表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《SFファンタジー冒険譚》物理と知識で魔法世界を再定義!―拾った助手は2000年前の知識の管理者(旦那様)でした。追放された没落天才令嬢の私は最強の娘たちと「世界」を再構築!―合計10KPV  作者: ざつ
第3章:帝都編:鋼鉄の玉座と傀儡の皇帝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
69/124

第61話:【帝都】潜入のメロディと要塞軍の壁

 北の塔を出発した救済キャラバンは、旧文明の遺産である『海底メガトンネル』へと突入していた。かつての大陸と島国を結んでいたとされるその巨大な鉄の道は、今やマナの奔流に侵食され、奇怪な鍾乳洞のような姿に変貌している。陸路しか持たないアークにとって、荒れ狂う海を越え、帝都のある本島へと辿り着く唯一の『針の穴』だった。


「……暗いし、ジメジメするし、もう最高に最悪な新婚旅行ハネムーンね……」


 一号車のハンドルを握りながら、私は暗闇が続くトンネルの先を睨みつけた。


「贅沢を言わないでくださる、原始人メガネ。この『ユーラシア・ジャンクション』が崩落せずに残っていたこと自体、確率論的な奇跡バグなんですのよ」


 助手席でピッコが毒を吐きながら、リュウガのバイタルをチェックする。


「……ああ。ここを抜ければ、本島の西端、かつてのフクオカだ。そこからは陸路で一気に帝都へ肉薄する」


 パッチの痛みに耐えながら、リュウガが地図を指し示す。私たちは暗黒の底を駆け抜け、北の塔から3日。ついに帝都ガレリアの外縁へと辿り着いた。


『マスターの存在維持率、45%で微増中だお(゜∀゜)! でも帝国の監視網も1000%増量中だお! 見つかったら即デリート、結婚生活終了のお知らせだお!』


 一号車のラボで、ファーファが空中に真っ赤な警告ログを撒き散らしながら、騒々しく私の周りを飛び回る。


「うるさいわねファーファ! 縁起でもないこと言わないでよッ!」

「原始人メガネ、吠えるエネルギーがあるなら、この演算処理スレッドの一つでも肩代わりしてくださらない? リュウガ様のパッチは保って数週間. メインフレームへ辿り着く前に彼が消えたら、貴女を一生『未亡人の原始人』としてアーカイブしてあげますわ」


 ピッコが傲慢に言い放ち、コンソールを高速で叩く。彼女は相変わらず現代のシスターズを「欠陥品の妹たち」と呼んで見下していたが、その指先は時折、モニターに映る彼女たちの戦闘ログを見て微かに震えていた。


「全車両、完全沈黙サイレンス! 1デシベルの排気音、1ケルビンの熱源漏れも許しませんわ! お父様とお母様の愛の逃避行を邪魔するノイズは、わたくしが許しませんわよ!」


 十一女オーボエの冷徹かつ熱い指揮のもと、10台の『アーク』は死霊の船団のように音もなく進む。六女ヴィオラが蛇腹剣の感触を楽しみながら、ピッコの提供した旧文明コードを逆相解析し、キャラバンを「背景ノイズ」へと書き換えていた。


「ヴォルフ! 三号車のデフが鳴ってるわよ。油差しなさい! リディア、ドローンの高度が高すぎる。衛星に引っかかりたいの!?」


 私が無線で怒鳴ると、後方車両から不機嫌そうな返信が返ってきた。


「へいへい、わかってるよ嬢ちゃん! だがこっちのエンジンの悲鳴は、ピッコとかいう嬢ちゃんが持ち込んだ高密度燃料のせいだぜ。こいつはじゃじゃ馬すぎて、整備士泣かせだ!」

「私のドローンは背景ノイズに同期させてるから大丈夫よ、エリー。……ただ、気になるわね。前方15キロ、帝国軍の熱源反応に『意志』を感じる。……姿の見えない何かが、網を張ってるわ」


 リディアの冷静な警告。その正体――帝都中央塔の最上階にいる特務解析官エグゼを、私たちはまだ知らない。ただ、0.0002%の論理的逸脱さえ見逃さない「執念深い悪意」だけが、冷たく私たちを追っていた。





 帝都への入り口、第零関門。

 七女クララが鉄扇をパサリと閉じ、偽造された書類をゲートにかざす. だが、不可視の監視網は、その完璧な偽造の裏側にある「わずかな空気の乱れ」を解析し始めていた。


「ハープ、ルーテ、今よッ!」


 車外に潜んでいた九女ハープが超音波で監視兵の脳波をジャックし、四女ルーテが影から影へ跳躍し、光学レンズの死角を突いて監視カメラを物理的に焼き切る. その緊張感の中、無線にボーンの怒鳴り声が飛び込んできた。


