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《SFファンタジー冒険譚》物理と知識で魔法世界を再定義!―拾った助手は2000年前の伝説の管理者(旦那様)でした。追放された天才没落令嬢は最強の娘たちと共に「世界」を再構築中―合計5⃣2⃣0⃣0⃣PV  作者: ざつ
第2章:王国編:知識争奪戦とトライアドの崩壊

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第38話:【模倣】偽Adminの論理攻勢とアリスの遺言

「――チェロ! チェロ!! 返事をして!」


 私はアークのハッチに横たわる長女のもとへ駆け寄った。彼女の美しい銀髪は煤に汚れ、胸部にはドリルの牙が穿った巨大な穴が開いている。そこから溢れ出すのは、青白いマナの粒子と精密な回路の残骸。


『ハハハ! 無駄だエリアーナ。その個体の機能停止を確認した。他の人形もこのまま始末してやる。最後に【アスカ】……リュウガの肉体を回収させてもらう!』


「ギルベルト……! 貴方、よくも、よくも私の娘を……っ!」


 私は怒りで震え、手元にあるスパナを握り締めた。目の前の無惨な残骸が、私の心の一部を削り取っていくような錯覚に陥る。だが、その時――。


「エリアーナ。冷静になれ。視覚情報に惑わされるな。お前が信じるべきは、お前自身が構築した論理だ」


 背後から響いたリュウガの、氷のように冷たく、しかし揺るぎない信頼に満ちた声。その言葉が、熱くなっていた私の脳を瞬時に冷却した。そうだ、私は何を血迷っていたの? 彼女たちは、私の――。


「……母様、泣かないでください。……規律の乱れは、演算の乱れですわ」


 聞き慣れた、冷徹で理知的な声。アークの内部メンテナンス・ルームから、一人の少女がゆっくりと歩み出てきた。汚れ一つないナノ粒子で作られたボディスーツの戦闘服。曇りのない蒼い眼。……それは、今私の目の前で破壊されたはずの、長女チェロだった。


「あ……そうよ。そうだったわ。……そうよ、私のシスターズは死なないのよ!」


 私は立ち上がった。人格データのバックアップ転送、完了。ロス時間は180秒。これこそがアークの核、人格転送システムだ。人格転送(ソウル・同期)システムだ。予備の素体ボディへ意識を移した彼女に、死という概念は通用しない。


 動転して自分自身が忘れてた、なんて絶対に言えないわ……。


「ほほほほ、オーボエ、反撃よ! ギガント・ドリルを沈めなさい!」

「了解しました、母様。……全ユニット、イレブン・シナジー:最終楽章。一気に仕留めます!」


 現場指揮オーボエの号令が響く。


 復活したチェロが新たなシールドでドリルを受け止め、慣性をデリートした不動の質量となって敵を固定する。そこへ次女オルガが分解槍で装甲の結合定数を書き換え、八女テューバが48発の物理弾頭ミサイルを至近距離で叩き込んだ。


「三馬鹿、スイッチ! 隙を作るよ!」

「マジぶち上げ! ユーフィちゃん、合わせるっしょ!」

「あたしのスピーカーも最大出力ですよぉぉ!!」


 三女コルネの大剣が放つ熱励起と、五女ユーフィの衝撃波、そして十女ボーンの破壊音波が一点で交差。魔法のような余剰熱を一切出さず、すべてのエネルギーが「ドリルの構造破壊」へと収束する。


 仕上げは四女ルーテ、九女ハープ、六女ヴィオラの三位一体。ルーテが加速空間を切り裂いてドリルの背後に回り込み、ハープが高周波メスで油圧系を「切除」。無防備になった動力核へ、ヴィオラのレールガン最大出力が突き刺さった。


