛しきバグたち」


 アリスの瞳は、2000年前と変わらぬ慈愛に満ちていた。私は彼女の姿を見るなり、一気に愚痴が溢れ出した。


「アリス! あんた、どこまで用意周到にこんな面倒くさい記録の残し方をしたのよ! 世界中にデータを分散させて、あちこちの塔に鍵をかけて……おかげで私の指はハンダ付けのしすぎでボロボロなんだから!」


 アリスは小さく、けれど全てを見透かしたように笑った。


「ごめんなさい。でも……エリアーナ、貴女たちは辿り着いたでしょう? 私が計算した0.0001%の可能性――『情熱』という名の変数を信じて」

「……辿り着いたでしょって、そんな言い方……。まさか、私がオートマタを作って、リュウガと出会って、ここまで来ることも……全部、あんたの図面通りだったって言うの……?」


 私が戦慄して問いかけると、アリスは答えず、ただ静かに微笑みを返した。彼女なりに、全てを一箇所に固めず分散させることで、万が一の事態でも「希望」が完全に消えないようにしたという冗長化の哲学。その深遠な計算の果てに私たちがいるのだとしたら、この女、本当に底が知れない。


「リュウガを完全にするための鍵は、三つ。リュウガ自身が持つ『知識』、私が王都と帝都に分散した『記録サーバー』、そして……メンテナンス・ユニットとしての『プリシラ』という存在。……さあ、受け取って」


 アリスがピッコを通して、一筋の黄金の光をリュウガへと流し込んだ。


 ズォォォォォン……!