『ヒャッハー! 監視の薄い廃村ルート発見だお! 母様、みんな、おジャンクの山も見えてるのぉおお!』

「ボーン! 今は強奪作戦じゃないって言ってるでしょ! 静かにしなさいよ!」


 叫んだ直後、世界が悲鳴を上げた。空に巨大な立方体の亀裂バグが走り、地面が剥離するように消滅し始める。


「……次元震!? こんな時にッ!」


 二号車が奈落へ滑り落ちそうになる。


「……っ!」


 八女テューバが音もなく車外へ飛び出した。彼女は一言も発さず、落下しかけた数トンの車両をその華奢な腕で掴み、強引に繋ぎ止める。地面を蹴る脚がアスファルトを粉砕する。


「ヴォルフ、二号車の牽引フックを射出! 補強して!」

「応よ! 壊すなよ、テューバ!」


 ヴォルフが放ったワイヤーが車体と地面を繋ぎ、十女ボーンが高熱の突撃槍ヒート・ランスを地面に突き立て、ブースターを全開にする。その猛烈な推進力とテューバの怪力が、二号車を力ずくで奈落から押し戻した。


「(……うんうん)」


 無事に車体を戻したテューバが、静かに頷く。ピッコがその光景をモニター越しに注視し、驚愕の声を漏らした。


「……信じられませんわ。Admin権限による法則の書き換えではありませんのに……純粋な物理出力が、私の知るどの自律型戦闘兵器よりも300%以上高いですわ。この欠陥品共、論理を超えたデタラメな出力パワーを出しおって……」

「ふふ、ふふふ……! 見た、ピッコ!? これが私のシスターズよ! あんたの旧文明の知識じゃ一生かかっても作れない『愛のハンダ付け』の結晶なんだから! どーお、参った!?」


 私が鼻を高くして詰め寄ったその時、後ろから柔らかい手が私の両頬を挟み込んだ。


「……母様。ピッコさんはお客様ですよ。そんなに図に乗って、原始人みたいに吠えてはいけません。……ね?」


 二女オルガが、聖母のような微笑みを浮かべたまま、私の頬を「みちっ」と握りつぶす。


「ふ、ふがっ……! オ、オルガ、手が痛いわよぉ!」

「お静かに。……ピッコさんも呆れていますよ。いいですね?」

「……はい、すみませんでした……」


 オルガの底知れないオーラに屈し、私はシュンと項垂れた。



 その直後だった。


「……ッ!? ハープ、散れッ!」


 オーボエの叫びと同時に、キャラバンの周囲360度を囲む闇が、情報の死角から一気に実体化した。


「ウソ……。アサシンの私が、背後を取られた……!?」


 九女ハープが両手に装備した鋭い「かぎ爪」を構え、驚愕に目を見開く。


「わたくしとしたことが……接近されるまで、解析スキャンに引っかからないなんて……!?」


 六女ヴィオラも蛇腹剣を握りしめ、顔色を失った。


 いつの間にか、アークを取り囲んでいたのは数十体もの単眼の影。情報の隙間を縫うようにして現れた彼らは、もはや完璧な包囲網を完成させていた。帝都特務電脳猟兵――コード・ハンター。




「排除対象……12。……デリート、開始」


 一切の抑揚を欠いた合成音声が、不気味な合唱となって重なる。


「全機、機動防衛陣形! お父様とお母様を死守なさいまし!」


 十一女オーボエの号令一下、キャラバンの外周にシスターズが一斉に展開した。

 まず動いたのは長女チェロだ。車両に固定された多連装ガトリング砲が火を噴き、猛烈な弾幕で接近するコード・ハンターを足止めする。


「おーっほっほっほ! 泥棒猫のように這いずる単眼共、わたくしの蛇腹剣で躾けて差し上げますわ!」

「三馬鹿、行くおッ!」


 ガトリングの制圧射撃の隙を突き、十女ボーン、三女コルネ、五女ユーフィの「三馬鹿」トリオが突撃を開始した。

 ボーンの熱槍が敵を貫き、コルネの炎が焼き、ユーフィの長刀が残骸を両断する。さらにその混沌を切り裂くように、四女ルーテが双剣を抜き放ち、目にも止まらぬ速さで敵の首架を次々と撥ね飛ばした。


「……(……しゅんしゅん)」


 ルーテが双剣を鞘に納める間もなく、七女クララが静かに歩を進めた。彼女が手にした鉄扇を鋭く翻すと、目に見えぬ真空の刃が敵を切り裂く。さらに彼女が扇を大きく仰げば、猛烈な突風が巻き起こり、敵の陣形を瓦解させた。