「これで最後じゃん! 薙刀・螺旋破!」


 五女ユーフィが薙刀を大きく高速回転させ、剥き出しになった動力核を両断した。


 凄まじい大爆発とともに、ギガント・ドリルが鉄屑となって地面に沈む。


『そんな……バカな……私の完璧なマシンがぁぁ!』


 モニターの中、ギルベルトが膝をつき、屈辱に顔を歪ませた。


『汚物院長、完全敗北で土下座ですよぉぉ! メシウマ配信最高ですよぉぉ!!』


 ボーンの絶叫。



 だが、ギルベルトはまだ諦めていなかった。


『……ハハ、ハハハ! まだだ! ならば論理には論理を! Admin-Bugアドミン・バグ、起動!』


 工業区の地下ハッチが勢いよく開き、そこから銀色の「雲」が噴き出した。

 それは砂粒のように小さな、しかし無数の銀色の羽虫型メカの群れだった。キィィィィィという不快な高周波の羽音を立てて、アークの周囲を埋め尽くしていく。


「……うげっ、何これ、虫!? 銀色のハエとか、マジであり得ないんですけど……! 気持ち悪っ!」


 五女ユーフィが露骨に嫌な顔をして薙刀を振るう。


「シスターズ、下がりなさい! 機械のバグ駆除デバッグは、昔からエンジニアの仕事って相場が決まってるのよ!!」


 私は改造した高出力の『工業用ヒートガン(バーナー)』を構え、アークの配線に群がろうとする銀色の虫どもを、青白い炎で文字通り汚物消毒するように焼き払った。


「…………っ(ブルブル、盾の影に完全に隠れる)」


 八女テューバは半泣きで震え、九女ハープも「……っ。生理的に、無理……」と、その無数の羽音に耳を塞いでテンションを著しく下げていた。


 だが、この『Admin-Bug』は見た目以上に厄介だった。一つ一つがAdminの思考を模倣し、集団で一つの脳のように振る舞っている。シスターズの攻撃を最小限の動きで回避し、すべてを先読みして封殺してくる。


「あーしの薙刀、全然当たんないじゃん! てか、こいつらマジでチートなんですけど!」

「――情けないわね。規律ロジックで勝てないなら、あんたの得意な『不合理』をぶつけなさい!」


 中継越しに響くリディアの声。相変わらずのHカップを揺らしながらドローンで牽制する彼女の煽りに、私は吹っ切れた。


「……あぁもう、わかったわよ! 全員、聞きなさい! 統制プロトコルを解除! 全員、自分の『感情バグ』に従って暴れなさい! いわゆる……アドリブよ!」

「ひゃっほう! エリーちゃん、それってつまり、ボクがやりたい放題暴れちゃっていいってことだよね!?」


 三女コルネが瞳を輝かせる。


「マジ? あーしも空気読まずに自分勝手やっていい感じ? 最高の展開じゃん!」


 ユーフィも薙刀を回し始めた。


「それよ! 恋も喧嘩も、数式通りにいかないのが人間なのよ! 喰らいなさい、これが私の誇る『世界一うるさい家族』のシンフォニーよ!」


「「「了解じゃん(ですよぉぉ)!! 母様の不合理、承りましたわ!」」」


 その瞬間、戦場は華やかな舞踏場へと変貌した。


 統制を解かれた11人が、アークを足場に、あるいは魔導の翼を広げて一斉に宙へと舞い上がる。それは軍隊の突撃ではなく、色彩と破壊が入り混じる狂乱のダンスだった。


 コルネは火炎放射器を足元へ噴射し、爆炎を纏った独楽こまのように超高速回転しながらブラスターを乱射。ユーフィはスマホ片手にピースを決めつつ、空中に幾何学的な魔法陣を次々と描き出し、そこから極彩色の魔法弾をバラ撒く。


「あら、皆様。リズムが少し早いですわよ(微笑)」


 オルガが聖母の微笑みを湛えたまま、巨大な魔法陣を広域展開。そこから無数の光の矢が降り注ぎ、テューバのミサイルとチェロのダブルガトリングが、重低音のリズムを刻むように鋼鉄の雨を降らせる。


 ルーテとハープは透明化魔法を駆使しながら、空間の裂け目からブラスターを交互に連射。ヴィオラは高笑いと共にレールガンをスイングさせながら放ち、クララは実況カメラを回しながらスナイパーライフルで正確にバグの群れを弾き飛ばしていく。