 リュウガの身体がまばゆい黄金に包まれ、その瞳が透き通るような白銀へと変化していく。


「……思い出した。俺の本当の名前。そして、この世界の調停者としての、真の権限を」


 リュウガの声が、今までとは違う重みを持って響く。記憶の濁流が彼の中に流れ込み、かつての自分が何者であったかを完全に理解したようだった。


「リュウガ……あんた、全部思い出したの? じゃあ、これからは本当の名前で呼んだ方がいい……?」


 私が不安げに尋ねると、彼はふっと柔らかな笑みを浮かべ、仮想の右手で私の頬に触れた。


「いいや。過去の名前は、あの地へ置いてきた。今の俺を、俺だと定義してくれたのは君だ、エリー。……これからも、俺を『リュウガ』と呼んでくれ」

「……リュウガ。うん、分かったわ! 私の最高傑作(旦那様)!」


 その時、ピッコが震える足取りでアリスの前に進み出た。


「……アリス。……貴女、どれだけ私を放っておけば気が済むんですの……」

「……おいで、プリシラ。……私の、可愛い娘。……よく、リュウガを守ってくれましたね」


 アリスが慈愛に満ちた声で、その名を呼んだ。


「……は? 娘? メンテナンス・ユニットじゃなくて、実の娘なの!?」


 私の驚きをよそに、アリスは穏やかに頷いた。


「ええ。彼女は私の細胞から造られた、文字通りの『娘』。2000年前、凍結保存される直前まで私の腕の中にいた子よ」


 私は、瞬時に脳内の家系図をフル回転させた。私も「アルテミシア」の名を継ぐ末裔。ということは、2000年前のアリスの娘であるピッコは……。


「ぷ、プリシラ!? やっぱりピッコは、アリスの娘みたいな存在なのね!? ってことは……え、ピッコ、あんた、私にとって……『大叔母おおおば様』じゃないの!?」

「………………誰が、大叔母様ですってぇぇぇええええッ!!!」


 感動の再会シーンが、ピッコの絶叫でブチ壊れた。ピッコは真っ赤になって私の胸ぐらを掴んで揺さぶる。


「この汚い原始人メガネ! 誰が叔母様ですの!? 私の細胞は常にピカピカの最新状態ですわよ! 先祖だの親戚だの、一切認めませんわよッ!!」

「だ、だって計算上はそうなるでしょ! お願い、大叔母様! 私にお年玉レアパーツちょうだい!」

「死になさい! 今すぐここでデリートしてあげますわぁぁぁ!!」


『てぇてぇ最大値を突破して、もはやカオスだお(゜∀゜)! 母様に2000歳年上の「姪っ子」ができたお! あ、逆だお! どっちでもいいおー!』


 ファーファが騒々しくお祝いログを撒き散らす中、アリスは困ったように微笑んでいた。

 アリスがホログラムの背後に、広大な世界地図を映し出した。


「そろそろ本題に入るわよ。いい、よく聞いて。今、貴方たちがいるこの帝都ガレリアを中心とした土地は、かつて『極東』と呼ばれた島国の成れの果てよ」

「……極東? ここが?」

「ええ。ロゴスが歪み、世界は強制終了シャットダウンに向かっている。最近頻発している『次元震』は、世界が上げている悲鳴。……世界を救う鍵は、この大陸の遥か先……カオスゾーンを越えた『西の彼方』にある、かつての文明の中心地――旧ドイツ圏と呼ばれた土地に眠っているわ」


 西の彼方。カオスゾーンの先にある、アリスが2000年前に逃げ出してきた土地。

 その言葉に、リュウガとプリシラ(ピッコ)が険しい表情を浮かべた。


「……あそこへ戻れと言うのか、アリス。あんたが『絶望』から逃れて、この極東の地に新しい世界を設計した理由を忘れたわけじゃないだろ」

「そうですわよ! あの地で起きた悲劇を知っていて言っていますの!? 今さらあんな呪われた場所に、リュウガ様を連れて行くなんて……!」


 二人の声には、単なる恐怖ではなく、もっと根深い「歴史の重み」に対する嫌悪が混じっていた。


「……世界はもう、崩壊のカウントダウンを始めているわ。……まずは、この帝都のメインフレームを再起動し、歪んだ因果律を正しなさい。そして、そのあとは希望を取り戻して。その希望は、かつての絶望の中にしか残っていないのよ。……最終的に世界を救う。それが旅の新しい目的よ、リュウガ」

「……西の彼方ねぇ。話がデカくなりすぎて頭が痛くなりそうだけど……」


 私はリュウガの、まだ少し震えている手をギュッと握りしめた。


「エンジニアとして、そしてこの子たちの母親として、世界がなくなるなんて絶対に許せないわ。いいわよ、カオスゾーンの向こう側だろうが、アークを走らせてやるわよ!」

「エリー……」


「でも! その前に、この不快極まりない戦争を終わらせないとね! 自分の部下や味方すらゴミみたいに捨てるような宰相がいる帝都なんて、一度徹底的に『大掃除』して、私たちが再定義してやるんだからッ!!」


 私の宣言に、リュウガが不敵に笑い、バルガスが大剣を握り直した。


「……俺の忠義は、今この瞬間に再定義された。エリー、リュウガ。俺も、俺の部下たちも、その『大掃除』の戦力に加えてくれ。帝国を蝕むノイズ(ロジウス)を討つために!」


「おーっほっほ! 良い覚悟ですわ、将軍! 淑女の戦列に加わることを許可いたしますわ!」

「ボーンも、あいつらをボコボコにしてやるんだよッ!」


『お父様、お母様、そして大叔母様(笑)、最強将軍! パーティ結成だおーッ(゜∀゜)!』


「ファーファ! 『笑』をつけるんじゃありませんわよッ!!」


「てぇてぇですわぁぁぁ!! 最高ですわぁぁぁ!! 復活したお父様と、新しい叔母様、そして改心した将軍! このパーティ、最高にてぇてぇですわぁぁぁぁ!!」


 クララがカメラを連写しながら絶叫する。

 十女ボーンが槍を掲げ、コルネとユーフィを巻き込んで気勢を上げる。


「ヒャッハー! 復活おめでとうだおッ! 帝都の大掃除、あたしたち『三馬鹿』がハデにぶち壊してやるおーッ!」

「あーっはっはっは! 期待しておりますわよ、お父様。わたくしの蛇腹剣で、帝都の腐った論理を優雅に切り裂いて差し上げますわ!」


 六女ヴィオラが蛇腹剣を閃かせ、不敵に笑う。


「全機、機動開始ですわ! 管理者たるお父様の復活を、世界に知らしめる時ですわよ!」


 十一女オーボエの凛とした号令が響き渡った。


 私たちは落下した闇を突き抜け、救済キャラバンへと帰還する。目標は帝都の心臓。世界の終焉を止めるための、本当の反撃が始まった。


 帝都ガレリアの心臓部を叩く、本当の反撃が――救済の物語が、ここから再開される!


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