「……(……ふぅ)」


 クララは鉄扇で口元を隠し、冷徹な瞳で残骸を見つめる。


「……何ですの、あの扇。あんな非効率な形状で、大気の流体制御を完璧に行うなんて……。原始人メガネ、貴女、一体何をハンダ付けしたの――」

「ハンダ付けっていうか、ただの意地と偏執狂の産物よ。……あんまり褒めるとこの原始人、すぐ鼻の下伸ばすから無視しなさい、ピッコ」


 リディアが通信越しに、バッサリと冷たいツッコミを投げ込んできた。


「リ、リディアぁ! あんなに一緒に修羅場を越えたのに、ちょっとは優しくなってくれたと思ったのにぃぃ!」

「優しさと事事実ファクトは別物よ。あんたの弛んだ鼻の下を引き締めてあげるのが、副官としての私の『最大級の慈悲』だと思っておきなさい。さっさと前見て運転して、この原始人」

「ひどぉぉいっ!」


 ラボのピッコは、通信機越しの罵り合いに心底呆れたように肩をすくめた。そして、隣で苦痛を堪えるリュウガの仮想アームに触れ、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。


「……リュウガ様、よくこんな支離密烈な集団を率いておられますわね。……ふん、まあ、論理的には説明のつかない『退屈しないデータ』ではありますけれど」


 ピッコの金色の瞳が、ほんの一瞬だけ柔らかい光を帯びた。


 やがて夜が明け、霧の向こう側に、天を突く白亜の巨塔と、コンクリートに侵食された緑の迷宮が見えてきた。


「……帝都ガレリア。ついに来たのね」


 かつて「シブヤ」や「シンジュク」と呼ばれた場所の成れの果て。ビル群の骸が墓標のように並ぶその外縁部、捨てられた人々が住まう地下スラムへと、アークは騒々しい家族の喧嘩を乗せたまま、深く潜り込んでいった。


「……生き残るわよ、リュウガ。あんたを『デッド・コピー』になんて、絶対にさせないんだから!」


ぜひご感想をお寄せください。

また評価とブックマークもしていただけると嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の姫たちと世界を変える戦いへ!
《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は、六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~(代表作)
《重厚ファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン 外伝:断罪の前奏曲 ~処刑寸前の軍師を竜姫が略奪!十二年待った『我の夫となれ』の言葉。亡国の逆境を焼き尽くし覇道を往く~
《王宮裏方奮闘記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン:奉仕の練習曲(プレリュード)~商家の娘は皿洗いの先に王の盾を見る。伝説のメイド長に叩き込まれる覚悟と作法で王宮の誇りを守る~外伝②
(あらすじ)
元・天才軍師候補のヒカルは、仇敵カインの謀略と人類の憎悪により「裏切り者」の濡れ衣を着せられ、処刑寸前にまで追い込まれる。人間社会に絶望した彼の前に炎の竜姫レヴィアが降臨し、救われた彼は、六人の竜姫(六龍姫)の感情をリアルタイムで把握する「絆の共感者」の異能に目覚めさせられる。
ヒカルの義務は、レヴィアの激情的な愛や、アクアの理性的な愛といった、制御不能な竜姫たちの愛の感情を音楽の和音(ユニゾン)として調律し、軍団の戦闘力へと変えること 。彼は裏切りのトラウマを抱えながら、まず古王軍(闇の竜族)との絶望的な劣勢を覆す内戦に勝利し、六龍盟約軍を完成させ、竜の世界の新たな王になることを誓うのだった。

こちらも超オススメ!!

《SFファンタジー冒険譚》物理と知識で魔法世界を再定義!―拾った助手は2000年前の伝説の管理者(旦那様)でした。追放された天才没落令嬢は、最強の娘たちと共に「世界」を再構築中―



その他の作品もぜひ!

《冒険者ギルドのお仕事ファンタジー》鉄の受付嬢リリアンのプロの流儀 ~冒険は、窓口から始まります~
《純SFハイファンタジー》星を穿つ槍と、黄金のオムライス――放浪の戦術師とポンコツ戦闘メイド――
メゾン・ド・バレット~戦う乙女と秘密の護衛生活~
軌道エレベーターの管理人たち〜地上コンシェルジュは、宇宙(そら)の英雄に恋をする
スローライフを目指したい鈍感勇者のラブコメは、天《災》賢者の意のままに!!〜システィナ様の暴走ラブコメ劇場〜
桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討子、愛しき仲間たちと世界を救う~
異世界グルメ革命! ~魔力ゼロの聖女が、通販チートでB級グルメを振る舞ったら、王宮も民もメロメロになりました~(週間ランクイン)
時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記
【ライトミステリー?】没落お嬢様の路地裏探偵事務所~「お嬢様、危険です!」過保護なメイドと学者と妖精に囲まれて、共感力と絆で紡ぐ、ほのぼの事件簿
ニャンてこった!異世界転生した元猫の私が世界を救う最強魔法使いに?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