 11人が空中を自在に泳ぎ、交差し、予測不能なタイミングで魔法と銃弾を炸裂させるその光景は、もはや芸術バグだった。完璧な論理で構成されたAdmin-Bugは、この情緒的で支離滅裂な「ダンス」の軌道を計算しきれず、予測誤差が臨界を突破。演算回路が次々と火花を散らしてポロポロと地上へ墜落していった。


『な……なんだ、この動きは……。計算が、合わない。私の、完璧な、論理が……っ!』

 

 ギルベルトが通信画面の中で絶叫し、膝をついた。

 すかさずファーファがその状況を連写して記録し、実況に垂れ流した。


『[解析] 敵機、母様の「支離滅裂な性格」の再現データにより自己崩壊を確認。m9(^Д^)プギャー』


「ふん、ざまぁ見なさい!」


 私が鼻を鳴らすと、リディアの通信ウィンドウが大きく開いた。


『……ふん。少しはやるじゃない。あんな合理バカが打ち負かされるのを見て、あたしもスッキリしたわ。……ありがとね、エリー』

「えっ……?」


 リディアが私を褒めた? しかも「ありがとう」なんて……。意外すぎる言葉に、私は言葉に詰まり、真っ赤になって視線を泳がせた。


「な、なによ急に……。別に、あんたのためにやったわけじゃ……あぁもう、変なこと言わないでよ!」


 私が不器用にドギマギしていると、リュウガの様子が一変した。


「……ガッ……ァ、ア……リス……?」


 リュウガが回収したクリスタルから光が溢れ出し、空中に2000年前の女性――アリス・アルテミシアの記録映像が投影された。眼鏡こそかけていないが、どこか私に似た面影を持つ女性。


「リュック……? あれは、誰なの……!?」


 私が思わず尋ねると、ホログラムの中のアリスが切なげに微笑んだ。


『……リュウガ。いつか、このプログラムが完成したら……貴方には、本当の人間になってほしい。戦うための道具じゃなく……誰かを愛し、愛される、不合理な存在に』


 遺言を聞いたリュウガが、記憶のスイッチが入ったように低く呟いた。


「……アリスは、俺に不合理を求めていたのか。……そうか」


 リュウガが、私の顔をじっと覗き込んで微かに微笑む。


「……アリス・アルテミシア。俺を造り、信じた未来へと託すために、俺をあの眠り(コールドスリープ)へ封じた張本人だ。……俺に初めて『不合理』を教えようとした、たった一人の管理者だよ」

「リュック……」


「お前の先祖は、お前によく似たお転婆だったようだな。……嫌いじゃないぞ、不合理なのも」

「お転婆って……! それ、褒めてるの!? 落としてるの!? どっちなのよ!」


 告白のようなトーンに心臓が跳ね上がり、私は顔を真っ赤にして叫んだ。


「あらあら……それにしても、母様にそっくりですわ。ですが認めざるを得ませんわ。あちらの女性の方が、明らかに……その、母様よりナイスバディ(出るところが非常に出ている)ですわね」

「「「確かに。母様より、各部の演算(曲線)が極めてエレガントじゃん(ですよぉぉ)!」」」


「うるさーーーい! 比較するんじゃないわよ! 私だって本気出せば……っ!」


 そんな私の醜態を見て、シスターズが再び声を合わせた。


「「「父様、今の告白は100点満点ですわ(よ)! 早く本当に結婚しちゃえばいいじゃん!」」」


『( ゜д゜)ポカーン 【追加記録】「2000年前の巨乳管理者」に対する母様の完全敗北を確認。 m9(^Д^)プギャー』


「ファーファーーー! 記録を消せ!!」


 ――と叫ぼうとしたが、私は深く溜息をつき、手元の巨大スパナをコトリと床に置いた。


「……はぁ。もういいわ。好きに記録しなさい。……その代わり、帰ったらあんたのOSを『初期型の白黒ドット液晶』にダウングレードしてやるから、せいぜい今のうちに高画質を楽しんでおくことね」

『ひえぇぇぇ! 母様が静かにブチギレてるお! 大昔のゲーム機みたいにされちゃうおー!』


 工業区の煤けた空の下、私の心拍数はどの戦闘時よりも異常な数値を叩き出していた。


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